全粒穀物、アメリカ人の理想とする健康食のトップに

全粒穀物、アメリカ人の理想とする健康食のトップに

全粒穀物、アメリカ人の理想とする健康食のトップに

kaigai55 アメリカで今や健康食の代名詞となった全粒穀物(whole grains)。がんや心臓病の予防効果の表示を米連邦食品医薬品局(FDA)が認めたこともあって、「Whole Grains」と書かれた商品が飛ぶように売れている。アメリカの全粒穀物ブームを報告する。

70種類の食品・飲料水の中で、最も健康効果が高いと評価

大手マーケティングリサーチ・コンサルティング会社「ディシジョン・アナリスト」が全米の大人約4,000人を対象に行った調査で、全粒穀物がアメリカ人の理想とする健康食リストの第1位に躍り出た。

調査では、健康に良いとされる70種類の食品・飲料水リストの中から、最も健康効果が高いと思われるものを選ばせた。

結果、トップが全粒穀物で59.5%、次いでブロッコリー57.6%、バナナ56.9%、オートミール56.1%、緑茶55.1%となった。

全粒穀物の人気は他の調査でも明らかになっている。IFIC(International Food Information Council )の2007年健康食世論調査では、アメリカの消費者71%が、全粒穀物を積極的に摂りたい食品として挙げている。

こうした全粒穀物ブームを支えているのが、「栄養ガイドライン」。2005年1月に米国保健社会福祉局より発表された「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」では、初めて全粒穀物の推奨が明示。以降、精製された穀物ではなく、食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含む全粒穀物ががんや心臓病予防に 有用であるとされ、アメリカ人の食生活に浸透していった。

同ガイドラインは、アメリカ国民の肥満や高血圧、動脈硬化といった生活習慣病を防ぎ、より健康でいるための基準を示したもので、5年ごとに新たな研究データを加え改訂される。全粒穀物については、1日当たり3オンス(約85g)以上、穀類の総摂取量のうち、少なくとも半分は全粒で摂るよう推奨している。

ちなみに、全粒穀物の高血圧や心臓病予防への有用性報告が、American Journal of Clinical Nutrition誌07/1月号に掲載されている。University of Maryland研究者グループが、60歳から98歳の被験者535人の食習慣や運動、喫煙・飲酒などのライフスタイルを調査したところ、ぬかや玄米、 オートミールなどの全粒穀物を最も多く摂取したグループ(3杯分/日)は少ないグループ(1杯分未満)と比べ、高血圧や高脂血症、糖尿病といったメタボ リック症候群のリスクが半分未満になっていることが分かった。また、全粒穀物を多く摂った場合、以後12~15年間、心臓病による死亡リスクが半減したことが分かったという。

肥満大国・アメリカで全粒穀物はとくに強い味方となる。American Journal of Clinical Nutrition誌08/1月号に掲載された記事によると、Pennsylvania State University、Pennsylvania State University College of Medicineなどの研究者グループが、女性25人、男性25人(平均年齢46歳、平均BMI35.8)の被験者に、カロリーを500Kcal削減した 食事を与え、その後、半数には穀粒を全粒に、残りには全粒でない穀粒を12週間与えたところ、両グループともカロリー削減で、体重、ウエスト周囲、体脂肪 率が減少したが、特に、全粒グループは精製グループに比べ、腹部の体脂肪率の低下が著しかったという。

80年代後半より、若年層の健康作りで全粒穀物が見直される

実はアメリカ人の間で、全粒穀物を積極的に摂ろうという意識は、80年代後半頃より芽生えていた。脂肪を過剰に摂りがちなアメリカ人のために、スーパー には低脂肪牛乳が並び、炭水化物食品の重要性がアピールされた。特に若年層においては、ジャンクフードによるコレステロール対策から食物繊維を多く含む全粒のシリアル食品が小中学生の朝食として薦められた。

米国がん協会は、米国の児童(2歳-18歳)4,008人を対象に、1989年から91年までの間に食べた食品20品目について調べているが、ビタミンA、鉄分、葉酸などの栄養素をシリアルから最も多く摂っていたことが分かったと報告している。

こうした全粒穀物ブームの中、イネ科穀物の大麦にも注目が集まっている。大麦にはグルテンがほとんど含まれていないため、フードアレルギーに悩む人々に健康食として重宝されている。

また、2006年にはFDAが、大麦および大麦を含む食品に冠状心疾患(CHD)の予防効果の表示を認めており、1回あたりの食品の標準摂取量(per serving)に、大麦の可溶性繊維が少なくとも0.75グラム含まれていれば、CHDの予防効果を表示できるとしている。

CHDはここ50年以上にわたりアメリカ人の死因上位に付いている。5人に1人がCHDで死亡しているという統計もある。米国農務省(USDA)などの 臨床実験で、大麦に総体的なコレステロールおよび悪玉コレステロールの値を下げる効果が立証されており、USDAは1日に少なくとも3グラムのβグルテン 可溶性繊維を含んだ大麦食品を摂取すると、CHDの予防効果があるとしている。

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