香りでストレスケア、医療にも応用  アロマセラピー

香りでストレスケア、医療にも応用  アロマセラピー

香りでストレスケア、医療にも応用  アロマセラピー

kaigai11 アメリカで毎年2ケタの売上率を伸ばしているアロマセラピー。美容と健康の両面で人気を集めているが、ここ最近、医療目的での利用が増えているという。アメリカで人気の精油とその働きなどをまとめてみた。

クレオパトラも香りのパワーを活用

アロマセラピーは、芳香植物(ハーブ)から蒸留法や圧搾法によって抽出した天然の精油を使い、その芳香成分のもつ薬理作用を利用して心身の病気を治療する「植物療法」のこと。ラベンダーやペパーミントの香りをかいでストレスケアに活用したり、最近では炎症を抑えるなどの医療行為としても注目されている。

「香りのパワー」の歴史は古い。絶世の美女といわれるクレオパトラは、室内にバラの花びらを敷き詰めて、そのアロマで男性を魅了したとか。

それはさておき、植物療法は何千年も前から世界のさまざま な地域で利用されていたが、「アロマセラピー」という言葉ができたのは1937年。名付け親は、フランスの科学者ルネ・モーリス・ガットフォセ。実験中に 大やけどを負い、ラベンダーの精油で傷を癒したのをきっかけに研究をはじめ、37年に「アロマセラピー」という言葉を使って論文を出したことで、一般的に 使われるようになった。

精油成分の吸収経路は3ルート

ところで精油に含まれる芳香成分は、どのように心身に働きかけて病気の症状を緩和するのだろうか。それには3つのルートがある。

<ルート1>鼻や気管などの呼吸器粘膜を通して。
芳香浴や蒸気吸収で、芳香成分が鼻腔から入り嗅覚を刺激して、信号として脳に伝わる。そして大脳辺緑系や視床下部に働き、感情や自律神経、ホルモン分泌に 影響し、気分をリラックスさせるなど心と体にさまざまな影響を与える。また、呼吸により肺に吸収された芳香成分は、肺胞から毛細血管へと吸収され、血液にのって全身に運ばれて効果を発揮する。

<ルート2>口や胃腸からのルート。
精油を内服することで、芳香成分が消化器官から吸収され、血液中に移行し、全身に行きわたり効果を生み出す。

<ルート3>皮膚から吸収されるルート。
入浴やマッサージによって、芳香成分が皮膚から吸収され、血管を通って全身に行き渡り効果を発揮する。精油をマッサージに用いるときは、キャリアオイルと呼ばれるオイルで必ず薄める必要がある。

アメリカでセラピー目的の利用度高まる

「アロマセラピーは美容そして健康の両面で大きな効果があります。でもここ最近、セラピー目的の利用にトレンドはシフトしているといえるでしょう」と話 すのは、カリフォルニア州アナハイムで3月に行われた超大型ナチュラルプロダクツの見本市でアロマセラピーについて講演したアロマセラピストのティム・ブラックレーさん。
精油をたいて香りをかぎ、心身ともにやすらぐだけでなく、病気の症状緩和のために利用する人が増えてきているという。

現在、人気チャートの上位を見ると下記のようになる。
1位 ラベンダー
2位 ティーツリー
3位 ペパーミント
4位 ユーカリプタス
5位 ローズメアリー

1位のラベンダーは、科学的な研究が最も盛んに行われている精油のひとつだ。
そして、セラピー目的の利用が高まっていることから人気急上昇なのがクラリセージ。これまで人気チャートの40位前後だったのが、急に12位に。ブラックレーさん曰く、「もうすぐトップ10入り間違いなし」。

値段ははるものの、ロングランのベストセラーといえばローズ・オイル。混ぜ物なしのピュアーオイルは、ハーフオンスのボトルで軽く200ドルはするとい う。ちなみに、ローズの精油を1滴作るのにローズ60本、1kgならローズ6000ポンド使うというから、高いのもうなずける。そこで、乾燥したダメージ 肌向けにラベンダーなどほかの肌にいい精油と混ぜ50ドルぐらいの手ごろな値段にして販売するのが最近のトレンドだという。

売れ筋精油とその作用についてまとめてみた。

精油の種類 主な作用
ラベンダー 抗うつ・鎮静作用で神経の興奮や不安定な精神を鎮める、炎症を抑える、痛みを和らげる、ストレス解消、抗菌作用、不眠症改善など
ティーツリー 抗菌・抗真菌・抗ウイルス、免疫力高め花粉症の予防など
ペパーミント 抗菌作用、乗り物酔いなどの吐き気を抑える、頭痛の改善、殺菌作用、血行改善、かぜやインフルエンザの症状改善、心身を爽快にする働きなど
ユーカリ 呼吸器系の炎症を抑える、筋肉痛の緩和、筋肉の痙攣止め、殺菌、解熱など
ローズマリー (精油の中でもナンバーワンの)抗酸化作用、肩こりや筋肉痛の緩和、集中力を高めるなど
クラリセージ 更年期障害によるいらいらを改善、月経痛の緩和、抗うつ作用、ストレス解消など
レモン 抗菌・抗真菌作用、血行改善、殺菌作用、かぜの予防など
ジャスミン 抗うつ・ストレス解消、怒りや恐怖心を抑えるなど
ローズ ストレスや不安の解消、抗うつ作用、乾燥肌の改善、高血圧の改善など
ローズウッド 肌のトラブルを抑える
サンダルウッズ 抗真菌作用、抗うつ作用、むくみの除去、咳止め、ストレス解消、性欲促進など
イランイラン 抗うつ作用、怒りを抑える、血圧を下げる、ストレス解消、性欲促進など
ローマンカモミール 筋肉の痙攣止め、肌荒れの改善、更年期障害の症状緩和など
サイプレス 筋肉の痙攣止め、咳を止める、リラックス効果など
マンダリンオレンジ 筋肉の痙攣止め、抗うつ作用、肌の炎症を和らげるなど

アロマセラピーめぐるアメリカの今後の課題

さまざまな精油が出回る中、精油をめぐる規制だが、アメリカでは今のところ、精油に関してはオーガニック規制が適用されていないことから、オーガニック表示はできないという。しかし、品質の高い精油を選ぶには、オーガニック栽培が望ましいことから、業界では精油にもオーガニック表示ができるよう規制改正に向け働きかけているそうだ。

また、医療効果が注目されているにもかかわらず、連邦食品医薬品局(FDA)の扱いはあくまでボディーケア商品。ニュートラスーティカルとして認められていないことから、現時点では商品への医療効果の表示は許可されていない。

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