オバマ政権、加齢研究に予算援助

オバマ政権、加齢研究に予算援助

オバマ政権、加齢研究に予算援助

kaigai67 50歳前後のベビーブーマー(団塊)世代の「若返り願望」に応え、米国では加齢をテーマにした研究が花盛りだ。オバマ政権の予算援助で加齢研究にますます拍車がかかっている。高齢化社会を迎え、高齢者の疾患に対応する栄養成分の研究にも期待がかかる。

米国立加齢研究所(NIA)、加齢研究で新予算

2009年2月、オバマ大統領の署名を得て、米国経済再生・再投資法(ARRA)が新法として成立した。
ARRAには、雇用の維持・創出、失業者への経済援助、さらに科学研究の支援まで盛り込まれている。

ARRAの成立で、米国立衛生研究所(NIH)には、今後2年間にわたり研究および設備投資費として104億ドルが割り当てられる。
NIHの傘下にある米国立加齢研究所(NIA)。1974年、メリーランド州ボルチモアに設立され、加齢研究で最先端をいくNIAにも2億7300万ドルのARRA予算が割り振られた。

NIAは、アルツハイマー病や骨粗しょう症、変形性関節炎といった加齢に伴う疾患などの研究を行うほか、全米の大学や研究機関に年間5億ドルを超える助成金を提供している。通常予算とは別枠で得たARRA予算により、加齢研究がさらに盛り上がりそうだ。

延びる平均寿命、米国男性75.1歳・女性80.2歳

米国勢調査局の最新統計によると、米国民の平均寿命は77.7歳、男性が77.1歳で、女性は80.2歳。
延び続ける平均寿命。2010年には78.3歳(男性75.7歳、女性80.8歳)、15年には78.9歳(男性64.4歳、女性81.4歳)、20年には79.5歳(男性77.1歳、女性81.9歳)になると予想されている。

ちなみに、100歳以上は6万人を超えるといわれ、ベビーブーマー(団塊)世代が100歳の誕生日を迎える頃には、100歳以上の高齢者は約27万4000人に達するとみられている。

加齢研究や加齢に伴う疾患対策に、今後さらに予算を投じる必要性が高まるであろう。
前述のNIAはARRA予算から520万ドルをテキサス大学ヘルスサイエンスセンターに助成金として提供するという。それをもとに、テキサス大ではマウ スを使い免疫抑制剤ラパマイシンの長寿効果および加齢に伴うアルツハイマー病やパーキンソン病などへの予防効果について研究するという。
ラパマイシンについては、2009年7月8日号の英科学誌「ネイチャー」に、マウスに服用させたところ、寿命が飛躍的に延びたという研究報告が掲載されている。

研究進む、栄養成分による加齢対策

加齢研究では世界でもトップクラスといわれる米国。NIAはその地位を築くことに一役買った。米国での加齢研究はそうしたNIAを先頭に、今後さらに盛り上がりをみせることであろう。

加齢対策として医薬品成分のみならず、栄養成分の有効性もクローズアップされることが期待される。
最近の報告の中で、幾つか紹介しよう。高齢者の代表的な疾患といえば、アルツハイマー病。Journal of Alzheimer’s Disease誌09/12月号で、ポリフェノールを多く含む食品の摂取はアルツハイマー病の予防に有用であると報じている。

Universitat Autonoma de Barcelona研究者グループによるもので、マウスを使ってアルツハイマー病に対するポリフェノールおよび脂肪酸の有効性を調べた。
研究者らはマウスに標準的な食餌、あるいは標準的な食餌+LMN(ドライフルーツ、ナッツ、野菜、可溶性食物繊維含有小麦粉など天然物質混合)のどちらかを40日間与えた。この期間は人間では5年に相当する。

結果、マウスの各脳部位を分析したところ、LMN投与群では嗅球および海馬で新しい分化細胞が増加し、幹細胞も増殖していることが分ったという。
アルツハイマー病では、特に両領域でダメージが大きいとされている。また、海馬神経細胞と大脳皮質細胞をLMNで培養後、酸化ダメージを与えたが、細胞には酸化ダメージの抑制がみられたという。

高齢者の鬱的症状の軽減に緑茶

加齢に伴う脳機能の衰退の改善に有用とされる食品素材についてもさまざまなメディアが報じている。
Journal of Agricultural and Food Chemistry誌10/1号では、ブルーベリーが高齢者の記憶力促進に有用であると報じている。
University of Cincinnati Academic Health Center研究者グループによるもので、9人(平均年齢76.2歳)にブルーベリージュース(6~9mL/kg/日相当量)あるいはプラセボを12週間与えた。
結果、ブルーベリージュースを与えたグループは、学習能力および単語記憶力で有意な改善を示した。また、鬱的症状の軽減もみられたという。

American Journal of Clinical Nutrition誌09/11月号では、高齢者の鬱的症状の軽減に緑茶が有用と報じている。
日本の東北大学の研究者グループによるもので、軽度から重度および重度の鬱的症状を示す1,058人(70歳以上)を対象に鬱的症状と緑茶摂取との関連性を調べた。鬱的症状の評価については30項目GDS(高齢者抑鬱尺度)を採用した。
結果、緑茶を1日1杯未満飲用のグループに比べ、4杯以上飲用のグループは、鬱的症状の発現が44%減少していることが分ったという。

 

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