仕事のストレスと職場環境

仕事のストレスと職場環境

仕事のストレスと職場環境

WHR 201812ストレスチェック制度が導入されるなど、職場でのストレスやメンタルヘルスの管理が重視されるようになってきました。今回は、仕事でのストレスが健康に与える影響と、ストレスの少ない職場環境について、スウェーデンと米国での研究からそれぞれレポートします。

 

仕事のストレスと健康への影響

まず、仕事でストレスが多いと、どのような健康への影響が考えられるのでしょうか。ヨンショーピング大学(スウェーデン)保健福祉学部のEleonor Fransson氏らによる研究では、仕事のストレスが多い人は、過度なストレスがない人と比べて不整脈の一種である心房細動を発症するリスクが約1.5倍になる可能性が示されました。詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」5月30日オンライン版に掲載されました。

心房細動は、不整脈の中で最も高頻度にみられるもので、動悸や脱力感、疲労感などの症状が現れるものです。これまでの研究で、脳卒中の20~30%は心房細動が原因で発症し、心房細動があると早期死亡リスクが高いことも分かっています。

Fransson氏らは今回、スウェーデンで実施された労働衛生調査の2006年、2008年および2010年のデータを用いて、仕事のストレス(職業性ストレス)と心房細動リスクの関連について検討しました。対象は、心房細動や心筋梗塞、心不全の既往歴がなく、雇用されている男女1万3,200人。対象者には、「仕事は大変か、急がなければならないか」「単純なルーチン作業が多いか」「仕事の方法などは自分で決められるか」などを具体的に尋ね、職業性ストレスの程度を評価しました。

解析の結果、職業性ストレスがある人では、ストレスがない人と比べて心房細動リスクは1.48倍であることが分かりましたFransson氏は「心疾患を予防するにはストレスなどの管理が必要であることが改めて示された。どんな仕事でもストレスを伴うものだが、職業性ストレスは心房細動の修正可能なリスク因子であるかもしれない」と話しています。

ストレスの少ないオフィス環境

また、米国の研究では、オフィス環境と職場のストレスとの関係について指摘しています。この研究では、パーティションや壁のない開放的なオフィス環境で働く人は、パーティションなどで仕切られたオフィスで働く人に比べて運動量が増え、精神的なストレスも軽減することが示唆されました。研究を率いた米アリゾナ大学環境福祉研究所のCasey Lindberg氏は、「仕事で長い時間を座ったまま過ごす傾向はますます強まっている。座位時間を減らして活動的になれるならば、それがどんな方法でも健康には有益だ」と話しています。詳細は「Occupational and Environmental Medicine」8月20日オンライン版に掲載されました。

事務などの内勤で働く人は運動不足になりやすく、そのため身体的あるいは精神的な健康を損ないやすいと考えられます。今回の研究は、米国内4カ所の連邦オフィスビルで働く健康な公務員231人を対象としたもので、参加者には、平日に3日間(夜間を含む)連続して心拍数や身体活動量をモニタリングするウェアラブル装置を身につけてもらい、また、参加者の勤務中の気分の変化を1時間ごとに調べ、研究終了時には全体的なストレスレベルを評価する調査を実施しました。

その結果、パーティションや壁のない開放的な環境で働く人は、背の高いパーティションなどで仕切られた環境で働く人に比べて身体活動量が約20%多く、個室などのより区切られたスペースで働く人に比べると約32%多いことが分かりました。また、勤務中の座位時間が長い人に比べて、より活動的な人は勤務時間以外のストレスレベルが約14%低いことも明らかになりました。

この論文をレビューした米アルバートアインシュタイン医科大学のJoe Verghese氏は「平日の多くの時間を過ごす職場の環境がストレスレベルに影響を及ぼすのは当然だ。精神的なストレスには仕事の種類やワークフロー、教育レベル、文化の違いのほか、性別や性格などの因子も影響する」と述べ、職場環境とストレスとの関連について、さらに研究を重ねる必要があると付け加えています。

どのような仕事も、多かれ少なかれストレスを感じることはありますが、仕事での過度のストレスは健康にも悪影響を及ぼしかねません。様々な観点からストレスによるリスクの軽減を検討する必要があると言えるでしょう。

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