膵臓がん治療でNIH(米国立衛生研)も期待、ゴンザレス療法

膵臓がん治療でNIH(米国立衛生研)も期待、ゴンザレス療法

膵臓がん治療でNIH(米国立衛生研)も期待、ゴンザレス療法

kaigai38 がんのなかでも、とりわけ治癒率が低いとされる膵臓がん。これに食事療法で挑むという試みが注目されている。「膵酵素はがんを殺す」という研究理論に基づいた食事療法、ニューヨークの医師ニコラス・ゴンザレス博士が開発したゴンザレス療法だ。米国立衛生研究所(NIH)の代替医療部門(NCCAM)も研究資金を提供し、有効性の科学的立証に期待をかけている。

NIH、研究資金140万ドルを提供

膵臓がんは、米国におけるがん死亡原因の第5位。他の器官へ転移のない初期段階で発見されるケースは20%とごくまれである。

初期段階で腫瘍を完全に切除しても5年生存率は約20%と低い。末期の5年生存率は1%を切り、1年以内に死亡する患者がほとんどという。

極めて治癒率の低い膵臓がんだが、進行膵臓がん患者11人を対象に、膵酵素と食事療法を併用するというゴンザレス療法を試みたところ、平均生存率は17ヵ月半で、なかには5年近く生存した患者もいたという。治験規模は小さいが無視できないデータである。

1999年にこの研究報告がNutrition and cancer誌に掲載されると、ゴンザレス博士はNIHの代替医療部門から140万ドルの研究資金援助を得て、同年、ニューヨークのコロンビア大学医学部で臨床実験の準備をする。

当初、膵臓がん患者90人を、外科手術で摘出できない進行膵臓がんの標準的な治療とゴンザレス療法の2グループに無作為に分け調査する予定だったが、研究に必要な患者が集まらなかった。そのため、2005年10月に、ようやく臨床実験を開始。現在、結果報告が待たれている。

ゴンザレス療法とは

ゴンザレス療法では、豚の膵臓から抽出した膵酵素をカプセル剤で4時間おきに、また食事の際にも服用する。加えて、毎日クエン酸マグネシウム、パパイヤ、ビタミン、ミネラルなど150種類といわれるサプリメントを患者により使い分ける。さらに、1日2回コーヒー浣腸を行ない、有機食材のみという厳しい 食事療法を行う。

治療の鍵となる膵酵素は、体内に溜まった毒素を排泄する作用があるといわれる。また、コーヒー浣腸で大腸内の神経を刺激し肝機能を活発にし、解毒パワーをアップ。患者の病態に合せたサプリメントや食事療法で体のバランスを整え、免疫力を高めてがんを撃退する。

食品・医薬品局(FDA)はがんの治療法として認めず

膵酵素にがん細胞を殺す働きがあることに注目したのは、スコットランドの医師、ジェームス・ビアード博士。1902年のことだ。その後、歯科医のウィリ アム・ケリー博士が、ビアード博士の理論に基づき療法を開発。1980年代に、ゴンザレス博士がケリー博士の研究データを収集・分析、ゴンザレス療法を確立する。

現在、NIHによる研究資金のバックアップで、有効性の科学的検証が行われているが、食品・医薬品局(FDA)では今のところ、がんの治療法としては認めていない。

膵臓がんで10年生存のデータも

ゴンザレス療法を試みた患者の中には、膵臓がんの診断から10年経っても元気な患者がいる。この患者は1985年に大腸がんで手術を受けたが、ほかの器官への転移がなかったことから化学療法や放射線療法は行わなかった。

その後、しばらく健康な状態が続くものの、1996年10月、クビにできたゴルフボール大のシコリに気付く。同年12月、腺がんと診断され、97年1 月、膵臓にできたがんからの転移であると判明。ゴンザレス療法をすぐに実行する。同年7月と10月、病院で腹部と骨盤のMRIを行ったところ、がんが消滅 していることが判明。患者はその後もゴンザレス療法に基づいた食事療法を継続。膵臓がんの診断から10年たった今も健康を維持している。

また、64歳の乳がん患者の場合、1989年、右乳房に腫瘍が見つかり、切除手術を受ける。手術後、超音波診断で肝臓への転移が見つかり、化学療法を開始。90年4月より、ゴンザレス療法を行う。91年5月、腹部の痛みがなくなり体調が良くなる。患者は病気が治ったものと判断し、ゴンザレス療法を中止す る。

同年7月、痙攣を起こすなど体調が悪化したことから検査したところ、脳への転移が判明。医者から頭部の放射線療法を勧められたが拒否し、ゴンザレス療法を再開した。92年4月のCTスキャンで、脳および肝臓の腫瘍が消滅していることが判明。2005年10月現在、患者は元気に暮らしているという。

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