アメリカ2015年版栄養ガイドライン、求められるサプリメント項目

アメリカ2015年版栄養ガイドライン、求められるサプリメント項目

アメリカ2015年版栄養ガイドライン、求められるサプリメント項目

ET138アメリカで5年ごとに改訂される「アメリカ人のための栄養ガイドライン」。来年には2015年版が発表される。アメリカの健康産業界はこの中にサプリメント項目の追加を強く求めているが、はたして実現するのか。最終調整に入った2015年版栄養ガイドラインの周辺事情を報告する。

 

全穀物、アメリカで圧倒的な市場規模 

連邦政府当局により、初めて「アメリカ人のための栄養ガイドライン」が発表されたのが1980年。以来、5年ごとに新たな研究データの追加や現状を踏まえた改訂が行われ、肥満や高血圧、動脈硬化といった生活習慣病を防ぐための食生活の基準が示されてきた。2005年版では初めて全穀物の推奨を明言し、2010年版では深刻な社会問題となっている肥満対策に焦点を当てた。このような国を挙げての取り組みが功を奏し、アメリカ人の間では食事に対するヘルシー志向が高まっていった。

今や全穀物ブームだが、2001年に行われた消費者調査では、成人の20%、未成年の40%が全穀物ブレッドを食べたことがないと回答していた。市場調査会社Global Industry Analysts(GIA)によると、全穀物および高繊維食品の世界市場規模は2015年までに約240億ドルに達するものと予想されている。中でもアメリカは圧倒的な市場規模を占めており、今後もその傾向は続くものとみられている。

また、今年はじめに発表された農務省のNational Health and Nutrition Examination Surveyでも、アメリカ人の食生活が改善されていることが明らかになっている。同調査報告によると、2005年から2010年までに1日の総摂取カロリーが78キロカロリー減少している。飽和脂肪由来のカロリーが3.3%、コレステロールの1日当たりの摂取量も7.9%減少しているが、その一方で植物繊維の1日の摂取量は1.2 g(7.5%)増加している。また、労働年齢の成人の42%、高齢者の57%がパッケージの栄養表示を気にしていることも明らかになった。

求められるサプリメント項目の追加 

現在、2015年版ガイドラインの諮問委員会は来年秋の発表に向け、最終の詰めの段階に入っている。特に今回同委員会が指摘しているのが、ビタミンA、E、C、D、カルシウム、マグネシウム、カリウム、葉酸、繊維の摂取不足。そのため、健康産業界は同委員会に対して不足している栄養素を補うためのサプリメント項目の追加を強く求めている。

Council for Responsible Nutrition(CRN)のサプリメントに関する2014年消費者調査によると、アメリカ人の68%がサプリメントを利用していると指摘している。サプリメントを服用する目的のトップは「総体的な健康」で54%、2位が「不足している栄養素の補給」36%、3位が「心臓病の予防」32%となっている。サプリメント市場も順調に推移している。業界紙「Nutrition Business Journal」では、アメリカの2013年サプリメント売り上げは前年比7.5%増の348億ドルで、2014年は前年比6.8%増と推定されている。このようにアメリカ人にとって、不足した栄養素を補い、健康を維持するうえでサプリメントは欠かせないものとなっている。しかし現状は、正確な情報を得ないまま摂取している人も多いようだ。

Life Extensionのヘルス・サイエンティスト、マイケル・スミス医師は、オンラインマガジン「NUTRA ingredients-usa.com」に掲載の2014年4月15日付の記事の中で、アメリカ人の3分の2から4分の3くらいの人たちがサプリメントを利用しているが、よく分からずに利用している人が多いため、きちんとした指導が必要だと述べている。こうした現状に対し、健康産業界は2015年版栄養ガイドラインにサプリメントの項目の追加を強く要求している。ただ、栄養ガイドラインの対象となるのはあくまでも「フード」である。はたしてガイドラインの諮問委員会がサプリメント項目の追加を考慮するか、が今回の焦点となっている。

消費者の現状に即したガイドラインを 

サプリメント項目の追加に加え、栄養学の専門家の間では現状に即した栄養ガイドラインを求める声も高まっている。今年はじめに首都ワシントンで開かれた2015年版のミーティングに15人の栄養学専門家らが紹集された。この中の1人、アカデミー・オブ・ニュートリション・アンド・ダイエテティクスのスポークスマン、ジョイ・デュボスト博士は、オンラインマガジン「NUTRA ingredients-usa.com」に掲載の2014年1月17日付の記事の中で、「科学的に裏付けられた証拠を基に委員会が食のアドバイスをすることが大切で、消費者の立場になって考える必要がある」と指摘している。同じくミーティングに招集されたワシントン大学の公衆栄養学センターのディレクター、アダム・ドレブノフスキ博士も同記事で、「ガイドラインは志を高く掲げすぎる傾向がある。求められているのは“すべてのアメリカ人のための”栄養ガイドラインである」と述べている。

これまで、栄養ガイドラインで奨励する食品は、手頃な値段とは言い難いものだった。そこで、だれもが経済的に実践しやすい等身大の栄養ガイドランの必要性を専門家らは強調している。2015年版の栄養ガイドラインは、現状に即した、すべてのアメリカ人が実践しやすいものになっているのか――。来年秋の発表に大きな期待が寄せられている。

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