ハーブ新研究に予算、効果検証で仕分けも

ハーブ新研究に予算、効果検証で仕分けも

ハーブ新研究に予算、効果検証で仕分けも

kaigai66 昨年来、米国にかつてない不況の嵐が吹き荒れている。高い失業率に、蔓延する雇用悪化。頼りになるのは自身の健康だけ。健康維持に手軽に利用できるものといえば、やはりハーブ・サプリメントだが、米国の最近の市況はどうか。

量販店や大手スーパーで、クランベリーや大豆、ガーリックが健闘

非営利団体American Botanical Council(ABC) の機関紙Herbal Gramに掲載された米国ハーブ市場の2008年の売上総額は推定で48億ドル。前年比で1%増となった。

同統計は、市場調査会社Information Resources Inc.(IRI) 、Nutrition Business Journal (NBJ) 、SPINSのハーブ・サプリメント販売統計をまとめたもの。

販路別では、量販店や大手スーパーマーケットなどの主要販路で2億8924万8200ドル、前年比7.16%のアップとなった(IRI調べ)。

また、健康・自然食品専門店での売上げトップ5は、アマニ油、カモジグサ、オオムギ、ステビア、アロエ、オオアザミエキス(SPINS調べ)。量販店や大手スーパーでは、クランベリー、大豆、ガーリック、ノコギリヤシ、イチョウエキスとなった(IRI調べ)。

連邦資金でハーブ新研究が目白押し

医療費高騰の抑制のために政府はハーブ・サプリメントといった代替医療に期待をかけざるを得ないのか。
今年2月、オバマ大統領は科学・医療の研究費として約50億ドルを投じるという法案に署名した。その一部がハーブ研究に使われるという。

クランベリーの膀胱がん予防、ジンジャールーツエキスの結腸直腸がん予防、アメリカンジンセンのがん細胞増殖抑制、ターメリックルーツエキスの閉経後骨粗しょう症予防といった研究テーマが挙がっている。ハーブ・サプリメントの健康効果に関心が集まっている。

重金属含有問題が浮上、米国ハーブ協会でガイドライン

政府によるハーブ研究の肩入れで、市場はさらに拡大が期待される。とはいえ、企業は手放しで喜んでもいられない。 一方で、商材の安全性はもちろん、エビデンス(科学的根拠)、有効性の検証も徹底されることになる。ふるいにかけられ、市場からの撤退を余儀なくされるものもあるだろう。

昨年、Journal of the American Medical Association誌が、アーユルヴェーダの商品に鉛、水銀、ヒ素が含まれていたという研究結果を報じた。
米国立補完代替医療センター(NCCAM)が資金提供した研究で、ボストン大学医学部のチームがリサーチしたところ、一部の商品に1日の摂取許容量を上回る鉛、水銀、ヒ素が検出されたという。
アーユルヴェーダでは、治療目的で重金属を処方するものもあるが、American Herbal Products Association (AHPA)に加盟している企業の商品は、重金属の含有量が低かったという。

現在、AHPAでは、ハーブに含まれる重金属に関するガイドラインを設け、1日の最大摂取許容量を、(1)ヒ素は1日10mcg、(2)カドミウムは1日4.1mcg、(3)鉛は1日10mcg、(4)水銀は1日2.0mcgと、規定している。
ボストン大のリサーチチームは、重金属でも規定量の正しい処方であれば、有害ではなく治癒効果があるとしている。

イチョウエキスやガーリック、検証の遡上に

米国で常に売れ筋の上位に挙げられるのが、イチョウやガーリックだが、これまで数多くの効能が報告され、多くの愛用者を獲得しているだけに検証の目も厳 しくなっている。昨年末、NCCAMがイチョウエキスの認知症やアルツハイマー病への予防効果に疑問符を示した。研究報告のタイトルは、「Ginkgo Evaluation of Memory (GEM)」。

National Institutes of Health (米国立衛生研究所)やNCCAMの資金提供で、 軽度の認知障害、又は全く問題のない75歳以上の男女3069人を対象に、医療施設4カ所で8年間にわたり調査。イチョウエキスの認知障害予防効果の研究 としては、過去最大規模といわれている。

研究では、1日2回、各120ミリグラムのイチョウエキス服用とプラセボの2群に対象を無作為に分け比較した。1日計240ミリグラムはこれまでの研究 で効果が報告されていた摂取量。平均6年間の追跡調査の結果、523人が認知症と診断され、うち246人がプラセボ群、277人がイチョウエキス群だった ことから、研究者は、両者の間に有意な差は見られないとした。

ただ、有用性についての報告もある。Neurology誌08/3月号によると、Oregon State University研究者グループが、記憶力衰退の兆候が見られない85歳以上の高齢者118人にイチョウエキス(240mg/日)か、プラセボのどち らかを3年間与えたところ、エキスを最低84%使用するという指示に従った被験者は、軽度の記憶力障害のリスクが68%低くなることが分かったという。

また、卒中予防に有用という報告もある。Stroke誌08/10月号によると、Johns Hopkins University研究者グループが、イチョウエキスを投与、あるいは投与しないマウスに卒中を誘発させ、経過観察したところ、投与群は投与しなかった 群に比べ、脳の損傷が半分に抑えられたことが分かったという。

ガーリックについても、Archives of Internal Medicine誌07/2月号に掲載された記事によると、スタンフォード大学の研究で、軽症高コレステロール患者169人を対象にした6カ月の追跡調査 では、ガーリックに悪玉コレステロールを下げる効果が見られなかったという。
研究では被験者を、(1)生ガーリック、(2)ガーリック粉末サプリ、(3)ガーリックエキス(4)プラセボ、の4グループに分け、毎月、コレステロール値を検査した。結果、いずれのガーリック群も悪玉コレステロール値を下げる効果がみられなかったという。

ただ、ガーリックのコレステロールへの関与を示す報告もある。British Journal of Nutrition誌08/12月号によると、Central Food Technological Research Institute(インド)研究者グループが、マウスにコレステロール0.5%入りのエサを(結石生成性食事)10週間与え、コレステロール胆石を生 成。マウスを2群に分け、結石生成性食事のみか、同食事+ガーリック(0.6%)およびオニオン(0.2%)のどちらかを与えた。
結果、ガーリックおよびオニオンの補給群では、コレステロール胆石発現が15~30%減少したという。また、サプリメント群は食事のみ群に比べ、血中および肝臓コレステロール濃度が低くなっていたという。

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