メディテーションの幅広い医療効果 純粋な医療としての認知高まる

メディテーションの幅広い医療効果 純粋な医療としての認知高まる

メディテーションの幅広い医療効果 純粋な医療としての認知高まる

report_201202 地球上にある薬局で一番頼りになるのは、大手薬局チェーンを持つセーブオンでもライトエイドでもなく、人間の身体だ。そ して、人間にとって最も重要な健康法がメディテーション(瞑想)である—。ニューエージクリニックのメディカルディレクター、デーヴィッド・サイモン 医師の言葉だ。スピリチュアルなアプローチが欠落した近代西洋医学が限界に直面している今、アメリカで瞑想の医療効果が注目されている。

過去WHOの健康定義に”スピリチュアル”加わる動き

1998年の第101回世界保健機関(WHO)執行理事会で、健康定義改正案の総会提出が可決された。

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.” (「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」1951年官報掲載の訳)というこれまで の健康定義に、“ダイナミック”と“スピリチュアル(霊的)”の2語を新たに盛り込み、次のように改定しようという動きだった。
“Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”(健康とは、完全な肉体的、精神的、霊的及び社会的福祉のダイナミックな状態であり、単に疾病まはた病弱の存在しないことではない)
ところが、1999年の第52回世界保健総会では、ほかの案件に比べ健康定義の改定は緊急を要していないなどの理由から、審議なしの採択見送りとなった。

というわけで、結果的には “スピリチュアル(霊的)”という言葉は健康定義に追加されることはなかった。しかし、近代西洋医学の成熟限界に伴い、病気を心と体という全人的なアプ ローチで癒す代替医療への関心が高まる中、西洋医学との統合の動きが近年、活発になっていることが、この“スピリチュアル”追加の背景にあったといえるだろう。

痛みの緩和、血圧降下作用など

スピリチュアルといえば、まず頭に浮かぶのが瞑想だ。瞑想し心身ともにやすらぐ—。そんなスピリチュアルな行為として関心を呼んでいるが、ここ最近、純粋な医療行為としても注目されはじめている。実際、治療のひとつに使っている医者も年々増えているほどだ。うつ病や高血圧の治療など様々な目的で。 心臓病や心臓発作のリスクを下げるほか、痛みを和らげ、免疫力を高めるといった数々の効能も臨床研究で実証されている。

そこで、最新の研究が明らかにした瞑想の効き目を紹介しよう。
心身医学誌に掲載された最近の研究報告によると、8週間にわたり瞑想した25人と、そうでない16人にインフルエンザのワクチンを注射したところ、瞑想 グループの身体の抵抗力が、瞑想を行わないグループをはるかに上回った。また、同研究では前向きな気分作りに関係深いとされる左前頭葉の活動が、瞑想する ことで活発になっていることも明らかになっている。ただし、対象が少ないことから、結論付けるにはさらに研究が必要だという。

まだ、予備実験段階ではあるが、大きな関心を集めているのが「慢性関節リウマチの痛み緩和効果」。アメリカで慢性関節リウマチ患者数は約210万人で、 うち大半が女性。メリーランド大学医学部の研究員が、患者36人に呼吸に集中する瞑想法に参加してもらったところ、参加者の間から痛みがやわらぐといった ポジティブな反応が出ているという。

ロサンゼルスにあるシダーズ・サイナイ医療センターの研究で確認されたのが「血圧を下げる効果」。冠動脈性心疾患の患者が16週間にわたりマントラを唱える瞑想法「トランセンデンタル・メディテーション(TM)」を試みたところ、血圧およびインシュリンの値で改善が見られた。研究報告は、TMに血圧を下げる医薬品とほぼ同じ効果があると結論づけている。

不妊や子供の多動性障害(ADHD)など幅広く応用

また、ほかのリラックス療法との組み合わせで「不妊療法」にも使われはじめている。ハーバード大学の研究は、瞑想やヨガを組み合わせたリラックス療法に 参加した不妊に悩む女性の55%が、参加から1年以内に妊娠したと報告している。実際、カリフォルニア州のスタンフォード・ホスピタル・アンド・クリニッ クでは今年9月から不妊治療にリラックス療法を導入。ニューヨーク大学医学部の病院でも来年から不妊治療に取り入れる予定だ。しかし、現時点では、ストレ スと不妊がどう関係しているかはっきりしたことは分かっていない。

瞑想の恩恵を得ているのはなにも大人ばかりではない。子供の心と体にも効くという研究報告が次々と発表されている。 まずは、「血圧を下げる効果」。ジョージア医科大学が同州オーガスタに住む正常値より少し血圧の高い10代のアフリカ系アメリカ人156人を対象に行った研究で、子供の「血圧が下がる」ことも確認された。

研究報告によると、高血圧予備軍の対象が4ヶ月間にわたり1日2回15分のTMを毎日行ったところ、収縮期血圧(上の血圧)が平均3.5mm、拡張期血 圧(下の血圧)が平均3.4mm、いずれも下がっていることが分かった。中高年になって突然、高血圧になると思ったら大間違い。病気の下地作りはすでに 10代からはじまっている。ちなみに、アフリカ系アメリカ人が対象になっているのは、ほかの人種に比べ高血圧罹患率が最も高いからだ。

「注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状を改善する効果」もあるという。メリーランド州のシルバースプリングにある私立校で、ADHDと診断された5年生から高校生まで11人に毎日、1日2回の瞑想をしてもらったところ、集中力が高まったほか、他動性や衝動性といった症状の改善がみられた。
このように適用範囲の広い瞑想。手軽な“心のクスリ”として、医療費削減効果にも大きな期待が寄せられている。

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