米国立衛生研究所(NIH)の栄養補助食品室(ODS)、 サプリメント研究に注力、5ケ年計画を発表

米国立衛生研究所(NIH)の栄養補助食品室(ODS)、 サプリメント研究に注力、5ケ年計画を発表

米国立衛生研究所(NIH)の栄養補助食品室(ODS)、 サプリメント研究に注力、5ケ年計画を発表

kaigai70 米国で年間売り上げ250億ドルといわれるサプリメント市場。現在、ビタミン・ミネラルやハーブをはじめ少なくとも5万種類のサプリメントが米国市場に出回っている。4月初旬、米国立衛生研究所(NIH)の栄養補助食品室(ODS)が5ケ年計画を発表した。サプリメントの研究支援や情報提供にさらに力を入れる構えだ。

ODSの5ケ年計画、サプリメントの分析・評価など4つのゴールを掲げる

ODSは4月初旬、5ケ年計画(2010-2014)を発表した。
計画書の冒頭で、ディレクターのポール M.コアテス氏はこう語っている。

「ODSのミッションは、サプリメントへの知識と理解を深めていくこと。そのために、研究を支援し、科学的情報を評価、研究報告を広め、生活の質と健康の向上を目指し、一般消費者の教育に力を入れている。この揺るぎないミッションのもとに、新たに浮かび上がった重要な課題を取り上げ5ケ年計画の目標と方針を作成した」

2010年から2014年までの5ケ年計画で取り上げられた4つのゴールは――

・リーダーシップをとり、健康向上および疾患予防におけるサプリメントの役割を分析・評価するための研究を促進する
・新たな研究およびトレーニングへの資金援助により、サプリメントについての科学的知識を広げる
・サプリメント研究の手段を支援する
・サプリメントに関する科学的に裏付けられた最新知識を消費者に提供する

具体的には以下のことを行う。
・連邦機関と協力し、科学的エビデンスに基づいた最新データを分析しサプリメントの効果と安全性を検証する。これは、Food and Nutrition Boardが定めた食事摂取基準(DRI)の推奨量に影響を与えるものとみられている。カルシウムとビタミンD、大豆はすでに検証が行われており、今後、オメガ3脂肪酸と葉酸が検証対象としてあがっている。
・医薬品との併用による安全性などについて研究
・プロバイオティックスとプレバイオティックスの研究
・サプリメントの汚染調査
・ハーブの識別
・米国で販売されている全サプリメントのデータベースをウェブサイト上に作成
・サプリメントの成分に関するデータ表の作成
・医療関係者への情報提供を促進、など。

サプリメント、米国にもたらす経済効果は600億ドル

ODSでこうした5ケ年計画を打ち立てるなど、サプリメントの普及に貢献していることもあってか、サプリメント業界は米国にかなりの経済効果をもたらしている。

ナチュラルフードマーチャンダイザー2009年6月号に興味深い調査報告が掲載されている。Natural Products Associationの調査報告書「米国でサプリメント業界がもたらす経済効果」によると、サプリメント業界は、雇用や納税などで米国経済に年間およそ 600億ドル貢献しているという。

雇用状況をみると、サプリメント業界だけでも約20万人の雇用を創出、関連する約100の業界での雇用数は40万人を超える。また、サプリメント業界が州や連邦に納める税金の総額は100億ドルを超えるという。

栄養補助食品健康教育法(DSHEA)施行に伴い設立

米国サプリメント業界の推進役を担うODSは1995年に設立。94年に成立した栄養補助食品健康教育法(DSHEA)の施行に応じた格好だ。

DSHEAは、ODSの目的および責任を次のように明示している。
目的は、(1)医療向上の一環として、サプリメントの潜在的役割を調査する(2)健康維持および慢性病予防の効果について科学的研究を推進する。

責任としては、(1)NIHのもとに科学的研究の実施およびそのコーディネイトを行う(2)海外で発表されたものを含め、科学的研究の結果報告を収集する(3)NIHのためにサプリメント関連の資金を調整する、など。

設立から2004年までの最初の9年間、ODSはサプリメントブームに乗り、NIHの花形機関として年々予算も大幅に増額、新たなプログラム作りに取り 組むなど多忙を極めた。しかし、2004-2009年の5ケ間計画あたりから、予算も横ばい状態となり、研究促進といった各種プログラムも成熟期に入る。

サプリメント市場、ここ5年ほど安定期に

ODSの年間予算の推移からサプリメント市場の変遷を垣間見ることができる。ODSの資料によると、1998年にはわずか150万ドルだった予算が、わ ずか1年後の99年には2倍以上の350万ドルに増え、2000年には500万ドル、2001年には倍の1000万ドルに膨れ上がる。さらに、2002年 には1700万ドル、03年には2000万ドル、04年には2600万ドルに達する。以降は2700万ドルから2600万ドル前後で横ばい状態が続く。

こうしたことからも、サプリメントが一過性のブームではなく、ここ5年ほどで安定期に入っていることがよく分かる。そして安定期に入ったからこそ、科学的エビデンスに裏付けられた効果報告と安全性がこれまで以上に要求されている。

そんなエビデンス重視の傾向に応えるため、ODSの予算の大半は研究資金援助に投じられている。2008年のサプリメント別助成金をみると、最も多かったのがハーブ、次いで、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、アミノ酸、プロテインとなっている。

研究支援のほかにも、若い科学者の養成にも力を入れている。また、2003年以来、NIHをはじめ他機関との共同出資で約100件にのぼる研究カンファレンスやワークショップを開催。

ホームページではサプリメントの基礎知識や最新情報を提供し、中でも「サプリメント別データ」は、一般消費者と医療関係者向けに分け、効果や摂取基準、医薬品との併用による安全性などの情報を掲載している。

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