世界的に高まる全粒穀物のニーズ

世界的に高まる全粒穀物のニーズ

世界的に高まる全粒穀物のニーズ

report_201205 ここ10年ほどの間に、世界各国でヘルシーフードとしてすっかり認識された全粒穀物。健康に少しでも関心のある人々は、ブレッド、シリアル、パスタなどに”Whole Grain”の表示が入った商品を好んで買っていく。世界的に高まる全粒穀物のニーズ、最新市況を報告する。

全粒穀物の世界市場、2017年までに推定276億ドルに拡大

Global Industry Analystsが今年4月に発表した「Whole Grain and High Fiber Foods調査報告書」によると、全粒穀物の世界市場は2017年までに276億ドルに膨れ上がるものと予想されている。

世界での最大規模の市場は米国だが、最も高い成長率を示しているのはアジア太平洋で、2017年までに6.82%増加するものとみられている。

全粒穀物の人気は高まる一方で、新商品の発売件数も年々増えている。調査会社ミンテルの「グローバル新商品データベース」によると、2000年に発売された新商品はわずか164件だったが、

2011年には3378件に増加。つまり11年間で1960%の増加というわけだ。ちなみに、今年4月30日の時点ではすでに1268品もの新商品が発売されている。

食品カテゴリー別にみると、昨年、全粒穀物を謳った新商品が最も多かったのはベーカリーで1228件、次いで朝食シリアル1039件、スナック484件、サイドディッシュ(付け合せ)287件、主菜129件、その他109件、ベビーフード102件となっている。

若年層で全粒穀物の消費量が増加

米国での全粒穀物市況について、消費者・小売市場調査会社NPDグループによると、米国での全粒穀物の消費量は、1998年から2005年まで横ばい状態が続いていたが、2005年から2008年にかけては20%増。年齢別でみると、とくに18歳から35歳の層で消費量が増えており、2005年から2008年で38%上昇している。

また、「2週間に少なくとも1回は全粒穀物を食べる」と回答した消費者は2006年にはわずか35%だったが、2008年には60%と大幅に増加している。ただし、「2010年版米国栄養ガイドライン」では摂取する穀物の少なくとも半分は「全粒」で摂るようアドバイスしているが、その達成率は11%と理想にはまだ程遠い。

ちなみに、SymphonyIRIが昨年発表したベーキング・ビジネス調査報告では、米国で2010年9月5日までの52週間に販売された全粒穀物パスタの総売上額は1億2800万ドルで、パスタ総売上額の9%にしかすぎない。

通常パスタは平均1ドル27セントで売られているが、全粒穀物パスタは1ドル50セントと値段が少々高めなことと商品数がまだ少ないことから市場での占有率が低いというのが実情だが、景気の回復などで今後ますます売り上げを伸ばすものと予想されている。

購入理由、「体にいい」76%「繊維質が豊富」69%

ところで、なぜ消費者は少し高めでも全粒穀物を好んで購入するのか。
シリアルで有名なケロッグ社が2009年に実施した消費者調査では次のような結果が出ている。理由のトップが、「体にいいから」が76%、2位が「繊維質が豊富」69%、3位が「満腹感を得られるので減量効果がある」53%、4位が「ビタミンやミネラルが豊富」44%、5位が「おいしいから」36%と続いている。

ちなみに、調査会社ハリス・インターアクティブが2006年に実施した調査では、「おいしいから」はわずか13%だった。全粒穀物の人気に伴い商品の味が改良され、売り上げの伸びにもつながっていることが考えられる。

この5年間、肉類の摂食が減少

American Dietetic Associationの2011年調査報告で、アメリカ人たちが健康な食生活に切り替えている現状が浮き彫りになっている。同調査報告によると、消費者の48%がここ5年間に全粒穀物を食べる量を増やしていると回答している。

5年前より多く摂っている食品では「野菜」がトップで49%、次いで「魚」46%、「鶏肉」44%であった。一方、ここ5年間で摂る量が減っている食品としては、「ビーフ」39%、「豚肉」35%、「乳製品」22%だった。興味深いのは食品アレルギーが原因でちょっとしたブームになっているグルテン・フリー食品を敬遠する消費者が多いことも分かった。

また、Food Marketing Instituteの調べによると、消費者は全粒穀物商品、繊維質商品、低脂肪商品、減塩商品を好んで購入していることが分かった。

少しデータが古くなるが、Decision Analystが2008年に実施した調査では、70種類の食品とドリンクを対象に、「健康に最も良いと思うものを選んでください」と聞いた。

その結果、トップが全粒穀物で59.5%、2位がブロッコリーで57.6%、3位がバナナで56.9%、4位がオートミールで56.1%、5位が緑茶で55.1%、6位がニンニクおよびホウレンソウで54.6%、7位がニンジンで52.4%だった。

最新研究で体重や体脂肪が減少

Journal of Nutrition誌12.3月号に、全粒穀物の体重および体脂肪、悪玉コレステロールの減少の有効性についての報告が掲載されている。デンマークの研究報告で、閉経後の肥満女性79人を対象に調査を実施。無作為に2グループに分け、半数に全粒穀物を含むカロリー制限したダイエット食、残りには精製した穀物を含む同じダイエット食を12週間試してもらった。

その結果、「全粒組」は体重が平均3.6キロ減少したが、「精製組」は2.7キロだった。体脂肪についても「全粒組」が平均3%減だったが、「精製組」は平均2.1%減。また、悪玉コレステロールは「精製組」で平均約5%の増加がみられたが、「全粒組」では変化はみられなかった。

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