米国で増える自閉症児、求められる代替医療

米国で増える自閉症児、求められる代替医療

米国で増える自閉症児、求められる代替医療

kaigai72 米国をはじめ世界中で患者が増えているといわれる自閉症。近年米国では、この病名に「スペクトラム(連続体)」という言葉が付き、これまで自閉症とみなされなかった軽度の症状までも自閉症と診断されるようになった。米国における自閉症の発症率や代替療法利用率など現状を報告する。

90年代初頭、「自閉症」に新たな診断基準

「自閉症スペクトラム」は社会や人とのコミュニケーション能力に問題がみられる発達障害の一種で、知的・言語障害を伴わない高機能自閉症(アスペルガー症候群)なども含まれる。

「スペクトラム(連続体)」という呼称は、病状が多彩で、軽度から重度までの境界線が虹のように曖昧であることに由来する。

疾病対策予防センター(CDC)の推計によると、米国の子供の110人に1人が、「自閉症スペクトラム」を発症しているという。患者は0歳-21歳で、推定で約73万人。

ちなみに、米国の子供の約13%が、軽度から重度の発達障害をもつといわれる。

自閉症は今では、発達障害による症状としてよく知られるようになったが、一体いつ頃から、社会的に認知されるようになったのか。

1943年、米国ジョンズ・ホプキンス大学の児童精神科医、レオ・カナー氏が、精神分裂症の症状の一つを「自閉」と命名。以降、「自閉症(Autism)」という病名が使われるようになる。

1980年代以前は、自閉症といえば、子ども2000人に1人の割合で発症するごく稀な疾患とみられていた。

ところが90年代に入ると、状況が一変する。自閉症の概念が広がり、新たな診断基準が設置。自閉症は、アスペルガー症候群や他の広汎性発達障害と共に、「自閉症スペクトラム」という病名で呼ばれるようになった。

この新基準により、子どもの自閉症は1000人中6人ないしは7人と、以前の10倍にも数えられるようになる。ちなみに、カリフォルニア州では、自閉症として治療を受けた人は1987年-98年で300%増加、98年-2002年では100%増加している。

原因が解明されず、家族の経済的負担も大きい

「自閉症スペクトラム」の発症率について、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系といった人種別で差はないが、男女比では男子が女子に比べ、平均4~5 倍ほど発症率が高い。また、2009年のCDC報告では、「自閉症スペクトラム」の児童の30~51%に、IQ70以下の知的障害がみられることも分かっ ている。

現在のところ、早期に診断される平均年齢は、4.5歳から5.5歳だが、発症する子どもの51~91%は、3歳ぐらいまでに症状が現れるという。患者の親の約3分の1が、1歳の誕生日前に何らかの障害に気付いているという報告もある。

しかし、「自閉症スペクトラム」と診断されても、疾患原因が解明されていないことから、治療に対する家族の経済的負担も大きい。CDCの統計によると、生涯の医療費試算は患者1人につき約320万ドル。年間で4000~6000ドルの医療費負担を強いられることとなる。

音楽療法や食事療法など、代替療法に救いを求める親も

「自閉症スペクトラム」については、現代医学による処方では、医療費が高い、処方薬の副作用が強い、効果がみられないといった理由から、代替療法に救いを求める親も少なくない。

米国で権威ある医療機関、メイヨークリニックでは、自閉症の改善にクリエイティブ療法や音楽療法などの代替療法を利用している。 また、食事療法も取り入れており、代表的なものでは、プロバイオティックス、ビタミンA、C、B6、B12、マグネシウム、葉酸、オメガ3脂肪酸などサプリメントの服用も頻繁に試みている。

1997年から2003年にかけ、「自閉症スペクトラム」と診断され、ボストンのチルドレンズホスピタルで治療を受けた小児患者112人を対象にしたアンケート調査では、74%が代替医療を既存医療と併用していることが報告されている。

最も利用率が高かったのは、食事療法で38%、栄養成分の摂取では、ビタミン・ミネラル(なかでもビタミンB6)が30%、オメガ3脂肪酸やフィッシュオイルが23%。その他、祈り療法、バイオフィードバック、マッサージ療法、ハーブ療法、カイロプラクティスなどで、利用率は10~16%だった。

ただ、治療法別の効果に関する項目で、ソーシャルスキルトレーニングといった既存の治療プログラムや処方箋薬で症状が軽減したという回答が、いずれも 94%から38%と高く、代替療法については、食事療法が17%、祈り療法が16%、フードサプリメントが15%、ビタミン・ミネラルが12%という回答 であった。

自閉症、遺伝子異常が原因か?

今年6月9日付英科学誌ネイチャー(電子版)に、自閉症の原因の糸口となる興味深い研究報告が掲載された。「自閉症ゲノムプロジェクト」と称し、カリ フォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)をはじめ11カ国から120人の研究者が参加。研究報告によると、「自閉症スペクトラム」の小児患者はそうでな い小児よりも、遺伝子の欠失または重複が多いことが認められたという。

小児自閉症患者996人とそうでない小児1287人の遺伝子を比較したところ、通常、両親からそれぞれ1つずつ受け継ぐべき遺伝子が1つ足りなかった り、3つ以上存在するといった「コピー数多型」が20%ほど多く見つかったという。今後、こうしたゲノム研究からも、「自閉症スペクトラム」対策に、大き な期待が寄せられている。

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