世界規模で成長し続けているプロバイオティクス市場。アジア太平洋やヨーロッパ市場の売上げには遅れをとるものの、アメリカでも消化器官の健康などに有益な商品として関心が高まっている。そんなアメリカのプロバイオティクス市場について報告する。
世界市場は2018年に449億ドルに
市場調査会社トランスペアレンシー・マーケット・リサーチによると、プロバイオティクスの世界市場規模は、2011年に279億ドルだったが、2018年には449億ドルに達し、2013年から2018年の成長率は6.8%と予想されている。世界市場では、アジア太平洋地区とヨーロッパが優勢で、特にアジア太平洋地区は今後もますます成長が期待できるマーケットとして注目されている。プロバイオティクスの商品形態としては食品と飲料が最も人気で、両分野の市場は2018年までに379億ドルに達するものと予測されている。ここ数年は、サプリメントや家畜のエサとしての売り上げが急成長している。
アメリカ人の65%がプロバイオティクスの摂取を増やす傾向に
アジア太平洋やヨーロッパの市場規模にはまだまだおよばないアメリカだが、市場の開拓では大きな可能性を秘めている。 大手調査会社ミンテルの最新統計によると、アメリカ人の10人に9人が胃腸のトラブルを抱えている。そのうえ、胃腸のトラブルを抱えているアメリカ人のうち38%は食生活を改善するよりも食べたいものを食べ、サプリメントや薬で症状を緩和することを選んでいる。特に、胃腸薬ではなくサプリメントによるトラブルの改善を試みる傾向が強く、アメリカ人の20%がプロバイオティクスを常用しており、29%がヨーグルトや繊維の多い食品の摂取を増やしている。また、65%が食生活で繊維の摂取量を大幅に増やすなどの改善を試みている。
こうした消費者の潜在需要により、アメリカでのプロバイオティクスの市場拡大が期待される。前述のトランスペアレンシーの調査報告では、アメリカのプロバイオティクスの売上げは、2010年には28億ドルだったが、2018年には48億ドルに上昇するものとみられている。
7割のアメリカ人がプロバイオティクスの働きを知っている
アメリカでは、つい数年前まで「プロバイオティクスって知っている?」と聞いても、知らない人が多かった。しかし近年、プロバイオティクスが腸内フローラのバランスを改善し、人に有益な作用をもたらす生きた微生物であることを知っているアメリカ人が増えている。
調査会社マコー・リサーチによると、プロバイオティクスの働きを知っているアメリカ人は、2007年には全体の47%だったが、2010年には73%に上昇。なかでも胃腸にトラブルのある人たちの認知度は82%と高い。プロバイオティクスは人に有益な作用をもたらす生きた微生物の総称であり、その効果は菌ごとに特有であることから、それぞれの菌の有効性と安全性を立証する科学的研究の必要性がさらに高まっている。プロバイオティクスには胃腸の健康、免疫力の向上、乳児の健康、女性の健康、ストレス緩和など、様々な分野で有効性が期待されている。
今後、プレバイオティクスと共に一大市場形成も
小児の下痢や過敏性腸症候群などの病気に対するプロバイオティクスの治療効果の研究が進んでいる。とはいえ、米国食品医薬品局(FDA)は、健康向上において体の機能や構造にプロバイオティクス製品がどのように働くかという表示を認めているが、病気の治療効果の表示やリスクを軽減するという健康強調表示は認めていない。業界としては治療効果を表示したいところだが、規制改革に力を入れるよりもまず消費者の教育に力を入れるべきだとの声も挙がっている。
一方、プレバイオティクスは消化管上部で分解・吸収されず、腸内でプロバイオティクスのエサとなり、善玉菌だけを増やす働きがある。プレバイオティクスの世界市場規模は2018年には45億ドルに達し、2012年から2018年の成長率は11.4%とプロバイオティクスの成長率を上回ると予測されている。
今後、アメリカでプロバイオティクスとプレバイオティクスに対する消費者の認知度が高まれば、アジア太平洋やヨーロッパに並ぶ一大市場の形成が期待される。