景気悪化でストレス解消求める人口が増加

景気悪化でストレス解消求める人口が増加

景気悪化でストレス解消求める人口が増加

kaigai64 失業、住宅差し押さえ―不況によるそんな不安から眠れぬ夜を過ごすアメリカ人は少なくない。今、米国では心と体の癒しを求め、スパやリラックスをもたらす飲料水のニーズが高まっている。さらに、こんなときは昼寝でも、と開き直るわけではないが、そのリフレッシュ効果が改めて見直されている。不況をタフに乗り切る米国の現状を報告する。

アメリカ人の8割、不況でストレスに

経済のニュースを見れば、失業、住宅価格の下落、住宅差し押さえ、消費力後退といった暗いものばかり。

悪化し続ける雇用情勢に、消費者は財布の紐をしめるだけでなく、強いストレスを感じている。

米国心理学協会の2008年調査によると、「経済がストレスの大きな原因になっている」と答えたアメリカ人は、同年4月は66%だったが、9月には80%にアップ。うち、49%が景気悪化で神経過敏になり、49%がうつ状態という。

また、ローンを払えずに住宅差し押さえになった人の3人に1人がうつ病になっているという報告もある。

全米自殺予防ライフラインに寄せられる相談件数も、08年1月から09年1月の1年間に20%増加。相談件数が増えた理由として、やはり深刻化する不況が挙げられている。

アメリカ人の3分の1が経済不安で不眠に

不況による不安やストレスから、不眠を訴える人も増えている。全米睡眠協会によると、アメリカ人の3分の1が経済不安による不眠に悩んでいるという。
睡眠時間は7-8時間が一般的とされるが、アメリカ人の20%は6時間以下しかとっていない。うち90%は不眠で体調をくずし、40%近くが運転中に睡魔を訴えている。

全米ハイウェイ交通安全局によると、全米で居眠り運転による事故は年間、推定10万件で、死亡事故は推定1500件。運転中の携帯電話使用による事故件数を大幅に上回っているという。

不眠で危険が増すのは交通事故ばかりでない。2006年8月号The journal Sleepに掲載されたボストン大学医学部の研究報告によると、睡眠時間が6時間以下の人は、十分に睡眠をとっている人に比べ、高血圧症を発症するリスクが66%高いという。

リラックス系飲料、緑茶やGABAが注目

そこで、経済不安によるストレス解消法として注目されているのがスパやリラクゼーション飲料水。スパに行ってマッサージやジャクジーでリフレッシュ、リラックス効果のある飲料水で高ぶった神経を落ち着かせるなど、リラックス系商品の需要は高まるばかりだ。

国際スパ協会によると、2007年7月現在、全米のスパ件数は1万4615件で、06年8月から6%増加。米国のスパ産業は年間94億ドルといわれてい る。最近では、大人ばかりでなくティーンエイジャーの利用者も増えており、ティーンの約400万人がすでにスパ体験者。スパ全体の16%はティーン専門の プログラムをすでにメニューに取り入れているほどだ。

眠気を吹き飛ばすために一時、エネルギー系ドリンクが飛ぶように売れたが、その対極にあるリラックス系ドリンクが最近、注目されている。
米国でアルコールを除く飲料水市場は、推定500億ドル(リサーチ会社ミンテル調べ)。うちエネルギー系飲料市場は約8億9600万ドルで、2003年から2008年にかけ300を超える新商品が登場している。

その間隙をぬうように、長期景気低迷下のアメリカで、不安やストレス解消効果を謳うリラックス系飲料がデビュー。2005年をピークに売り上げ横ばいの エネルギー系飲料を尻目に、リラックス系飲料は「バケーション イン ア ボトル」といった商品名で、着実に売り上げを伸ばしている。

リラックス系飲料の成分は、緑茶に多く含まれるアミノ酸の一種Lテアニンのほか、GABA、ラベンダー抽出液、カバカバ、メラトニン、バレリアンなど。まだまだ駆け出しのリラックス系飲料だが、どこまで市場拡大するか関心が寄せられている。

15分の仮眠で心身をリフレッシュ、仕事の効率がアップ

加えて注目されているのが、昼寝のリフレッシュ効果。全米睡眠協会によると、アメリカ人の37%が昼寝をしているという。著名人では、アルバート・アイ ンシュタイン、トーマス・エジソン、ウィンストン・チャーチル、ジョン・F・ケネディー、ロナルド・レーガンといった面々が昼寝愛好家だったという。

全米睡眠協会の昨年3月に発表によると、調査対象となった会社の約3分の1が昼寝を許可していると回答。「昼寝を許すとは寛大な会社」と思うかもしれないが、実は寝不足による仕事の効率低下がビジネスにもたらす損失は全米で年間に推定180億ドルといわれている。

ほんの15分ほどの仮眠で仕事の効率化が図れるとなると、不況時には嬉しい。社内に昼寝用ラウンジを設ける会社や昼寝スペースの提供をビジネスにする会社も登場している。

また、昼寝には心臓病による死亡リスクを下げる効果もある。健康なギリシャ人の成人2万3500人を対象にしたハーバード大学とアテネ大学医学部の共同 研究によると、1週間に少なくとも3日は昼寝している人は、そうでない人に比べ心臓病による死亡リスクが37%低いという。

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