米国で非遺伝子組み換え(NON-GMO)食品・飲料品の人気が高まり、GMO表示の義務付けを巡る議論が沸騰している。大手スーパーやレストランはNON-GMOを掲げて消費者にアピールしている。米国におけるGMO表示の現状を報告する。
米国民の93%がGMO表示を望んでいる
現在、日本では健康食品の機能性表示が話題となっているが、米国では遺伝子組み換え食品(GMO)の表示の義務付けが消費者の間で最大の関心事となっている。ニューホープ・ナチュラル・メディアのサイト「ニューホープ360」に掲載の2014年10月8日付記事は、米国民の93%がGMO表示を望んでいると報告している。
米国の遺伝子組み換え研究の歴史は1970年代にまで遡る。1973年にコーエンとボイヤーが大腸菌を使った初の遺伝子組み換えに成功。1994年に遺伝子組み換え食品が商品化されたのを皮切りに、今では米国で生産される大豆、トウモロコシ、サトウダイコン、綿花の約90%がGMOとされている。
需要高まるNON-GMO商品
急速にGMO商品が浸透していることに不安を抱く消費者も少なくない。そうした世情を反映してか、NON-GMO商品がブームになっており、スーパーや外食産業では消費者にアピールしている。高級志向の食品店、ホールフーズでは2018年までにGMO商品の表示を計画している。また、すでにNON-GMO商品しか販売していないのがトレーダー・ジョーズ。さらに、大手レストランチェーン店などもNON-GMOを続々宣言している。
業界紙ニュートリション・ビジネス・ジャーナルとニューホープ・ナチュラル・メディアの共同調査報告によると、2013年の食品・飲料品の売上成長率は、GMO商品が2.3%、オーガニック認定商品が12%だった。これに対し、非営利団体「NON-GMOプロジェクト」の認定を受けた商品の成長率は99%と抜きん出ている。「NON-GMOプロジェクト」は、NON-GMO商品の推進や消費者教育に尽力している団体で、現在、約2万の商品を認定している。同団体によると、認定を受けた商品の売り上げは年間約70億ドルにのぼり、毎週、70~80商品が新たに認定の申請をしているという。とはいえ、売り上げの占有率をみると、食品・飲料の2013年総売り上げ7200億ドルのうち、GMO商品の占める割合は76%、オーガニック認定商品は4%、NON-GMOプロジェクト認定商品は1%で、NON-GMO商品の占める割合はまだまだ低いのが現状だ。
GMO表示義務化めぐり2州で住民投票
米国では毎年11月、州ごとの重要な政策の是非をめぐり各州で住民投票が行われる。案件は一定数の署名が集まれば住民投票にかけられる。今年はGMO表示の義務付けに対し、人口約530万人のコロラド州で16万7950人、人口約400万人のオレゴン州で15万5661人の署名が集まり、いずれも投票実施の要件を満たしたため、住民投票にかけられることになった。ちなみにオレゴン州では2002年にもGMO表示義務の法律化について賛否が問われているが、賛成3・反対7の比率で否決されている。
また、ヘルシー志向の高いカリフォルニア州でも2012年に住民投票にかけられているが、600万人が表示の義務化にYESと投票したものの、結果は敗退。その要因として、住民投票直前に「GMO表示が義務付けられた場合、消費者の年間食費が400ドルもアップする」という広告がTVで大量に流れたことなどが挙げられている。
しかし、これについては、最近の米消費者同盟が調査報告で、GMO表示が義務付けられても、消費者1人につき年間平均わずか2ドル30セントしか食費は上がらないと結論付けている。現在、全米で唯一GMO表示の義務付けを実現しているのがバーモント州。同州のピーター・シュムリン知事が署名し新法として成立、2016年7月から施行される。また、コネティカット州とメイン州でも表示義務付け法案が可決されているが、他の州との足並みが揃うまで施行は見送りとなっている。
もはや世界の約60カ国で表示が義務付けられているGMO。GMO大国の米国で表示義務化の動向が注目される。