米国で成立20周年を迎えたDSHEA(栄養補助食品健康教育法) ①サプリメントの夜明け

米国で成立20周年を迎えたDSHEA(栄養補助食品健康教育法) ①サプリメントの夜明け

米国で成立20周年を迎えたDSHEA(栄養補助食品健康教育法) ①サプリメントの夜明け

2014年8月号米国では、栄養補助食品に関する画期的な法律「栄養補助食品健康教育法(DSHEA)」が今年成立20周年を迎えた。サプリメントについての規制の枠組みを確立し、商品の安全性や質を保証するDSHEA。日本で安倍政権が掲げた「栄養補助食品の機能性表示解禁」は、このDSHEAを参考にしていると言われている。2回にわたってDSHEAのこれまでの変遷を振り返ってみる。 

「慢性病の発症を抑え、医療費削減につながれば」とDSHEAに期待 

サプリメントの需要の高まりや経済効果などを踏まえ、DSHEAは1994年にクリントン政権のもとに成立した。クリントン元大統領は、「数年にわたる熱心な取り組みにより、メーカー、栄養学の専門家、米議会議員は、消費者と協力し、規制そして法のもとにサプリメントの扱いについて共通の認識を得ることができた」と新法を歓迎。ホワイトハウスのプレスリリースでも、「食生活が生活の質や寿命に影響することを人々が認識する時代にふさわしく、国民の健康向上を目指し、政府はサプリメントの規制改革を行うに至った」と、「サプリメントの夜明け」を宣言した。

新法の序文では、「健康の向上および病気の予防において、栄養素の重要性そしてサプリメントの効用が急速に科学的に立証されている」と、成立の根拠について触れている。法的なガイドラインを設け、消費者の健康教育、栄養素の摂取、安全なサプリメントの利用といった病気の予防を促進することによって、国民が自助努力で慢性病の発症を抑え、医療費削減につながれば――。政府はDSHEAにそんな期待を寄せていた。

サプリメントの市場規模、毎年6~7%の成長 

序文ではさらに、連邦当局は、安全性で商品に問題があれば厳しく取り締るべきだが、サプリメント産業が米経済に不可欠であることを踏まえ、安全な商品の販売および消費者への正確な情報提供の妨げになるような、不当な規制をしてはいけないと定めている。 DSHEAの成立以降、サプリメントの安全強化を図るため2007年に適性製造基準(GMP)法と重篤な有害事象報告(SAER)法が成立している。GMP法により、サプリメントへの不純物や有害物質の混入を防ぎ、含有物を正確にラベルに表示すること、SAER法により、重篤な有害事象の報告がいずれも義務付けられた。このように規制は強化されたが、サプリメントの市場規模はGMP法とSAER法の成立前(2006年)は225億ドルだったが、成立後、2007年には237億ドルと5.9%成長、その後も毎年6~7%の成長を続けている。

効能の記載、FDAの許可なしで企業側の自由裁量に 

DSHEAにより、サプリメントは「ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸のいずれかを含み、通常の食事を補うことを目的とするあらゆる製品(タバコを除く)」と定義され、商品ラベルへの効能記載が合法化された。これによって、それまで食品扱いだったサプリメントは、「ニュートラスーティカル」と呼ばれる食品と医薬品の中間に位置するカテゴリーに分類され、食品医薬品局(FDA)の許可を受けずに、企業の自由裁量で製造や販売、そして効能の記載をすることができるようになった。ただし、医薬品のように治験で効果を実証されたものとは異なるため、ラベルに病気の治療効果を表示することは禁じられており、「効能はFDAに評価されていない」、「治療用ではない」といった、医薬品と明確に区別する表示が義務付けられている。その一方で、安全性の管理責任はFDAに移管された。FDAは製造管理や品質管理で基準を満たしていない場合の販売停止や業務停止を執行できる権限を与えられた。FDAは問題のあった製品をオンラインで公開し、消費者がサプリメントを購入する際の参考となるように情報提供を行っている。さらに、DSHEAによりアメリカ国立衛生研究所にOffice of Dietary Supplementsが設置され、サプリメントのデーターベースや有効性に関する研究報告なども公開されている。

DSHEA施行後、米国民の7割がサプリメントを利用 

サプリメント関連専門誌「ニュートラスーティカル・ワールド」6月2日付オンライン版に掲載されたDSHEA成立20周年関連記事によると、ハーブを含めた米国のサプリメント売り上げはDSHEA施行から4年の間に約40億ドルから120億ドルと3倍に膨れ上がり、今では300億ドルを超える。また、非営利団体「食品・医薬品法律研究所」の2012年11月/12月号機関誌に掲載された記事によると、ハーブの売り上げは、法成立前は年間約15億ドルだったが、成立後わずか3年で32億4000万ドルに増加した。漢方医30人を対象に実施した調査では、全員が「DSHEAは漢方業にポジティブな影響を与えた」と答えており、さらに「漢方を医薬品でも食品でもなく別のカテゴリーに分類したことで、患者が漢方を利用しやすくなった」と、DSHEAを歓迎していることも分かった。サプリメントの普及率にも目を見張るものがある。法成立前は少なくとも1種類のサプリメントを摂っている米国人の比率は、総人口のうち42%だったが、現在では69%(1種類以上を定期的に摂取している人は53%)と大幅に上昇している。また、FDAの統計では、市場に流通している商品数は1993年には2万5000種類だったが、現在は2万9000種類に増加したとされている。ただし、サプリメント業界の統計では、現在、5万種類のサプリメントが販売されていると発表されている。

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