米国DSHEA(栄養補助食品教育法案)がバッシング 揺れる米国サプリメント業界

米国DSHEA(栄養補助食品教育法案)がバッシング 揺れる米国サプリメント業界

米国DSHEA(栄養補助食品教育法案)がバッシング 揺れる米国サプリメント業界

kaigai65 科学的な根拠が明らかであれば効能表記ができる—。1994年、米国でDSHEA(栄養補助食品教育法案)が成立した。法案の施行後、米国サプリメント業界に追い風が吹き、市場は2ケタ台の伸びを示した。そのDSHEAが今、パッシングの憂き目にあっている。違法サプリメントが続出したためだ。マスコミのDSHEA叩きで揺れる米国サプリメント業界を報告する。

ダイエットサプリメント、医薬品成分含有で回収

この1年、医薬品成分を含む違法サプリメントの自主回収という不祥事が相次いでいる。

昨年12月、FDA(米食品医薬品局)はダイエット効果を謳った28種類のサプリメントにシブトラミン、ブメタニドなどの医薬品成分が含まれ、人体に害を及ぼす恐れがあると警告、メーカーに自主回収を勧告した。

こうしたサプリメントは、今年1月に69種類、3月には72種類と増え、医療機関はただちに服用を止めるよう訴えた。

そして今年5月、またもダイエットサプリメント「ハイドロキシィカット」が自主回収を勧告。肝臓に障害をおよぼす成分が含まれていると、FDAが警告した。
これまでに23件におよぶ肝障害の報告があり、うち1件は、19歳男性の死亡報告で、男性は2007年に死亡、メーカーからFDAに報告があるまで2年も経過していたという。

筋肉増強サプリメントの副作用が浮上

業界紙ニュートリション ビジネスジャーナルによると、米国のダイエットサプリメント市場は17億ドル。中でも、「ハイドロキシィカット」は、2008年には900万個を売り上げ るほどのメガヒットとなった。2004年、心臓発作や脳卒中などへの関与が報告され、販売禁止となったダイエット素材「エフェドラ」に代わり人気を集め た。

ちなみに、「エフェドラ」に関しては95-97年の時点で26件以上の有害性報告があり、FDAが97年6月に使用について勧告している。2002年に は、エフェドラ配合のダイエット製品を飲んだボルティモア・オリオールズのピッチャーがトレーニングを終えて24時間内に死亡する事件が発生。その年の 10月、American Medical Associationがエフェドラ配合サプリメントの販売禁止を求める法案を上院の諮問委員会公聴会に提出した。

今年前半はダイエットサプリメントの自主回収が相次いだが、7月になると、筋肉増強サプリメントによる副作用が浮上。FDAは、8種類のサプリメントに 医薬品成分であるステロイドやステロイドに似た物質が含まれ、急性の肝障害や腎障害などを引き起こす恐れがあると警告、服用を止めるよう勧告した。

こうした一連の不祥事に対し、ハーバード大学医学部のピーター コーヘン医師は医学誌ニューイングランド ジャーナル オブ メディシンの中で、市販されている140のサプリメント商品に、有毒ハーブやバクテリア、医薬品など健康に害をおよぼす危険のある成分が含まれていると指摘。
とくに、性欲増進、ダイエット、筋肉増強といった商品が要注意と警告、またブルームバーグ ドットコムのwebで、サプリメント選びをロシアンルーレットにまで例えるなど、規制の強化を求めた。

メディアによるDSHEAバッシングが過熱

相次ぐサプリメントの自主回収騒ぎで、DSHEA(栄養補助食品教育法案)が今、バッシングにあっている。
DSHEAとは、1994年、クリントン政権下に米国で成立したサプリメントに関する画期的な法案で、従来の規制が大幅に緩和された。これにより、サプ リメントは食品や医薬品とは異なるカテゴリーに位置付けられ、医薬品のような病気への治療効果は表示できないが、健康に寄与するという科学的論拠が明らか であれば、ラベルに効能表記が許可。また、販売の際、雑誌記事などの情報の使用も認められた。

この新法を追い風に米国サプリメント市場は2ケタ台の伸張を遂げ、活況を呈した。Government Accountability Officeの報告によると、DSHEAが成立した1994年に市販されていたサプリメントの商品数はわずか4000だったが、2008年には7万 5000にまで増えたという。

DSHEA施行から15年、DSHEAによる規制緩和を背景に増加の一途をたどるサプリメント。ここにきて、相次ぐサプリメントの自主回収で、DSHEAのあり方を問う報道が過熱している。

11月、ボストングローブ紙は社説で、DSHEAのせいで、サプリメントが市場に出回り被害が報告されてからでなければ、FDAは何もできない、と辛口 批判を展開。米国で1億1400万人がサプリメントを服用している今、連邦議会は、サプリメント業界の規制緩和をもたらしたDSHEAに終止符を打つべき と主張している。

また、ロサンゼルスタイムズ紙webのブログでは、DSHEAの内容を見直さない限り、消費者が実験用モルモットにされるのを防ぐことはできないと警告。

この他、スポーツイラストレイティッド(09/5月号)も、DSHEAは、サプリメント業界サイドのロビイストの力によって成立したと辛らつだ。効果や安全面で科学的に立証もされず、FDAの認可なしにサプリメントが売れるようになったのはDSHEAのせい、としている。また、発売後に被害が報告されても、FDAは商品への警告はできるが、メーカーが応じなければ単独で回収に踏み切る権限すら与えられていないと批判する。

今回のようなDSHEAバッシングは初めてというわけではない。前述のダイエット素材「エフェドラ」の健康被害問題が生じた際も、法案施行3年目にして、政府関係筋で法案見直しの動きが浮上している。

DSHEA成立の背景には、「年々膨張する医療費を抑えたい」という米政府筋の強い意向があったこともあり、NIH(米国立衛生研究所)がハーブの医療 効果を調べる臨床研究を公的機関に委託するなど、擁護ムードもみられたが、今回はとくにマスコミが手厳しい。一部の違法サプリメントのおかげで、サプリメ ント全般が誹りを免れないような状況だ。

2007年、サプリメント規制をめぐり、「サプリメントおよび非処方箋薬に対する消費者保護法」が施行された。これにより、サプリメントを服用し死亡、 入院、または健康を害したという被害報告があった場合、メーカーは15日以内にFDAに報告することが義務付けられた。以来、毎年、被害報告は推定5万件といわれている(Government Accountability Office調べ)。

一部の違法サプリメントの自主回収から再燃した今回のDSHEAパッシング、高額な医療費の請求で、生活破たんにまで追いやられる国民もいる。健康に寄与するサプリメントまでもが巻き添えを食うことがないよう望まれる。

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