およそ60年前、アメリカの一医師が提唱したポラリティセラピーが、代替医療ブームの中で広がりをみせている。ストレッチに指圧に呼吸法、さらにポジティブ思考や栄養摂取まで取り入れトータルな観点から健康作りを目指す。ポラリティセラピーとは。
生体エネルギー、気血のバランスを整える
ポラリティ セラピーとはホリスティック医学の一つで、人体に流れるエネルギー、気血のバランスを調整する療法である。ポラリティとは、プラス(陽)とマイナス(陰)の「極性」を意味する。
人の健康は、体の中でエネルギーがスムーズに流れることによって保たれる。この流れが滞り、生体や気血バランスが崩れると、ストレスやこり、痛み、疾患となって現れる。
この滞りを取り除き、本来の気血の流れに戻すことで、人が元々持つ自然治癒力が高まり、健康が促進される。これがポラリティ セラピーの理論である。
1984年、全米ポラリティ セラピー協会設立
ポラリティ セラピーは、シカゴで開業するアメリカ人医師、ランドルフ・ストーン(1890-1981)が創始したもの。同医師は、東洋の古代医学(特にインドのアー ユルベーダ)に感銘を受け、西洋のオステオパシー医学、自然療法を統合・体系化し、集大成を1947年に出版する。
その後、さらに手を加えセラピーを進化、1954年に7冊目の関連書籍を出版する。ストーン医師は、1960年代になってセラピストの指導を始め、1974年、84歳でリタイアするまで続けた。
彼のリタイア後、教えを受けた者たちが各地で実践・研究を進め、1984年には「American Polarity Therapy Association(全米ポラリティ セラピー協会=APTA)が設立する。
APTAは1989年、ポラリティ セラピーの全容をまとめた「Polarity Therapy Standards for Practice」を上梓、セラピストの開業やトレーニングに関する規準を設定する。
2003年には、第4版となる「Standards for Practice and Education」を発表し、アメリカから発信したポラリティ セラピーの波は徐々にではあるが、世界へと広がりを見せている。
「ボディワーク」「カウンセリング」「エクササイズ」「栄養」が4つの柱
ポラリティ セラピーを支える柱は、ボディワーク(エネルギーの流れをスムーズにするマッサージ、ストレッチ、指圧など)、カウンセリング(意識を高め、前向きな考え 方を促す)、エクササイズ(呼吸法など)、栄養(食べ物をエネルギーととらえ、食生活を指導など)の4つ。1セッションは60~90分で、とくに激しい マッサージや指圧は行なわないため、高齢者や子どもも気軽に参加できる。
ポラリティ セラピーに関する大規模研究はこれまであまり行われていないが、「Integrative Cancer Therapies」(2005年Vol.4, No.1)に掲載されたパイロット研究報告では、がんの放射線治療の副作用である過労に対するポラリティ セラピーの有効性を調べている。
University Rochester研究者グループが、乳がん放射線治療を受けている女性患者で副作用の過労を発症している15人をポラリティ セラピー治療1回、2回、無しの3グループに分け、被験者の健康関連クォリティオブライフ(HRQL)を計測したところ、ポラリティ セラピーを受けている患者群では、受けなかった対照グループに比べ、過労の改善が著しく見られたという。
また、National Center for Complementary and Alternative Medicine(NCCAM)がスポンサーとなり、アメリカ先住民のアルツハイマー病患者介護者のストレスおよび精神性疾患に対するポラリティ セラピー治療の有効性を調べる研究が、2007年春の終了をめどに進行している。