米国で求められる「ナチュラル」の定義

米国で求められる「ナチュラル」の定義

米国で求められる「ナチュラル」の定義

9月 訂正スーパーや健康食品店などにずらりと並んだナチュラル表示の食品やパーソナルケア商品。消費者も好んでこれらの表示の商品を買う傾向があるが、実際にはオーガニック表示のような明確な定義や規定はない。このような不透明な状況を受け、米国では「ナチュラル」の定義を求める声が高まっている。

 

ナチュラル業界、990億ドル市場

「ナチュラル」を謳った商品が主要マーケットで見られるようになったのは1920年代。その後、1970年代には天然の素材を使ったパーソナルケア商品の登場で市場規模が広がり始めたといわれている。米国最大規模の健康関連商品の展示会「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ・ウエスト」によると、当時、これらの商品の大半が個人経営の店や生協で売られており、市場規模は24億ドルと推定されている。その後、健康ブームに乗ってサプリメントやヘルシーフードの需要が一気に高まったが、ナチュラル・フーズ・マーチャンダイザー誌の「2013年ナチュラル小売店マーケット調査概要」によると、2010年のオーガニック商品を含めたナチュラル商品の市場規模は990億ドルで、そのうち小売店の売り上げが41%を占めている。ちなみに小売店のカテゴリー別売り上げは、「ナチュラル」を謳った食品が236億4000万ドル、サプリメントが117億9000万ドル、パーソナルケア商品とその他が55億5000万ドル。草で育てられた家畜の肉や乳製品のほか、グルテンフリーの小麦粉、プロバイオティクスのスナックや飲み物が消費者の高い関心を集めているという。

「ナチュラル」の需要と現状

近年、スーパーなどで商品に記載されている表示をチェックしている買い物客をよく見かけるようになった。米国の消費者の半数以上が食品や飲料品の表示をチェックし、よく知っている素材の表示を好んで買っているが、このような傾向からも消費者の「ナチュラル」志向が高まっていることがうかがえる。今年3月に開催された「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ・ウエスト」のセミナーでも、その傾向を裏付ける調査報告が発表された。ナチュラル・マーケティング・インスティテュート(NMI)の調査報告によると、消費者が食品や飲料品を購入する際に最も重視している表示は、37%が「Non GMO(遺伝子組み換え作物)」、29%が「ナチュラル」、25%が「オーガニック」だった。消費者の50%以上が「ナチュラル」と表示されていれば無農薬で安全と信頼を寄せる一方で、「なぜナチュラルなのか?」と定義もなく不透明な表示への不信感も高まってきているという。

そこで、米農務省(USDA)認定のオーガニック商品と、ナチュラル商品についての規制をそれぞれ項目別に比べてみた。農薬、遺伝子組み換え作物、抗生物質、成長ホルモン、汚泥および照射の項目をみると、オーガニック商品はいずれも使用が禁止されているが、ナチュラル商品については規制がない。さらに、オーガニック商品の表示には、動物を保護する、放牧シーズンには牛を放牧する、環境汚染を避ける、農場から食卓までの過程をチェックする、検査を含め認証を要する等使用が許される素材についての法的制約がある。一方で、ナチュラル商品についてはこれらの制約はない。これでは消費者が不信感を抱くのも当然である。

ナチュラル商品については表示についての制約がないため、訴訟も相次いでいる。そのような現状への対処として、食品医薬品局(FDA)は食品メーカー等に合成化学保存料など明らかにナチュラルではない原材料を含んだ商品には表示をしないよう警告する文書を送りつけている。しかし、今後もFDAは「ナチュラル」という言葉の定義づけをする意向はないようで、合成着色剤や人工香料、合成物質など明らかに「ナチュラル」でないものを含まず、かつ消費者に誤解を与えるような表示でなければ禁止や規制はしないという従来のスタンスを変えていない。

NPAが「ナチュラル」の定義づけを2014年の抱負に

そこで行政に任せたきりにせず、自分たちで対策を講じようと立ち上がったのが、ナチュラル業界を代表する事業者団体「ナチュラル・プロダクツ・アソシエーション(NPA)」である。同団体は「ナチュラル」の定義づけを2014年の抱負に掲げた。NPAは、政府指導の明確な定義づけがないことでメーカー等が困惑し、食品におけるナチュラル表示をめぐる訴訟が相次いでいることから定義づけの必要性が高まっていると指摘。このまま何もしなければ、「ナチュラル」の定義は訴訟における裁判所の判断に委ねられてしまうと警告している。NPAは2008年にパーソナルケア商品、2010年にホームケア商品についてナチュラル認証プログラムを導入し、水を除く原料の95%以上が天然で、健康に害をおよぼす原料を含まず、原料の全てを表示する等の基準を満たしていればNPA認証のナチュラル表示を許可するとしている。NPAでは、食品についても供給業者およびメーカー等と協力して定義を確立したうえで、認証の基準を設けていく方針だという。

ここでキーポイントになるのが、遺伝子組み換え作物を含んだ商品に表示を認めるかどうかという点である。表示の基準のハードルが高すぎて認定がむずかしくなるのは避けたいNPA。ただ、NPA自身が「遺伝子組み換え作物は自然界に存在しない」という見解を打ち出しているため、今後の対応に大きな関心が集まっている。

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