運動によって多くのがんのリスクが有意に低減する可能性が、大規模なレビューで示唆されました。週に2~3時間の運動をするだけでも、乳がん、大腸がん、肺がんのリスクが低減することが明らかになり、この知見は「JAMA Internal Medicine」オンライン版(2016年5月16日)に掲載されました。
今回の研究は、米国立がん研究所のSteven Moore氏を中心とするグループによって実施され、定期的な運動が13種類のがんのリスク低減に関連しているという結果が得られました。該当するその他のがんは、白血病、骨髄腫、食道がん、肝がん、腎がん、胃がん、子宮内膜がん、直腸がん、膀胱がん、頭頸部がんです。
研究グループは、米国およびヨーロッパの12件の研究データを統合し、19~98歳の成人140万人のデータベースを作成。自己申告された運動の内容によって、26種類のがんのリスクに差がみられるかどうかを検討しました。今回の研究では、仕事や家事を除く余暇時間に、健康向上のために自主的に行う運動に焦点があてられました。検討したがんのうち、半数のリスク低減に運動との関連がみられ、がんリスクは全体で7%低減し、リスク低減の範囲は42%(食道がん)から10%(乳がん)におよびました。大腸がんと肺がんは、それぞれ16%、26%低減しました。「今回、運動ががん予防に役立つ理由は明らかにしていないが、運動をするとさまざまながんとの関連が認められているホルモンの値が低下するほか、インスリンおよびインスリン様増殖因子の値も制御される」とMoore氏は指摘しています。付随論説の著者の1人である米ノースカロライナ大学(チャペルヒル)教授のMarilie Gammon氏は、「運動する人の細胞は酸化ストレスを受けにくく、DNA損傷を修復する能力も高い。食道がんをはじめとする致死率の高いがんに大幅なリスク低減が認められたことは非常に喜ばしい」と説明しています。
また、「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」(2013年10月号)に掲載された米国がん協会(ACS)による研究では、乳がんを発症した女性としなかった女性の運動の習慣を比較したところ、毎日歩いている高齢女性は、乳がんの発症リスクが低いことが報告されました。また、活発に運動をしている女性では、さらに大きな効果が得られるとも指摘されました。
米シティ・オブ・ホープがんセンター(カリフォルニア州デュアルテ)のLaura Kruper氏は、座りがちな女性に対して「ソファーから降りて歩きまわるだけでも効果がある」と助言しています。
適度な運動を日常生活に取り入れることは、がんの予防にも効果的と言えるでしょう。