アメリカで、根強い人気を誇るのが「日本食」。一頃の放射能騒動も落ち着き、再び、大豆や穀物、魚など日本の伝統食材へと関心が向かっている。今、アメリカ人がどのような食材に食指を動かしているのか、そのトレンドを報告する。
アメリカ人の9割が栄養成分の表記をチェック
食生活と健康とは密接に関係しているのか?
こうした問いに、Natural Marketing Instituteの「2012年 Health and Wellness Trends Database」では、アメリカ人の86%が「食」と「健康」とは密接に関係していると答えている。
疾病対策については、75%が適切な栄養素の摂取で病気のさまざまな症状を改善できると考えているという。
また、United Soybean Boardの「2011 Consumer Attitudes about Nutrition」によると、アメリカ人の87%が食品に含まれる栄養素に関心を持ち、10人中7人がここ5年ほどの間に健康を考えて食生活を改善したと答えている。食料品を買う際、栄養成分の表記をチェックしているアメリカ人は90%にのぼるという。
「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」で、和食志向が加速
健康体=健康的な食生活。そうした図式がすでにアメリカ人の間で定着しているようだ。そんなアメリカ人がヘルシーと食指を動かすのが、「日本食」。
「アメリカ人の栄養ガイドライン」は、アメリカ人が健康でいるための栄養管理の指針で、米国保健社会福祉局が5年ごとに改訂版を発表している。アメリカ人の肥満や高血圧、動脈硬化など生活習慣病を防ぐことを目的とした同ガイドラインの2005年度版は、「米国版和食のすすめ」ともいえる内容で、初めて全穀物の推奨を明示した。
また、魚についても、FDA(米国食品医薬品局)で心臓病対策に有益と認めているが、同ガイドラインでも、鬱やアルツハイマー、動脈硬化の予防など、アメリカ人の健康管理に欠かせないとして、ω-3系脂肪酸を多く含むサケ、マス、ニシンなどの摂食を薦めている。
2011年の大豆食品の売り上げは52億ドル
こうした経緯から、アメリカ人の和食への傾倒にさらに拍車がかかるが、この和食ブームの火付け役となったのが大豆である。アメリカでは、1996年頃から大豆食品の良さを知ってもらおうと、各地のスーパーが毎月4月を大豆食品月間とし、大豆食品のデモ販売やセミナーを盛んに行っていた。
1999年には、FDAが大豆食品を摂取すると心臓病の予防効果があると認めるが、そこから豆腐や豆乳など大豆ベースの食品や飲料に関心が集まり、全米で大豆ブームが巻き起こる。
United Soybean Board (USB)の「栄養に関する消費者のスタンス、全国調査2001-2002」によると、大豆食品を毎週食べているアメリカ人は、1999年は全体の24%だったが、2001年は27%に増えるなど、心臓病大国アメリカで大豆食品が好調な売れ行きを示した。
Soyatech Inc.の「Soyfoods:The U.S. Market 2012」によると、2011年の大豆食品の売り上げは52億ドルで、過去15年に10億ドルの増加となった。売り上げ増加の理由として、大豆を使った肉 の代用品や大豆プロテインといった新商品が増えていることなどを挙げている。
アメリカ人の8割、大豆食品を健康に有益と認識
前述の「2011 Consumer Attitudes about Nutrition」によると、今や、アメリカ人の81%が大豆は健康に良いと考えており、体に悪いと考えているアメリカ人はわずか5%にすぎないとい う。ちなみに1998年の同調査結果では大豆を健康食と思っているアメリカ人は67%だったが、翌1999年には71%に上昇。2001年は69%とダウンしたが、それ以後は70%台をキープ、2006年の82%を境に80%台が続いている。
大豆食品については、少なくとも月に1度は大豆ベースの食品や飲料をアメリカ人の37%が購入しているという。摂食については、夕食が40%と最も多く、次いで、朝食が29%、昼食が22%となっている。また、食事以外では、スナックが19%、深夜のスナックが11%、デザートが3%となっている。
こうした数字をみても、今後も日本食の代表的素材といえる大豆食品が売り上げを伸ばしていくことが期待される。