「ツボ刺激」+「意識」で気の流れを調整  鍼を使わない(感情の)鍼灸、EFT療法

「ツボ刺激」+「意識」で気の流れを調整  鍼を使わない(感情の)鍼灸、EFT療法

「ツボ刺激」+「意識」で気の流れを調整  鍼を使わない(感情の)鍼灸、EFT療法

kaigai46 体の気の流れを調整する健康法では太極拳、代替医療では指圧や鍼灸がよく知られる。ともに経絡や経穴を刺激し、気の流れをスムーズにする。さらにこれに「意識」をかけることで、気を高め、身体に活力をもたらすというのがEFT(Emotional Freedom Techniques)療法。「針を使わない(感情の)鍼灸」として、今注目されている。

ツボをタッピングしながら心身のトラブルに意識を集中

EFTは、Emotional Freedom Techniques(感情解放テクニック)の略で、アメリカでスタンフォード大卒のエンジニア、ゲアリー・クレイグ氏が開発した。
EFTでは、心身の不調はエネルギー(気)の乱れから生じると考える。そこで、主に顔や胸周辺のツボを指で軽く叩き気の流れを整えることで、体や心の不調を解消する。

ツボを刺激する点では指圧と同じだが、EFTでは、患者は解消したいネガティブな感情や症状を言葉に出し、心身のトラブルに意識を集中させる。創設者のクレイグ氏はEFTを「針を使わない(感情の)鍼灸」と呼ぶ。

具体的な施術はこのようなものだ。まず、解消したい感情や身体的痛みをできるだけ詳細なフレーズで表現する。その際、自身を全面的に受け入れるフレーズも組み合わせる。
例えば、「仕事場で正当な評価が得られずイライラする、そんな自分でも心から受け入れます」といったふうに。フレーズは具体的であれば、あるほどいいといわれる。

その後、圧痛点(鎖骨上部分の外側、軽く押して痛みを感じる部分)をさすりながら、先ほどのフレーズを3回繰り返す。次に、気の流れを整えるため、顔や 胸周辺の約8ヶ所のツボをそれぞれ5回ほど指で軽く叩いて刺激する。その間も、フレーズを繰り返し、解消したい問題点に意識を集中する。

こうしたEFT療法で、不安や罪悪感、強迫観念、喪失感、恐怖症、ストレスなどの心的障害ばかりか、アレルギーや体の痛み、不眠、慢性疲労といった体の 不調和まで正す幅広い効能が報告されている。さらに、免疫力や集中力を高める効果もあるという。EFTでゴルフのスコアが上がる――そんな内容の本も出版 されている。

EFTは、従来の心理療法と比べると即効性があるといわれる。副作用もないため、テクニックさえ学べば、いつでもどこでも手軽にできる。

トラウマ(精神的な傷)を開放し、疾患を克服

過去に受けた強い心的障害、トラウマが原因で、さまざまな精神疾患が引き起こされる場合がある。ナチュラルヘルス・アンド・ベジタリアンライフ誌2007年秋季号にはこんなケーススタディーが紹介されている。

患者は拒食症に悩む女性。心理療法の一つである認知行動療法(CBT)でなんとか症状を抑えていたものの改善には程遠く、自然療法士を訪れEFTを試みた。

療法士との共同作業で、過去にさかのぼり過食症の引き金となったネガティブな感情のルーツを探ったところ、子供の頃に母親から体重のことをうるさく言われた記憶にたどりつく。成長し、本人はそのことを忘れていたが、実はそれが、潜在的なトラウマになっていた。EFTでそうした精神的な傷を解放し、拒食症を克服したという。

他にも、EFTで「風邪が治った」「慢性的な腰痛が消えた」「仕事へのやる気が回復した」などが報告されている。

学術報告は少なく、エビデンスも賛否両論

EFTに関するケーススタディーは多くあり、「ツボ刺激」に「意識」を加えた副作用のない療法として注目されているが、学術的な研究報告はまだ少ない。 その点が、医療界から正式に受け入れられていない理由の一つといえるが、加えて、研究報告の中味についても賛否両論が飛び交っている。

一つ目は、Journal of Clinical Psychology誌に2003年掲載された恐怖症への治療効果を調べたもの。小動物・虫恐怖症の患者を、EFTと深呼吸療法の2グループに無作為に分け、いずれも30分間施術した。結果、自覚度調査で、深呼吸グループよりも、EFTグループのほうが恐怖心が和らいだと報告する人が多かった。さらに、治 療から6ヶ月から9ヶ月後に追跡調査をしたところ、EFTグループのほうが効果が継続している人が目立った。

もう一つの研究は、Journal of Subtle Energies & Energy Medicine誌に2005年に掲載された心的傷害後ストレス障害(PTSD)への効果を調べた研究報告。自動車事故で心的傷害後ストレス障害を発症した患者らを対象に、3ヶ月の間にEFTを2回行ったところ、劇的な症状緩和が見られ、脳波にもポジティブな変化が現われた。

EFTに疑問を投げかける研究報告もある。Scientific Review of Mental Health Practice誌に2003年掲載された不安障害および恐怖症への効果を調べたものだ。不安障害や恐怖症に悩んでいる大学生119人を、1)通常の EFT、2)EFTだがツボ以外を刺激、3)EFTだが指の代わりに人形でツボを叩く、4)おもちゃを作ってもらう、の4グループに分けた。

結果、4)を除き、症状の改善が報告されたが、1)2)3)の差はなかった。そのため、研究報告は、ツボを指で軽く叩いて気の流れを整え心身の不調を改善するというEFT理論は誤りであると結論づけている。

一方、ハーバード大学医学部がツボを刺激することで、痛み、不安、恐怖といったネガティブな感情をつかさどる脳の働きを非活性化することができると報告 している。アレルギーで生じるネガティブな感情をEFTで取り除くことで、アレルギー体質を改善する効果があるとし、現在、PTSDへの治療効果を積極的に研究している。

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