ベビーブーマー世代の高齢化で、 米国アンチエイジング市場が好況

ベビーブーマー世代の高齢化で、 米国アンチエイジング市場が好況

ベビーブーマー世代の高齢化で、 米国アンチエイジング市場が好況

kaigai61 米国でベビーブーマー世代(団塊の世代)の高齢化を背景に、アンチエイジング市場が好調だ。健康への関心が高く消費力のある同世代をターゲットにした健康関連商品の需要は高まるばかり。不況知らずの米国アンチエイジング市況を報告する。

「老い」を前向きにとらえ、健康に投資

米国のどこかで毎日、約8,000人が60歳の誕生日を迎えている。
疾患予防対策センターによると、米国で65歳以上の高齢者は2030年までに7100万人に達するという。2000年の3500万人からわずか30年たらずで2倍に膨れ上がるというわけだ。

国勢調査局も、1946年から1964年までに生まれたベビーブーマー世代の高齢化で、2030年までに高齢者人口は8200万人に達すると推定している。

「高齢化」というと「衰え」というネガティブなイメージがつきものだが、ベビーブーマー世代は避けることのできない「加齢」を前向きにとらえているようだ。

ナチュラル・マーケティング・インスティテュート(NMI)が2008年に発表した調査報告によると、ベビーブーマー世代の75%はこれから先が自分たちの最高の年になると心を躍らせているという。

人生を快適に過ごすための必須条件は言うまでもなく健康である。この世代は、年間2兆ドルの消費パワーを持つ。体力、気力、知力を維持するための投資にはどの世代よりも積極的だ。

NMIの調査によると、年齢を重ねても健康でいるために、ベビーブーマー世代の78%がサプリメントを摂取し、38%が医薬品を服用しているという。

機能性食品やサプリメントで健康的な外見を維持

米国のサプリメント市場の約50%はベビーブーマー世代を狙ったアンチエイジング商品が占めているという調査報告もある。

ミンテルやニュートリション・ビジネスジャーナルといった市場調査会社の報告で、2006年のアンチエイジング商品の売れ筋をみると、骨粗しょう症や関節炎対策でカルシウムやグルコサミンが上位に付いている。

とくにベビーブーマー世代に人気なのが、ビタミン・ミネラル、抗酸化物質、食物繊維などを添加した機能性食品。また、血糖値やコレステロール値を調整する機能性飲料も売れ行きが好調だ。

ちなみに、ベビーブーマー世代の90%が、機能性食品やサプリメントを摂取していれば、健康的な外見を維持できると信じているという(NMI調べ)。

記憶・認知力の低下がベビーブーマー世代の最大の不安

そんなアンチエイジングに熱心なベビーブーマー世代が危惧しているのがアルツハイマー病などによる記憶力や認知力の低下。

NMIが今年6月に発表した調査によると、全米で成人人口の44%、性別でみると、女性の52%、男性の36%が、老化による記憶・認知力の衰退を最も恐れているという。
また、ベビーブーマー世代の62%が、ストレスや不安が記憶・認知力低下の引き金になると考えているという。

アルツハイマー病の発症原因はまだ完全に解明されていないが、脳内に蓄積したβ-アミロイド蛋白で脳機能がダメージを受けるという説が有力視されている。そのため、脳細胞の酸化ストレスを減らすことがアルツハイマー病防止につながるといわれている。

日頃の「食」でのアルツハイマー病対策では、果物・野菜の効用が幾つか報告されている。
Journal of Alzheimer’s Disease誌09/2月号で、リンゴなどポリフェノールを豊富に含む果物が加齢による認知機能低下の予防に役立つと報じている。
University of Massachusetts研究者グループが、マウスに葉酸とビタミンEを配合した食餌か、鉄分のみを配合した食餌のどちらかを与え、さらに、リンゴ ジュースを水で薄めたもの(最終的に0.5%の濃度)を与える群と与えない群に分けたところ、1ヶ月後、リンゴジュースを与えた群では、β-アミロイド蛋白の増大が抑制されたことが分かったという。

また別の研究では、Gyeongsang National University、Korea Universityの研究者グループが、脳細胞の酸化ストレスを計測するため、ニューロン様PC12細胞を用い、酸化ストレスを誘発させた後、100、 300、600、2000マイクログラム/mLの各濃度のフルーツエキス(リンゴ、オレンジ、バナナ)で細胞を培養したところ、細胞の生存率が著しく上昇 し、最も高くなったのはリンゴで2000マイクログラム/mLで83%を示したという。

果物や野菜に多く含まれるカロチノイド色素の有用性も報じられている(Archives of Internal Medicine誌07/11月号)。
1982年より行われた、Physicians Health Study IIでは、4,052人の男性(1998-2001年まで、さらに1,904人が参加)にβ-カロチン50mg(ニンジン約5本分)か、またはプラセボが 1日毎に与えられたが、Harvard Medical School研究者グループが、被験者すべてに健康状態や思考能力に関する質問調査も行ったところ、β-カロチンを摂ったグループの方が認識テストのスコ アが高いことが分ったという。

カロチノイド色素と認知機能の関連については、Journal of Gerontology: Medical Science誌07/8月号でも報じている。
University of Montpellier、University of Paris、CHU Grenoble研究者グループが、健康体の高齢被験者589人(平均年齢73.5歳)を対象に、被験者の血液サンプルからカロチン濃度を測定し、被験者 の認知力を測ったところ、カロチンと認知力との関連性がみられ、中でも血漿中のカロチン(リコペン、ゼアキサンチン)濃度の低さと、被験者の認知機能衰退に関連性が見られたという。

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