うつ病と糖尿病の併存は認知症リスクを上昇させる

うつ病と糖尿病の併存は認知症リスクを上昇させる

うつ病と糖尿病の併存は認知症リスクを上昇させる

2015年3月 2うつ病と糖尿病はそれぞれに脳に悪影響を与えており、併存すると認知症リスクが有意に上昇することが、「JAMA Psychiatry」オンライン版に2015年4月15日に掲載された研究結果で示されました。

 

50歳以上のデンマーク人240万人のデータを用いてうつ病、2型糖尿病、その両方を有する人の認知症リスクを比較したところ、登録時に対象の約20%がうつ病、9%が糖尿病、4%が両方を発症していました。登録時に認知症発症者はいませんでしたが、2007~13年の追跡中に2.4%が発症。分析の結果、他疾患や糖尿病合併症を考慮しても、認知症リスクは糖尿病によって15%、うつ病で83%、両疾患の併存で107%上昇することが分かりました。この関連は65歳未満で特に強くみられました。

研究を実施した米ワシントン大学医学部(シアトル)のDimitry Davydow 氏は「うつ病患者は糖尿病や心疾患、高血圧などの慢性疾患を発症しやすいというエビデンスは多くある。うつ病があると服薬アドヒアランス(患者自身の治療への積極的な参加)が低下しやすいし、糖尿病患者はうつ病を発症しやすい」と説明。糖尿病患者では脳卒中や認知症につながる動脈硬化も起こりやすいとして、「本研究は、この問題をこのような方法で研究した最初のものとなる」と述べています。

同論文に付随コメンタリーを執筆した米ピッツバーグ大学医療センターのCharles Reynolds III氏は、糖尿病とうつ病はどちらも脳の健康を脅かすとして、脳を保護する治療を受けることも考えるべきだと主張。「運動量を増やすといった生活習慣の選択も両疾患の管理に便益がある」と付け加えています。

また、厳格な血糖管理により糖尿病患者の認知症発症リスクが低下するとの研究結果も、スウェーデン・ストックホルムで開催中の第51回欧州糖尿病学会議(EASD)年次集会で報告されました。 ヨーテボリ医学研究所のRawshani氏らは、2004~12年に国立糖尿病レジストリーに登録された2型糖尿病患者約35万人(平均年齢67歳、DM診断時に認知症既往なし)を追跡調査しました。平均追跡期間4.6年で対象の3.2%が認知症により入院。調整後の解析で、HbA1c10.5%以上の患者群では6.5%以下群に比べて認知症診断率が50%上昇しました。

これらの研究結果から、糖尿病を防ぐことは認知症の予防にも役立つと考えられるでしょう。

 

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