オバマ政権、「食の安全確保」への取り組みを強化

オバマ政権、「食の安全確保」への取り組みを強化

オバマ政権、「食の安全確保」への取り組みを強化

kaigai58 豚インフルエンザ勃発で食への不安が世界中を駆け巡っている。食品汚染の報道が頻発する米国では、この3月にも、オバマ大統領が「食の安全確保」に向けた取り組みの強化に乗り出したばかり。米国における食品汚染の現状、食の安全に関する最新世論調査の結果を報告する。

サルモネラ菌汚染で食品を回収

今年1月、クッキー、クラッカー、アイスクリームなど菓子原料用のピーナッツバターを製造するピーナッツ コーポレーション オブ アメリカが自社商品の回収に踏み切った。同社のピーナッツバター使用の食品がサルモネラ菌汚染の恐れがあると指摘された。

米疾病予防管理センター(CDC)によると、前年9月から今年1月までに、全米46州で683人がサルモネラ菌に感染、9人が死亡したという。

「サルモネラ菌汚染でピーナッツ回収」「大腸菌汚染でホウレンソウ回収」―-。

米国ではここ数年、こうした食品汚染の報道が頻発している。
そうした中、オバマ大統領は3月、週末の国民向け演説で、食品汚染への不安を払しょくするため、大幅な予算の計上や「食品安全作業部会」の新設など、食品の安全対策に本腰を入れることを明らかにした。

演説では、「食の安全確保」に関わる既存のシステムの問題点を次のように指摘した。「米国の食品安全管理システムは効率的に機能していない。食の安全に関わる連邦と州ごとの関係官庁があまりに多すぎて、相互の情報交換が難しくなっている」

食品医薬品局(FDA)の食品検査官の増員などに10億ドル

そこで、厚生長官と農務長官をトップに、関係官庁の幹部で構成する食品の安全強化に向けた作業部会を新設。これにより、省庁間の連携強化を図り情報交換をスムーズにし、法の見直しなど行う。

また、農務省は病気の牛が食品として市場に出回らないよう、流通の「抜け穴」を防ぐ対策をとる。さらに、10億ドルを投じて食品医薬品局(FDA)の食品検査官の大幅な増員など行う。

大統領によると、米国で食の安全に関する法律はルーズベルト大統領時代に作成されて以来変わらず、ブッシュ政権下においてはFDAの資金および人員とも 不足していたという。食品汚染による食中毒は1990年代には年間100件ほどだったが、現在では350件にまで急増している。にもかかわらず全米にある 約15万の食品加工工場のうち検査を受けているのは、年間わずか5%という。

大統領は演説で、「こうしたことは許せない」と強調し、法整備に向け、FDA局長にマーガレット ハンバーグ元厚生次官補(53)を起用する意向を示し た。ハンバーグ氏は、医師および生物テロ対策の専門家で、クリントン政権時代には流感対策などに手腕を発揮した。また、FDA副局長に、小児科医でボルティモア保健局長官ジョシュア シャーフスティン氏(39)を起用した。

毎年、住民の4人に1人が食品汚染の被害に

米国で相次ぐ食品汚染による被害。2006年には病原性大腸菌O157に汚染されたホウレンソウで114人が感染、1人が死亡。08年にはカリフォルニア州にある牛肉処理施設が自力で歩けなくなったへたり牛を処理し、米史上最大規模の回収騒ぎとなる。

前述の1月のサルモネラ汚染に続き、3月にもサルモネラ菌汚染の疑いで大量のピスタチオが回収された。自主回収に踏み切ったのはカリフォルニア州にある 全米第2位のピスタチオ加工業者セットンファームズ。同社からピスタチオを仕入れた大手食品メーカーが定期検査でサルモネラ菌を見つけ、FDAに通報した。

CDCでは、米国では毎年、サルモネラ食中毒で約140万人の患者が出ており、1万5000人が入院、400人が死亡していると推定している。妊婦や子供、高齢者、病気などで免疫力が低下している人々は、感染の危険が高いという。

米国では毎年、約7600万人が食中毒で体調を崩している。つまり、住民の4人に1人が食品汚染の被害を受けていることになる。うち、約32万5000人が入院、約5000人が死亡。食中毒による年間医療費は440億ドルにのぼるといわれている。

83%が食品汚染を懸念

昨年の秋に行なわれた、Consumer Report National Research Centerの調査では、アメリカ人の73%が「米国内で販売されている食品は安全だと思っている」と答えている。その一方で、「信頼感は薄れている」が43%、「食品汚染を懸念」が83%という結果も出ている。

また、政府の取り組みについては、54%が「政府が食の安全確保のため最善を尽くしていると信じている」と答えてはいるが、「輸入食品の安全性を心配している」が81%。

現在、FDAは、国内の食品製造工場については5年から10年に1回、海外についてはそれ以下の頻度で検査を行っている。上記調査の回答者の3分の2 は、「国内外ともに少なくとも月に1度は検査してほしい」と望んでいる。また、FDAに対して食品汚染の情報公開を望む声も高い。

 

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