アメリカで「2015年版栄養ガイドライン」を発表:その①

アメリカで「2015年版栄養ガイドライン」を発表:その①

アメリカで「2015年版栄養ガイドライン」を発表:その①

2016年2月今年1月初旬、「2015年版アメリカ人のための栄養ガイドライン」が発表された。今回の改訂では野菜や果物、穀物、低・無脂肪の乳製品、脂肪の少ない肉、植物ベースのオイルの摂取を奨励。また、飽和脂肪、トランス脂肪酸、砂糖、塩分の摂取を一定以下に制限している。

 

コレステロール摂取、1日300mg以下の制限を除外

「アメリカ人のための栄養ガイドライン」は、アメリカ厚生省と農務省により5年ごとに発行される。医師や科学者などの専門家による諮問委員会が食に関する最新の研究報告を検証して作成した報告書が基になっており、政府の栄養政策をはじめ、食品表示から学校給食、医師の患者へのアドバイスまで幅広く影響を与えている。

今回発表された第8版(~2020年)「2015年版栄養ガイドライン」は、(1)生涯を通じて健康な食生活を送る、(2)バラエティー、栄養素密度、摂取量を重視する、(3)添加糖分、飽和脂肪、塩分の摂取を制限する、(4)よりヘルシーな食品や飲料を選ぶ、(5)健康な食生活の実行をサポートする、の5点を柱としている。前回の2010年版では食事からのコレステロールの1日の摂取量を300mg以下と制限したが、今回のガイドラインではこの制限が除外。一方で、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、塩分の制限がさらに厳しくなっている。そのうえ、運動の重要性についても強調している。

野菜や果物を丸ごと摂る、穀物の半分は全穀物で 

健康維持のための具体的な指針としては、理想摂取カロリー内で次の食品の摂取を奨励している。

・緑黄色、赤色、オレンジ色の野菜やでんぷん質の野菜、マメ科植物などバラエティーに富んだ野菜や果物を特に丸ごとで食べる

・穀物の半分は全穀物で摂取する

・低・無脂肪の牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品のほか、豆乳

・シーフード、低脂肪肉(赤身の肉)、鶏肉、卵、マメ科植物、大豆食品、木の実や種などのバラエティーに富んだタンパク質

・カノラ、コーン、オリーブ、ピーナッツ、サフラワー、大豆などの植物性オイル、木の実や種、シーフード、オリーブ、アボカドに含まれる天然由来の油

一方、摂取制限については次のような基準を設けている。

・添加糖分は、1日の摂取カロリーの10%以下

・飽和脂肪は、1日の摂取カロリーの10%以下

・塩分は、1日に2300ミリグラム以下

・アルコールは、女性の場合は1日に1杯まで、男性の場合は2杯まで

しかし、ガイドラインのたたき台となる諮問員会の報告書が昨年2月に発表され、赤身の肉と加工肉の摂取を控えるよう指摘されたが、今回のガイドラインでは触れていない。また、食が環境におよぼす影響「持続可能性」にも触れず、これまで摂取を制限してきたコレステロールも「過剰摂取を懸念する栄養素とみなさない」として制限を設けていない。

慢性病予防には食事と運動の両面から 

一方で、同ガイドラインではヘルシーな食事パターンに加え、運動の重要性も強調している。ガイドラインは序文で、不健康な食生活と運動不足が予防可能な慢性病の原因であると指摘。National Health and Nutrition Examination Surveyのデータを基にしたアメリカ人の食生活成績表と、National Health Interview Surveyのデータを基にした運動ガイドラインの実行率を表にして掲載している。それによると、食生活は100点満点中57.88点で、運動ガイドラインを実行している成人は約20%と、いずれも低い。

このようなことも影響してか、アメリカの成人約半分に当たる1億1700万人が高血圧や糖尿病といった慢性病を患っており、成人の約3分の2、子どもの約3分の1が太りすぎあるいは肥満と警鐘が鳴らされている。さらに、2008年の肥満による医療費は約1470億ドル、2012年の糖尿病による医療費は1760億ドルと推定されている。最新版ガイドラインでは、慢性病が蔓延し、高額な医療費がかかっている現状の打開に、食事と運動の両面からの改善が必要と全編を通じて訴えている。

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