米国で空前の和食ブーム、「大豆」食品に熱い視線

米国で空前の和食ブーム、「大豆」食品に熱い視線

米国で空前の和食ブーム、「大豆」食品に熱い視線

kaigai47 今、アメリカでは空前の「和食」ブームが起きている。中でも、健康効果で注目されているのが「大豆」や「緑茶」。心臓病大国のアメリカで、対応素材として消費者の関心も高く、大手スーパーもこぞって品揃えしている。今や、「スシ」をはじめ、「トウフ」、「ゲンマイチャ」など、日本食の呼称がそのままアメリカで通じるほどだ。

この2、3年で30%近い売り上げの伸び

マーケティング会社パッケージドファクトが今年4月に発表した調査報告によると、2007年度のアメリカでの大豆食品(豆乳など飲料も含む)の売り上げは、前年比7%アップの約20億ドル。2003年–2005年では29%の伸びで、今後も順調な推移が見込まれ、2012年には30億ドル市場に膨れ上がると予想されている。

売れ筋は豆乳とスナックバー。また、日本でお馴染みの枝豆もブームだ。手軽に食べられるヘルシーフードとして、ビールのつまみやサラダにと人気が高い。バーのカウンターでは、ピーナツと同様、つまみの定番となっている。

「アメリカ人の一番苦手な食べ物」といわれていた豆腐も、もはや「トウフ」で通じるほど親しまれ、ここ数年売れ行きが急上昇している。食品企業はアメリカの消費者の嗜好に合わせ、サンドイッチやサラダ、パスタなどにそのまま使える豆腐を開発。ほ うれん草味、カレー味、イタリアン風味といった味付け豆腐が市場を賑わしている。
さらに、大豆人気は食の枠をも飛び越え、オーガニックの大豆オイルを使ったキャンドルまでも登場。体に害のある煙が出ないといった謳い文句で人気を呼んでいる。

1999年、「心臓病のリスクを下げる」という健康表示でブームに

大豆は必須アミノ酸やビタミンEをはじめとする栄養素を豊富に含む。日本では、豆腐や納豆、味噌、醤油などに加工され、たんぱく質の貴重な補給源として 利用、和食文化の中で重要な位置を占めてきた。一方、肉食文化のアメリカでは、たんぱく質の補給を肉に依存し、大豆が国民の健康作りに活かされることがな かった。

そうした大豆がアメリカで一躍脚光を浴びるようになったのは1999年のこと。
経緯を遡るとこうだ。1993年、食品・医薬品局(FDA)により「ヘルスクレーム制度」が発足、食材や栄養素の健康効果の商品表示が認められるように なる。肥満・心臓病大国といわれるアメリカで、コレステロール低下などに役立つ食材として大豆の研究も盛んに行われ、次第に、栄養の専門家らの見解や消費者ニーズから、大豆の効用が広く知られるようになる。

1996年以降は、毎年4月は大豆のピーアール月間とされ、各地のスーパーなどで大豆製品のデモ販売やセミナーが盛んに行われるようになる。それまで、 ホールフーズマーケットやトレーダージョーといったヘルシーフードマーケットでしか買えなかった豆腐や豆乳が、ラルフス、ボンズなど一般大手スーパーのデ イリーコーナーにも並ぶようになる。

さらに、ケロッグ、クラフト、ジェネラル・ミルズといった大手企業も大豆製品メーカーと提携し、アメリカ人の嗜好に合わせた商品を開発。ベジタリアン向 けの大豆ハンバーガーや大豆エネルギーバー、大豆シリアルなどが人気を呼ぶ。また、枝豆も、ヘルシーなスナック、料理の素材として広く親しまれていく。

そして、1999年、FDAが「大豆たんぱく質を1日に25g摂取すると、心臓病のリスクを下げる」という健康表示を認める。ヘルスクレームとしては、11番目になる。これにより、大豆ブームに火がついた。
United Soybean Board (USB)の「栄養に関する消費者の態度、全国調査2001-2002」では、大豆製品を毎週食べているアメリカ人は、1999年は全体の24%だった が、2001年は27%に増えたと報告。また、「大豆たんぱく質はコレステロール低下作用があり、心臓病を予防することを知っている」と回答した人は、 1999年は28%だったが、2001年には39%にアップしている。以降、大豆関連製品は、枝豆や豆腐からサプリメントまで売り上げを急速に伸ばしてい く。

糖尿病や子宮がんのリスク低下が報告

大豆には必須アミノ酸やコリンなど、脳機能の活性に有用な栄養素が豊富に含まれる。以前、アメリカのメディアが、マイケル・カーニーという日系三世の天才少年を取り上げたことがある。少年は、知能指数が200を超え、6歳で高卒・アラバマ大入学、10歳で卒業、全て世界最年少というギネス記録をうち立て るが、家での食事は豆腐や海苔といった日本食で、とくに「納豆ごはん」を好んで食べたという。

今年1月、American Journal of Clinical Nutrition誌が、大豆が糖尿病のリスク低下に役立つことを報じている。それによると、Vanderbilt University Medical Center、Shanghai Cancer Institute研究者グループが、糖尿病歴のない中高年の中国人女性64,227人を対象に食生活を食品頻度調査で評価し、その後、4.6年被験者の 追跡調査を行ったところ、全種類の豆類多く摂取したグループは糖尿病のリスクが38%低下したが、特に大豆を多く摂取した場合は、リスク低下が47%だっ たという。

また、British Medical Journal誌2004年6月号に掲載された記事によると、テネシー州と中国の研究者グループが、子宮内膜がん患者832人とがんの兆候の無い846人 の大豆摂取を比較したところ、大豆摂取が1日5.9g以下のグループと比べ、6.0g、10.2、10.3、16.0~のグループはがん罹患の危険性がそれぞれ7%、15%、33%と低いことが分かったという。

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