米国では10人のうち7人が年に少なくとも1回は頭痛に苦しめられているという。ストレス社会・米国で頭痛に悩む人々は増える一方だ。毎年6月には、「頭痛への認識を高める週間」も設けられている。米国での頭痛の罹患率、代替療法による頭痛解消法についてまとめてみた。
4500万人が慢性の頭痛持ち、肥満も一因に
全米頭痛協会によると、慢性的な頭痛に悩むアメリカ人は4500万人。ひとくちに頭痛といっても、二日酔いからくるもの、目の酷使によるもの、生理中におこるものなどいろいろだ。中でも多いのが、ストレスや不安がもたらす頭痛で、片頭痛、群発性頭痛、副鼻腔炎による頭痛。
頭痛の代表格である片頭痛で悩むアメリカ人は全米で4世帯につき1世帯の割合、約2950万人にのぼるといわれる。
片頭痛を訴える人の7割が女性で、男女ともに20歳から45歳あたりに最も発症者が多い。
片頭痛による仕事の欠勤などで、経済に与える損失は年間約310億ドルともいわれる。
片頭痛持ちの24%は、耐えられない痛みで病院の救急治療室(ER)に駆け込んだ経験もあるといわれるが、ストレスや副鼻腔炎からくる頭痛と診断されることが多いという。
片頭痛の原因は今のところはっきりと分かっていない。ネガティブな感情、食生活や生活習慣での不摂生、環境汚染、過度な医薬品の使用、ホルモン異常などさまざまな要因が重なり、痛みを引き起こすのではないかと考えられている。
また、遺伝的な影響も指摘されている。両親が片頭痛持ちの場合、子供の発症リスクは、そうでない子供に比べると75%高いという。さらに遠縁の親戚が片頭痛持ちの場合、子供の発症リスクが20%ほど高いことも報告されている。
他に、肥満が片頭痛の要因になっているという報告もある。Neurology誌2006年号に掲載された報告によると、全米の18歳から89歳の男女を 対象に電話調査を行い、肥満度と頭痛の頻度とを比較したところ、1カ月に10日から15日頭痛があると答えた人は、標準体重では4.4%だったのに対し、 やや肥満では5.8%、肥満では13.6%、超肥満では20.7%だったという。また、肥満度が高いほど、激しい痛みを感じていることもわかったという。
頭痛の解消に鍼やヨガが人気
National Center for Complementary and Alternative Medicine(NCCAM)が2007年に全米の大人2万3393人を対象に代替療法について調査を実施した。その結果、1.6%が頭痛の解消に代替療法を利用していることがわかった。
ちなみに、症状別による代替療法の利用率ではトップが腰痛(17.1%)。次いで、首の痛み(5.9%)、関節痛(5.2%)、関節炎(3.5%)、不 安(2.8%)、コレステロール(2.1%)、かぜ(2.0%)、筋骨格系の痛み(1.8%)、頭痛(1.6%)、不眠(1.4%)となっている。
頭痛解消の代替療法では鍼やヨガが人気だ。コクラン・レビューに掲載された研究報告では、2300人以上を対象とした11の鍼療法の効果を紹介している。
2つの研究では、現代医学の頭痛治療と鍼療法を併用した患者は、そうでない患者に比べ頭痛の頻度が減ったと報告している。また、5つの研究でも、鍼療法グループが擬似鍼療法グループに比べ症状の改善において好結果が出ていると報告している。
他にも、鍼、体操などによる理学療法、マッサージ、リラクゼーションの4グループに分けた4つの研究のうち3つは、厳密な分析はむずかしいものの、鍼療法グループがほかの3グループに比べ、症状の改善でわずかだが好結果が得られたと結論づけている。
Headache: The Journal of Headache and Face Pain誌2007年号では、ヨガによる頭痛緩和効果が報告されている。片頭痛のある72人を対象に、ヨガを行うグループと、そうでないグループに無作為に分けて比較したところ、3カ月にわたってヨガを行ったグループは、そうでないグループに比べ、片頭痛の頻度が劇的に減り、痛みも軽くなったという。