老人から子供まで、米国で増える関節炎

老人から子供まで、米国で増える関節炎

老人から子供まで、米国で増える関節炎

kaigai71 米国で最も罹患率の高い病気の一つである関節炎。・・・関節リュウマチって、子どもにも発症するの?そうしたさまざまな疑問に答えるため、5月は米国で関節炎への認識と理解を深める月間に指定されている。米国の関節炎最新情報を報告する。

成人の5人に1人が関節炎、子どもの250人に1人が関節リュウマチ

米国疾病対策センター(CDC)の統計によると、米国における関節炎患者は推定で約4600万人。罹患率でみると、成人の5人に1人とかなり高い。
さらに高齢者人口の増加で、2030年には6700万人に膨れ上がるものと予想されている。

関節炎は、関節の炎症をともなう疾病の総称で、変形性関節炎を筆頭に、関節リュウマチ、狼そう、線維筋痛、通風など病名は100を超える。

症状は局所だけでなく全身にもおよぶ。発赤、腫脹、圧痛、こわばり、可動域制限、全身では発熱、全身倦怠感、体重減少などの症状がある。

関節リュウマチは、自己免疫が主に手足の関節を侵し、関節痛だけでなく、関節の変形が生じる炎症性自己免疫疾患で、血管、心臓、肺、皮膚、筋肉といった全身の臓器に障害をきたす。

関節リュウマチは65歳以上の病気と思われがちだが、実は18歳以下の子どもの250人に1人が発症しており、患者数は29万4000人と推定されてい る。罹患率は州によりさまざまで、CDCの2007年発表の統計によると、最低はワイオミング州で推定500人、最高はカリフォルニア州で推定3万 8000人となっている。

問題は、子どもの関節リュウマチを専門とする医師が全米で200人足らずで、10州でほぼ皆無ということ(2008年関節炎ファンデーション調べ)。専門医がほとんどいないことから、診断が遅れ、手遅れとなり車椅子生活を強いられている子どもも少なくない。

肥満が関節炎の罹患リスク高める

一般のアメリカ人が、生涯に膝の変形性関節炎を発症するリスクは45%、過去に膝のケガをした場合は、リスクが57%といわれる。発症リスクは肥満度に よっても高まる。理想体重だと、膝の変形性関節炎の発症リスクは30%、太りすぎだとリスクが47%、肥満になるとリスクが61%にまで高まるといわれ る。

Journal Arthritis care & Research誌2010年3月号に掲載されたトロントウエスタン研究所の調査報告も関節炎の発症リスクと肥満が比例関係にあることを裏付けている。同 研究所で2002-03年の米国とカナダのデータを検証したところ、米国の関節炎罹患率は18.7%、関節炎による可動域制限の発症率は9.6%、カナダ はそれぞれ16.8%と7.7%だった。

また、米国女性の関節炎罹患率は23.3%、可動域制限発症率は13%、カナダはそれぞれ19.6%と9.2%。研究主幹はプレスリリースで「米国で関 節炎の罹患率および可動域制限の発症率の高さは、肥満や体を動かさないことと関係している。特に女性でその傾向が強い」と結論付けている。

相次ぐ代替医療による関節炎緩和効果

そうした現状を受け、患者の生活の質向上、そして医療費コストの削減を目指し、代替療法による関節炎緩和の研究がNational Center for Complementary and Alternative Medicine(NCCAM)などの資金援助のもとに盛んに行われている。

Journal of Nutrition誌2008年11月号に掲載された記事によると、緑茶に含まれるポリフェノールに関節炎の緩和が期待されるという。
メリーランド大学とラトガース大学の共同研究で、実験用マウスに関節炎を発症させる物質を投与する1-3週間前から、飲み水の代わりに緑茶を与え続けた ところ、発症物質を投与してもそれほどひどい症状が現れなかったことが分かったという。研究員らは緑茶に抗炎症効果があることから関節炎の緩和が期待でき るとし、緑茶を既存の治療法と併用した代替療法としてさらに研究する必要があると結論づけている。

また、Case Western Reserve UniversityとAligarh Muslim Universityの研究員による実験用マウスを使った研究報告では、ザクロの抽出液にリュウマチ関節炎の予防効果が期待できるとしている。研究では、 リュウマチ関節炎を発症させる物質をマウスに投与する前と後に、ザクロの抽出液か水を胃に直接チューブで投与した。

結果、ザクロの抽出液を投与されたマウスは劇的に罹患率が下がったという。研究員らは、ザクロの抽出液にリュウマチ関節炎を予防する可能性があると報告しているが、すでに発症した場合は治療効果はそれほどみられないとしている。

この他、National Institutes of Healthの傘下にあるNCCAMとNational Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases(NIAMS)が資金を提供した大規模研究で、鍼療法に膝の変形性関節炎による痛みの緩和効果が立証されている。

研究は、膝に変形性関節炎を発症した50歳以上の患者570人を対象に、全米各地の医療センターで複数の医療チームが実施。対象は、膝の激しい痛みを訴 え、これまでに鍼療法を受けたことがなく、6カ月以内に膝の手術を受けていない患者で、1)鍼療法、2)ニセ鍼療法、3)関節炎協会の症状緩和の自助プロ グラムの3グループに無作為に分けた。対象はいずれも医薬品服用など今まで受けていた治療もそのまま続けた。結果、既存医療との併用で鍼療法に鎮痛と生活 の質向上の効果があることが結論付けられたという。

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