増える心の病、必須脂肪酸の摂取比率が一因に

増える心の病、必須脂肪酸の摂取比率が一因に

増える心の病、必須脂肪酸の摂取比率が一因に

kaigai48 今、アメリカで心の病を抱える人々が増えている。競争社会、ストレス社会といわれるアメリカでは、“癒し”をもたらすハーブやサプリメントのニーズが高い。うつ人口の現状と心の癒し法についてまとめてみた。

2,100万人以上がうつ病、自殺は年間3万件

メンタルヘルスアメリカ(元全米メンタルヘルス協会)によると、現在、アメリカのうつ病患者は2,100万人を超えるという。また、毎年約3万人が自殺しているが、主にうつ病が原因とみられている。うつ病で会社を休むなどの経済損失は年間約310億ドルにものぼるという。
昨年11月、メンタルヘルスアメリカとトムソンヘルスケアが共同で、全米50州におけるうつ病と自殺件数に関するデータを分析し、報告している。ちなみに、うつ病患者が少ない州のトップ5は、サウスダコタ、ハワイ、ニュージャージー、アイオワ、メリーランド。

自殺の少ない州は、コロンビア特別区、ニューヨーク、マサチューセッツの順となっている。
人口比率に対し精神科医やソーシャルワーカーの多い州、また健康保険に加入し治療を受けられる人の多い州の方が慢性的なうつ病患者および自殺が少ないことがデータからうかがえる。

必須脂肪酸の摂取比率やアレルギーがうつに関与

America Journal of Psychiatry誌2006年6月号に興味深い研究報告が掲載されている。M.エリザベス・サブレッテ博士らが、自殺とn-3系脂肪酸の関連を調べている。
うつ病の大人33人を2年間にわたり観察、7人が少なくとも1回の自殺を図り、うち2人が死亡した。自殺を図った7人を調べたところ、いずれもn-3系脂肪酸と呼ばれる必須脂肪酸の値が低く、n-6系脂肪酸の値が非常に高いことが分かったという。このことから、博士らは、n-3系とn-6系のアンバラン スな摂取比率が自殺の危険を高めている可能性があると結論づけている。

また、コロンビア大学ヒューマン・ニュートリション研究所が2005年5月に開催したシンポジウムでも、n-3系脂肪酸の摂取不足と自殺との関係を指摘している。
n-3系脂肪酸はサバなど背の青い魚に含まれるEPAやDHA。n-6系脂肪酸は卵、豚肉、コーン油などに含まれるアラキドン酸やリノール酸。昔のアメ リカ人の食生活は、n-3系とn-6系の摂取比率が1:1から1:4の間だったが、現在では1:20と大きく偏り、うつ病など心の病を引き起こす要因に なっているとみられている。

また、今年開かれたAmerican Academy of Allergy, Asthma, and immunology学会では、花粉症ピーク時の春に自殺率が高いことから、季節性アレルギーがうつ病の引き金になっている可能性があると報告されている。
テドール・T・ポストラッチ医師らが、過去に発表された幾つかの研究報告を検証したもので、1999年に大人6,800人を対象にした調査では、花粉症患者はそうでない人に比べ、うつ病と診断される率が2倍高かったという。

また、デンマークで大人約2万1000人を対象にした調査でも、アレルギー患者の自殺件数がそうでない人の2倍だったことが報告されている。

入浴や運動、心の癒しに役立つ

現代人は常にストレスにさらされ、何かと気分が落ち込みがちだ。抗うつ剤に頼らず、日常生活で何か手軽に“心を癒す”方法はないものだろうか。
American Psychiatric Association1996年度学会では、入浴や運動がリラックスをもたらし、心の癒しに役立つと報告している。

ミシガン州中部にある病院で、94年10月から96年3月にかけ病院の精神科に入院した18歳から62歳のうつ病患者45人(男性16人、女性29人) に、39℃から41℃の湯船に30分つかってもらった。入浴の前後にPOMSという気分を測定するテストを受けさせたところ、いずれの患者も入浴後に、 「緊張・不安」「うつ」「怒り・イライラ」「混乱」といった全ての項目で改善が見られたという。

また、Journal Psychosomatic Medicine誌2007年9月号に掲載された研究報告では、運動の効果が立証されている。
研究では、40歳以上のうつ病患者男女合わせて202人を、1)トレーナーについてグループで週に3回運動する、2)自宅で運動する、3)運動をせず抗 うつ剤を服用する、4)偽薬を服用する、の4群に分けて16週間観察した。運動するグループはいずれも、ウォーミングアップで10分ゆっくり歩いた後、 30分競歩かジョギング、クールダウンで5分ゆっくり歩いた。

結果、1)45%でうつ症状が解消、2)40%が解消、3)47%が解消、4)31%が解消となった。報告では、運動には抗うつ剤に匹敵するうつ解消効果があると結論づけている。

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