科学的な裏付けはありませんが、「冬は風邪の季節」というのは、一般通念となっていますね。「Proceedings of the National Academy of Sciences」最新号に掲載された新たな研究で、冷たい空気に触れて体内温度が下がると、免疫系がウイルスを撃退する能力も低下することが示唆されました。研究著者の1人で米エール大学医学部教授のAkiko Iwasaki 氏によると、風邪の原因となるライノウイルスは中核体温である37度よりも低い33度前後でよく増殖することが以前から知られていましたが、その理由はわかっていなかったと述べています。「マウスの気道細胞をモデルとして用いて検討した結果、鼻の中程度の低い温度では、宿主の免疫系がウイルス増殖を阻止する防御シグナルを誘起できないことを突き止めた」と、同氏は説明しています。
「屋外の冷たい空気を吸い込むと、少なくとも一時的には鼻の中の温度が下がると考えられる。この知見から、冷たい外気温によってウイルスが増殖して風邪を引き起こす能力が高まることが暗示される」とIwasaki氏は述べています。ただし、米国疾病管理予防センターのJohn Watson氏は、寒さに関しては、低温そのものよりも狭い室内に密集して過ごすなどの行動の変化が原因である可能性もあり、「興味深い知見だが、疑問が解決したとはいえない」と同氏は述べています。ただ、いずれにしても「冬は風の季節」であり、用心が必要であることは間違いないようです。
また、冬になると風邪のみでなくRSウイルスも流行します。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、感染すると、風邪のような症状を起こすウイルスです。ただし、乳幼児や高齢者では重篤になることもあるため、特に注意が必要です。米国疾病管理予防センターでは、RSウイルスの感染を予防するために、気をつけるべき点を以下のように紹介します。
1日を通して、石けんとぬるま湯でこまめに手を洗うこと。少なくとも20秒以上は洗い続けるようにします。
・ 洗っていない手で口、鼻、眼、顔面に触れないようにしましょう。
・ 具合の悪い人と食器類やカップを共用しないようにしましょう。
・ 咳やくしゃみをするときは、ティッシュで口や鼻を押さえます。使用後のティッシュはすぐに捨てましょう。
・ 自分が感染した場合は、外出を避けて家で静養しましょう。
・ ドアノブや玩具など、手に触れるものはこまめに殺菌してください。
日に日に寒くなり、様々な感染症が流行する季節になります。予防を心がけて健康な日常生活を過ごしましょう。