先頃、米国食品医薬品局（FDA）の親機関である米国保健社会福祉省（HHS）監査部門の監査総監室（OIG）が、市場に流通する一部のサプリメントの違法ラベル表示を発表した。OIGは FDAの法的権限を強化するよう求めるが、サプリメント業界はこれに猛反発。業界側の反論とは。

調査対象品目の20％が違法表示

米国では、成人の約80％がサプリメントを利用し、市場規模は200億ドルといわれている。なかでもダイエットおよび免疫関連の商品はマーケットでの伸張が著しい。

先頃、米国保健社会福祉省（HHS）監査部門の監査総監室（OIG）がそれらを調査し、報告書『栄養補助食品～連邦規制に適合しない構造機能表示』を発表した。

調査は、ダイエットおよび免疫関連のサプリメント127品目に対して実施。内訳はダイエットが60点、免疫関連が67点、それぞれ小売店やオンラインショップで購入した。

今回の調査は、サプリメントそのものの問題ではなく、あくまでもサプリメントのラベル表記の法律上の違反を調べたものである。

調査では、全体の7％にあたる9点（ダイエット4点、免疫関連5点）が、「表示はFDAの評価を受けていません。商品は病気を診断・治療・予防するものではありません」という法律で定めた免責表示をしていなかった。

また、全体の20％にあたる26点が、「咳を止める」「心臓病・高血圧を予防する」「天然成分がガンを攻撃する」といった法律で禁じられている疾患の治療効果を記載していた。

この調査結果から、OIGは、「サプリメントの表示や安全性の監視でFDAの管理体制を強化すべき。ラベルの効能記載が正しく科学的根拠に裏打ちされたものであるか管理するために明確な法的権限をFDAに与えるべきである」と結論づけた。

少ない調査品目に、業界が反発

サプリメントは栄養補助食品健康教育法（DSHEA）で、商品の「構造機能表示」が認められている。「構造機能表示」とは、人体の構造や機能への効能表示で、「カルシウムは骨を強化する」「○○○は免疫力を高める」といったもの。一方、「高血圧を下げる」「骨粗しょう症を予防する」など医薬品のような疾患への効能を表す「薬効表示」は違法となる。

こうした表示で、「薬効表示」は当然FDAの承認が必要だが、「構造機能表示」はその必要がない。「構造機能表示」の場合、医薬品のような複雑な手続きをとらなくても効能を謳える商品の発売が可能となる。

メーカー側も表示の正当性を裏付ける科学的証拠をFDAに提出する義務はない。ただし、発売から30日以内に商品名や成分などを記載した通知書をFDAに提出することが義務付けられている。

調査対象の商品は業界を代表するようなものではない

今回のOIGの調査結果の結論は「構造機能表示」も「薬効表示」と同じようにFDAの承認が必要であるかのような、暗に含みをもたせたものであったことから、業界関係者がこれに敏感に反応、反発した。

OIGの調査発表の翌日、サプリメント業界団体「カウンシル・フォー・シルポンシブル・ニュートリション」のプレジデント兼CEOであるスティーブ・ミスター氏は次のような声明文を発表し、調査で明らかになった違反業者をただちに取り締るようFDAに求めた。

「サプリメント業界の大半が消費者に対し責任ある行動をとっている中で、いまだに法を守らない同業者がわずかでもいることは、とても残念なことだ。表示違反という容易に取り締まれる行為を見逃したのは、FDAの監督不行届といえるだろう。今後も業界とFDAは、サプリメントを購入している消費者のために共に向上していく必要がある」

サプリメント業界は、OIGの調査報告の内容を前向きに受け止めはしたが、対象となった商品は決して業界を代表するようなものではないとミスター氏は強調。今回のOIGの調査報告の結果は業界全体の問題とはいえないと訴えた。

約2万9000点のうちのわずか127点にすぎない

また、同じく業界団体「ナチュラル・プロダクツ・アソシエーション」のエクゼクティブ・ディレクター兼代表取締役（CEO）のジョン・ショウ氏も報告書が発表された直後、業界全体の問題とするには調査対象の数が少なすぎるとし、次のように指摘した。

「米国市場では現在、約2万9000点の商品が販売されていると推定される。そのうちのわずか127点を調べたにすぎない。その結果が業界全体の問題とはならない。調査報告にも業界全体のこととして結論付ける意図はないと書かれている」

とはいえ、今回の結果は真摯に受け止め、問題が生じた際には、メーカーはFDAに、「構造機能表示」を裏付ける科学的証拠を提出するなど、表示に関する規制を厳守する必要があると締め括った。