巷に溢れかえるダイエット。その中から、自分の体にあったものを選ぶのは至難のわざ――。そこで、前回に引き続きヘルシーなダイエットをランク付けしたU.S. News & World Reportの「2014年ベスト・ダイエット」から、今回は糖尿病や心臓病対策に有効なダイエットを紹介する。
※ダイエット(diet)は食事法の意。
米国で7840万人が肥満
米国では肥満が深刻な問題となっており、米国心臓協会によると20歳以上の成人のうち1億5470万人が太りすぎで、うち7840万人が肥満(BMI30以上)といわれている。男女別では、太りすぎ又は肥満の男性は7990万人、女性は7480万人と男性の方が多いが、肥満だけでみると男性3680万人、女性4160万人と逆転する。このままのペースで肥満人口が増え続けると、肥満に起因する疾患にかかる医療費は2030年までに8610億ドルから9570億ドルに膨れ上がり、米国の総医療費の16%から18%を占めるようになると予想されている。
糖尿病に効果的な菜食ダイエット
肥満と大きく関係しているのが糖尿病である。米国糖尿病協会によると、米国で総人口の8.3%にあたる約2580万人が糖尿病患者で、20歳以上の成人のうち7900万人が糖尿病予備軍といわれている。現在、1日に5205人もの20歳以上の成人があらたに糖尿病と診断されており、糖尿病で毎年約7万1400人が死亡している。医療費1760億ドルに加えて、早期の死、休職などによる年間の経済的な損失額を計算すると2450億ドルにのぼる。「2014年ベスト・ダイエット」の糖尿病部門では、トップが前回紹介した総合ダイエットで4年連続トップの「DASHダイエット」。以下、「メイヨー・クリニック・ダイエット」、「オーニッシュ・ダイエット」、「エンジン2・ダイエット」、「フレキシタリアン・ダイエット」と続いている。「メイヨー・クリニック・ダイエット」は、ミネソタ州ロチェスター市に本部を置く総合病院「メイヨー・クリニック」のヘルスエキスパートが減量を目的に作った低カロリーのダイエットである。野菜や果物、全穀物が中心の同クリニック独自のフードピラミッドを基にしたもので、これに加えて1日に少なくとも30分の運動を推奨している。「エンジン2・ダイエット」と「フレキシタリアン・ダイエット」は、基本的には低脂肪の菜食主義のダイエットで、糖尿病改善の効果は科学的にも立証されている。
心臓病に効く最強ダイエット「オーニッシュ」
糖尿病は心臓病とも深く関わる。前出の米国糖尿病協会によると、65歳以上の糖尿病関連の疾病で死亡した患者の68%に心臓病が確認されている。疾病対策予防センター(CDC)の統計では、心臓病による死亡者数は年間約60万人で、死者4人のうち1人が心臓病で死亡している計算になる。心臓病の中で最も多いのが冠状動脈性心臓病で、年間の死亡者数は約38万5000人、経済に与える損失額は年間1089億ドルと推計されている。CDCは心臓病による死亡件数の4件につき1件は、予防や治療で防ぐことが可能という内容の報告書を昨年公表して大きな話題となった。米国で男女ともに死因第1位の心臓病だが、この予防に「2014年ベスト・ダイエット」ではトップが「オーニッシュ・ダイエット」、以下「TLCダイエット法」「DASHダイエット」と続く。
「オーニッシュ・ダイエット」は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の教授で、予防医学研究所の創設者ディーン・オーニッシュ氏らが、心臓病患者のために考案した菜食中心の超低脂肪ダイエットである。オーニッシュ氏の著書「もっと食べて、減量しよう」は米国でベストセラーにもなった。このダイエットは、摂取カロリーのうち脂質の割合を10%に制限し、肉をはじめ動物性食品を一切禁止とする。ただし、卵白のほか無脂肪の牛乳やヨーグルトであれば1日1カップまでは許される。運動、ストレス管理、禁煙などもダイエットに組み込まれている。
1990年に医学雑誌「ランセット」に掲載された心臓病患者48人を対象にした研究報告でも、オーニッシュ・ダイエットによる心臓病の治療効果が明らかになっている。同研究では、対象を2組に分け、1組にオーニッシュ・ダイエット、もう1組に普通の食事を摂ってもらった。結果、1年後に「オーニッシュ」組は動脈閉塞が治り、5年後も大きな治療効果がみられたが、「普通食」組は症状が悪化していたという。また、「オーニッシュ」組は、血圧、総コレステロール値と悪玉コレステロール値の全てが低下していた。