米国民のガン死亡率、男女とも減少傾向に

米国民のガン死亡率、男女とも減少傾向に

米国民のガン死亡率、男女とも減少傾向に

report_201202 禁煙の徹底、そして穀類や野菜・果実の摂食運動が奏功したためか、今や米国民のガン死亡率が減少傾向にある。これにさらに弾みをと米国政府は新法で乳ガンや大腸ガンの検診の自己負担をゼロにするなどの施策を打ち出した。米国におけるガン検診など対ガン戦略の最新状況を報告する。

ここ数年、米国民のガン死亡率が減少傾向にある。American Cancer Society(ACS)が今年はじめに発表した最新統計によると、2004年から2008年のガン死亡率は、毎年男性で1.8%、女性で1.6%減少し続けていることが分かった。

また、1990年から2008年までに男性のガン死亡率が23%、女性が15%減少していることも明らかになった。
人種別では、最も死亡率が減少しているのが、黒人男性で年間2.4%減、次いでヒスパニック系男性で年間2.3%減。とくに、肺ガン、大腸ガン、乳ガン、前立腺ガンの死亡率が大幅に減少している。

また、小児ガンは、2004年から2008年にかけて罹患率が0.5%上昇しているが、死亡率は1975年の10万人につき4.9人から、2008年は2.2人に減少。5年生存率は70年代半ばの58%から83%に向上している。この統計は、米国ガン協会(National Cancer Institute)と疾病対策予防センター(CDC)の入手可能な最新データに基づいている。

早期ガン検診でガン撲滅に弾み

年々減少傾向にあるガン死亡率にさらに弾みをつけようと、米国政府はガンの早期発見のため、新法で子宮頸ガン、乳ガン、大腸ガンの検診を自己負担額ゼロ、保険で100%カバーするよう医療保険会社に義務付けた。

「ここ数年、乳ガン検診を受けていませんね。すぐにアポイントを入れてください」、「50歳を過ぎたので大腸ガン検診が必要です」と、米国で非営利医療サービス最大手のカイザーパーマネンテは同社の保険加入者がアポイントをとるまで電話で大攻勢をかけてくる。

ただ、そうした政府や民間をあげての懸命な努力にも関わらず、検診率は思うようには向上していないようだ。CDCが今年はじめ、ガン検診率の統計を発表したが、政府が「100%保険カバー」と力を入れているにも関わらず、ガンの検診率が低いことが明らかとなった。

同統計によると、2010年の乳ガン検診率は72.4%、子宮頸ガン検診率は83%、大腸ガン検診率は58.6%でいずれも政府の目標値を下回った。人種別でみると、アジア系とヒスパニック系の検診率が低かった。

ちなみに、2000年から2010年のガン検診率をみると、乳ガン検診率がほぼ横ばい、子宮頸ガン検診率が3.3%減。一方、大腸ガン検診率は男女共に約58%上昇している。

女性に比べ男性のガン検診率が低い

2011年11月8日付オンライン版American Journal of Men’s Healthに掲載されたフロリダ州Moffitt Cancer Centerの調査報告では、女性に比べ男性のガン検診率が低いことが指摘されている。

ニューヨーク市、バルティモア、プエルトリコで30歳から59歳の男女合わせて1150人を対象に、ガン検診について電話で聞いたところ、女性に比べ男性の検診率が低いことが明らかになった。

また、マスメディアが取り上げるガン検診普及キャンペーンは乳ガン検診が大半で、政府後援の男性ガン予防キャンペーンはほとんど実施されず、男性は女性に比べかかりつけの医者がいないことから検診率が低いことが分かった。

ガイドラインの違いが検診率向上の妨げに

乳ガン検診の開始が40歳か50歳か検討されているが、検診の適齢がはっきりしていないことも検診率の向上を妨げている要因といえそうだ。
例えば、U.S. Preventive Services Task Force(米国予防医学作業部会)のガン検診ガイドラインでは、乳ガン検診マンモグラフィーは50歳から74歳までの女性で2年に1回。子宮頸ガン検診は21歳から65歳の女性または3年間性交渉のある女性は少なくとも3年に1回となっている。大腸ガン検診は男女ともに50歳から75歳まで、便潜血検査は年に1回、S状結腸鏡検査は5年に1回、結腸鏡検査は10年に1回となっている。

これに対し、American Cancer Societyのガイドラインでは、マンモグラフィーは40歳から年齢制限なしで毎年、子宮頸ガンは21歳から29歳までは毎年、30歳からは3年間連続 で異常がなければその後は2~3年に1回、70歳からは3年連続で異常がなければその後は10年に1回、大腸ガン検診についてはほぼ同じ。こうした、ガイドラインの違いも検診率向上の妨げになっているようだ。

2012年には約160万人が新たにガンと診断

米国でガン死亡率が減少傾向にあるとはいえ、毎年4人に1人がガンで死亡している。2012年には約160万人が新たにガンと診断され、約60万人がガンで死亡すると推定されている。

ガンの傾向としては、すい臓ガン、肝臓ガン、甲状腺ガン、肝臓ガン、メラノーマ、食道腺ガン、口腔咽頭ガンの罹患率が上昇している。肥満がその原因として指摘されているが、はっきりとした理由は分かっていない。今後、こうしたガンの予防対策が急がれる。

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