NCCAM(米代替医療調査センター)、 患者と医師との情報交流を促進

NCCAM(米代替医療調査センター)、 患者と医師との情報交流を促進

NCCAM(米代替医療調査センター)、 患者と医師との情報交流を促進

kaigai49 多くの無保険者、高額な医療費などの問題を抱える米国では、90年代に入り、国民の間で代替医療(非西洋医療)への関心が高まる。ネットでの情報も代替医療普及に一役買った。90年代後半には国立衛生研究所(NIH)内に代替医療の調査センター(NCCAM)が設立、代替医療の有効性が本格的に検証される。NCCAMの近況を報告する。

代替医療の利用を医師に告げる患者はまだ少ない

米国では1998年、代替医療の有効性と安全性を明らかにするため、国立衛生研究所(NIH)内にNCCAMを設立、代替医療の臨床研究を精力的に行う。
これにより、代替医療の有効性が科学的に裏付けられるとともに、近代医療との統合という新たな道も開ける。

現在、メイヨー・クリニックをはじめ、デューク大学医療センター、カリフォルニア大学医療センターといった名門病院で、鍼療法、マッサージなどの代替医療が近代医療と併用されている。

年々、国民の間に代替医療が普及しているとはいえ、医師に代替医療の利用を告げる患者はまだ少ない。問題として挙がっているのが、ハーブなどのサプリメ ントと医薬品との相互作用。セント・ジョンズワートなどある種のハーブは医薬品の効果を半減させることが報告されている。治療効果を最大限に発揮するためには、患者と医師との情報交流が欠かせない。

NCCAMと米国引退者協会が共同で、50歳以上の男女1559人を対象に調査を実施したところ、対象の3分の2近くが代替医療を利用しているものの、利用を医師に告げている人は3分の1にも満たないことが分かった。

医師に告げていない主な理由としては、1)医師から聞かれなかった、2)利用を告げることが重要だと思わなかった、3)診療中に医師と話をする時間がなった—、など。また、医師に告げた人のうち半数以上は、医師から聞かれなかったが自分から告げたと答えている。

今年6月、NCCAMで「Time to Talk」キャンペーン

こうした中、今年6月、NCCAMで「Time to Talk」キャンペーンをスタートした。代替療法の利用者と医者との情報のやり取りを活発にするのが狙いだ。「安全でより良い治療を受けるには、患者が医 師に代替療法の利用をきちんと告げる必要がある」と、NCCAMのディレクター、ジョセフィーヌ・P・ブリッグス博士は強調する。

患者と医師が代替療法に関する情報のやり取りをすることで、統合的な医療を受けられるだけでなく、医薬品との相互作用による弊害を防止できる。キャンペーンでは、ポスターやパンフレットなどを使い、患者と医師との情報交流がいかに大切であるかを訴えかけるという。

NCCAM、統合医療コンサルティングサービスを開始

NCCAMは昨年、メリーランド州ベセズダにあるNIH臨床センターで統合医療コンサル ティングサービスを開始した。同センターは、全米でも最大規模を誇る研究病院として知られる。ここで研究に携わる臨床医や看護師は、NCCAMの統合医療 コンサルティングサービスが選んだ代替医療のエキスパートから、臨床試験における代替医療との併用の利点や弊害についてさまざまな情報やアドバイスを受けられる。
NCCAMでは、統合医療的アプローチに関心のある臨床医らに統合医療コンサルティングサービスの利用を広く呼びかけている。

米国の成人人口の36%が代替療法を利用

実際に米国民は代替療法をどのように利用しているのか—。
2004年、全米で18歳以上の約3万1000人を対象に、代替療法の利用状況を調べた大規模な調査結果が発表され大きな話題を呼んだ。
NCCAMと米国疾病管理予防センター(CDC)が共同で行った電話でのアンケート調査によると、成人人口の36%が代替療法を利用したことがあり、病気の回復を願う「祈りの療法」を含めると62%にまでになることが分かった。

同調査で、利用度の高いとされる27種類の代替療法について尋ねたところ、次のような状況が明らかになった。
代替療法の利用者は、「男性より女性の利用者が多い」、「高学歴」、「過去に入院の経験がある」、「喫煙者とこれまでタバコを吸ったことのない人に比べ、禁煙している人に利用者が多い」など。

また、利用度の高い代替療法では、「祈りの療法」が最も多く、「自分の健康のために祈る」(43%)、「ほかの人の健康のために祈る」(24%)となっ た。以下、「ハーブやサプリメントを摂取する」(19%)、「深呼吸エクササイズ」(12%)、「自分の健康を願い祈りのグループに参加する」 (10%)、「瞑想」(8%)、「カイロプラクティス」(8%)、「ヨガ」(5%)、「マッサージ」(5%)、「アトキンスやゾーンといった食餌療法」 (4%)、と続いた。

代替療法を利用する理由としては、「近代医療との併用で治療の効き目が上がる」(55%)、「興味があり試してみたかった」(50%)、「近代医療では 症状が改善されなかったから」(28%)、「医師から勧められて」(26%)、「医師に見てもらうのは治療費が高すぎるから」(13%)などが挙がってい る。

また、症状別では、腰痛をトップに、かぜ、肩の痛み、関節痛や関節炎、うつや不安、腹痛、頭痛、不眠といった心身の不調に悩む患者の利用者が多かった。

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