野菜中心の食生活と健康

野菜中心の食生活と健康

野菜中心の食生活と健康

WHR 201903「健康のために野菜をたくさん食べましょう」とよく聞きますが、それでは野菜が豊富な食生活は、健康に対してどのような効果があるのでしょうか。野菜を食べることの効果について、海外・日本から最新の研究をご紹介します。

 

2型糖尿病患者の精神面に及ぼす影響

英ロンドン大学のAnastasios Toumpanakis氏らの新たな研究によって、2型糖尿病患者は、野菜を中心とした食生活を送ると血糖コントロールが改善するだけでなく、精神面にも良い影響を及ぼす可能性があることが明らかになりました。詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care」10月30日オンライン版に掲載されました。Toumpanakis氏らは今回、野菜中心の食生活が2型糖尿病患者の血糖コントロールやウェルビーイング(精神的な幸福感)、QOL(生活の質)に与える影響について検討した論文のシステマティックレビューを実施。基準を満たした11件の比較試験(計433人が参加)のデータを収集して分析しました。

解析の結果、野菜中心の食生活により2型糖尿病患者の血糖値が改善するだけでなく、体重やコレステロールも改善することが分かりました。また、こうした食生活を送ると減薬や服薬の中止につながり、糖尿病の合併症である神経痛も軽減することが示されました。さらに、患者の抑うつ症状が軽減し、全体的なウェルビーイングやQOLも向上したことが明らかになりました。これらの結果について、Toumpanakis氏は「食生活を変えることで2型糖尿病患者の血糖値や合併症の症状が改善し、減薬や服薬中止ができるようになれば、患者のQOLにきわめて大きなインパクトを与えるだろう。患者の精神面が向上したのは、糖尿病のコントロールが改善したことが原因になっていると考えられる」と説明しています。

認知機能低下防止への効果

米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のChangzheng Yuan氏らは、認知機能の低下を防ぐには、野菜や果物を多く摂取することが望ましいと指摘しています。約2万8,000人の男性医療従事者を20年間にわたり追跡した観察研究で、葉物野菜やオレンジ色または赤色の野菜、ベリー類、オレンジジュースを豊富に摂取している男性では認知機能の低下リスクを抑えられる可能性があることが示されました。この研究の詳細は「Neurology」11月21日オンライン版に掲載されました。

ただし、Yuan氏は「果汁は高カロリーである場合が多いため、飲むなら1日当たり小さなグラス1杯程度(118~177mL)にとどめるべきだ。また、果汁ではなく食物繊維が豊富な果物を丸ごと食べる方が有益だ」と説明しています。この報告を受け、米アルツハイマー協会のRebecca Edelmayer氏は、「心疾患の予防と同様に、認知機能の維持にも生活習慣がある程度は影響することが示された」と述べています。

アブラナ科野菜の全死亡リスクに与える影響

40歳代半ば以降の日本人の男女は、キャベツやブロッコリー、白菜などのアブラナ科の野菜を多く摂取するほど全死亡リスクが低減する可能性があると、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループが発表しました。研究の詳細は「Clinical Nutrition」4月23日オンライン版に掲載されました。

アブラナ科の野菜には、抗炎症作用や発がん抑制作用で知られる「イソチオシアネート」と呼ばれる成分が豊富に含まれています。研究グループは今回、JPHC研究に参加した45~74歳の男女約9万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、アブラナ科の野菜の摂取量と全死亡、がんや心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患および外因による死亡リスクとの関連を調べました。

質問票では漬け物を含む11項目のアブラナ科の野菜(キャベツ、大根、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ、からし菜、フダンソウ、たくあん漬け、野沢菜漬け、白菜漬け)からアブラナ科の野菜の総摂取量を推定しました。

中央値で16.9年の追跡期間中に1万5,349人が死亡しました。男女別にアブラナ科の野菜の総摂取量で5つの群に分けて解析した結果、全死亡リスクは、摂取量が最も少ない群と比べて最も多い群で男性では14%、女性では11%それぞれ有意に低下することが分かりました。また、疾患別の死亡リスクを比較した結果、男性ではアブラナ科の野菜の摂取量が最も少ない群と比べて最も多い群でがんによる死亡リスクが16%有意に低下し、女性では摂取量が最も多い群で心疾患リスクが27%、外因による死亡リスクが40%有意に低下し、脳血管疾患リスクも22%低下しました。

以上の結果について、研究グループは「アブラナ科の野菜に多く含まれるイソチオシアネートや抗酸化性のビタミンによる抗炎症作用と抗酸化作用が死亡リスクの低下に寄与している可能性がある」と指摘しています。

心身の健康に様々な効果があると考えられる野菜、毎日の食卓に積極的に取り入れてみてください。

TOP