1日1箱の喫煙で肺に年間150個の遺伝子変異

1日1箱の喫煙で肺に年間150個の遺伝子変異

1日1箱の喫煙で肺に年間150個の遺伝子変異

4.1.1喫煙は肺やその他の臓器の著しい遺伝子損傷に関連することが、米ロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ)のLudmil Alexandrov氏らの研究でわかり、論文が「Science」11月4日号に掲載されました。

 

研究の結果、1日1箱のタバコを吸う人では、肺に毎年平均150個の余剰な突然変異が起きることが判明しました。これにより喫煙者の肺がん発症リスクが高い理由の説明がつきます。身体の他の部分の腫瘍にも、喫煙に関連する突然変異がみられました。Alexandrov氏は、「今回の研究は、喫煙ががんを引き起こす方法について新しい洞察をもたらすものだ。われわれの分析は、喫煙が複数の別個のメカニズムにより、がんにつながる突然変異を引き起こすことを示した。タバコの煙は、直接曝露される臓器のDNAを損傷するだけでなく、直接的・間接的に曝露される臓器で細胞の突然変異の速度を早める」と述べています。

また、日本においては厚生労働省が今年8月31日に「喫煙の健康影響に関する検討会報告書(たばこ白書)案」を15年ぶりに改訂しました。報告書によると、喫煙による年間死亡者数は、世界では能動喫煙により約500万人、受動喫煙により約60万人と報告されており、日本ではそれぞれ約13万人、約1万5,000人(肺がん、虚血性心疾患および脳卒中による死亡)と推計されています。

たばこの喫煙者本人への影響として因果関係が「確実」とされたのは、肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝臓、膵臓、膀胱および子宮頸部の各種がん、肺がん患者の生命予後の悪化、がん患者の二次がん罹患、かぎたばこによる発がん。このほか、脳卒中、虚血性心疾患、腹部大動脈瘤などの循環器疾患、COPD、呼吸機能低下、結核による死亡などの呼吸器疾患、2型糖尿病の発症、歯周病なども因果関係は「確実」と判定されました。

また、受動喫煙でも肺がん、脳卒中、虚血性心疾患のほか、小児の受動喫煙と喘息の既往との関連、妊婦の能動喫煙および小児の受動喫煙と乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連は「確実」であると判定しました。

日本の受動喫煙防止対策や脱たばこ対策は、2014年時点で国際的にも最低レベルであるとしています。国を挙げた早急な対策の実施が望まれます。

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