栄養成分を静脈内に注入、IVMT

栄養成分を静脈内に注入、IVMT

栄養成分を静脈内に注入、IVMT

kaigai33 栄養素を多量に投与して治癒力を高める治療法に関心が集まっている。その一つ、静脈内へ直接栄養素を注入するIntravenous Micronutrient Therapy(IVMT)も、現在、米国内で1,000人以上の医師が利用しているという。IVMTの効用とは。

米国代替医療研究機関(NCCAM)でも研究対象に

Intravenous Micronutrient Therapy(IVMT)は、通常経口で摂取する栄養素を直接静脈内に注入するというもの。
栄養成分が消化器官で酵素変換などの影響を受けないため、吸収効率が良いと考えられている。

消化器系や口内に疾患を持つ患者への栄養投与にはうってつけで、現在、米国の代替医療研究機関(NCCAM:National Center for Complementary and Alternative Medicine)でも研究対象となっている。

IVMTは1960年代、ボルティモアの医師、ジョン・マイヤーが始めた。調合剤の処方は「マイヤーズ・カクテル」と呼ばれ、患者から支持を得ていた。

1984年、マイヤー医師が死去した後、彼の患者を引き継いだアラン・ゲイビー医師が「マイヤーズ・カクテル」を求める患者の要望に応えようとした。
しかし、マイヤー医師が詳細な処方を残していなかったため、ゲイビー医師は患者から聞いては研究資料をまとめるといった試行錯誤を余儀なくされた。

研究の結果、「マイヤーズ・カクテル」は、塩化マグネシウム、グルコン酸カルシウム、チアミン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸カルシウ ム、ビタミンB複合、ビタミンC、希釈塩酸を10-mLシリンジで注入することが考察。そのレシピを基に、心疾患治療に有効とされるマグネシウムを増量 し、塩酸を除去、ビタミンCを増やすなどしてゲイビー版「マイヤーズ・カクテル」を創り上げた。

その後、ゲイビー医師は11年以上、約1,000人の患者に15,000回以上、「マイヤーズ・カクテル」を処方。対象となった症状、疾患は喘息、偏頭 痛、慢性過労症候群、急性筋肉痙攣、線維筋痛症、上気道感染、季節性アレルギー、心臓疾患、うつ病など多岐にわたる。また、約16年間、臨床状況を20以 上の学会で報告した。そうした実績から、現在、米国内では1,000人以上の医師が、患者に応じてアレンジした「マイヤーズ・カクテル」を使用するに至っている。

急性喘息患者を対象にした研究で効果が報告

IVMTと経口による栄養素摂取ではどの程度の違いがあるのだろうか。例えば、ビタミンCの場合、1日の摂取量を200mgから2,500mgへと12 倍増量しても、血漿中の濃度は25%ほどしか上がらない。経口の場合(pharmacological dose)の血清中の濃度は最高で9.3mg/dLだが、IV投与(50g)では最高で80mg/dLになるという。

これまで、IVMTを対象にした大規模研究は明らかにされていないが、パキスタンで行われた口腔粘膜下線維症患者169人を対象にした研究では (1997年Nutrition & Cancer掲載)、被験者に栄養素ミックス(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB複合から8種、カルシウム、マグネシウム、 鉄、リン、銅、マンガン、亜鉛、モリブデン)を1~3年与えた。

結果、口の開きが困難だった患者117人で症状の改善、特に刺激的な食べ物に対する焼けた感覚が緩和したと報告された。口の開き具合を測定したところ、41%が改善、悪化は10%だった。

また、中度から重度の急性喘息患者38人を対象にした研究では(1989年JAMA掲載)、被験者に硫酸マグネシウムをIV注入(1.2gを20分で) したところ、最大呼吸量がマグネシウムグループで225~297L/分へ改善したことが分かった。プラセボグループでは208~216L/分だった。

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