米国栄養ガイドライン、2010年度版が年末に公表

米国栄養ガイドライン、2010年度版が年末に公表

米国栄養ガイドライン、2010年度版が年末に公表

kaigai75 2005年、アメリカ人の栄養指針である栄養ガイドラインが公表された。5年毎の改訂のため、今年度末には2010年度版が出ることが予定されている。05年度版では、初めて全穀物の有用性が明示、また魚類の摂食が推奨されたが、はたして目標とする理想の「食」は国民に浸透したのか。10年度版の発表に先駆け、アメリカ人の食生活の現状を報告する。

現実はガイドラインとかけ離れた食生活

2005年版栄養ガイドラインでは、成人の1日の理想的な摂取カロリーを2000とし、1日にそれぞれ、野菜2.5カップ、果物2カップ、穀物6オンス(約170g)、ミルク3カップ、肉と豆類を5.5オンス(約156g)の摂取を推奨している。
塩分については2300mgに控えれば、高血圧の心配はないとしている。

アメリカ国民の多くが野菜や果物、穀物が体に良いのは十分知っているし、塩分の摂り過ぎが体に悪いこともよく知っている。
しかし、現実は、ガイドラインで掲げた食事目標とはかなりかけ離れているのが実状だ。

米国がん協会と栄養方針・推進センターが、全米で男女合わせて1万6338人を対象にした 食生活調査報告を分析。今月半ば発行のJournal of Nutrition誌で、2005年度版栄養ガイドラインで掲げた栄養摂取目標がほとんど実行されていない状況が明らかとなった。

このままの食生活では慢性疾患に

調査報告によると、全対象の約90%、71歳以上では約80%が、固形脂肪や糖分、アルコールの過剰摂取で1日のカロリー摂取基準を上回っていた。

大半が穀類、肉、豆の摂取基準を満たしていたが、野菜や果物をしっかり摂っていないことが分かった。また、ガイドラインでは穀物摂取において、少なくとも半分は全穀物で摂るよう推奨しているが、それも実行されていなかった。

若年層については、果物、ミルク、油脂類の摂取不足が目立った。また、31歳から50歳でアルコールが過剰摂取であることも分かった。

調査報告は、このまま何の手も打たなければ、アメリカ人の食生活はますますガイドラインとはかけ離れたものとなり、肥満や食生活からくる慢性疾患に悩まされることになるだろう、と警告している。

塩分の摂り過ぎも問題に

2005年度版ガイドラインで推奨する塩分の1日の摂取量は2300mgまで。しかし、それ以前に、1日にいったいどれほど塩分を摂っているか知っているアメリカ人はそうはいないだろう。

というもの、食品には隠れ塩分がある。豚、ターキー、鶏の生肉は塩処理がほどこされた後に冷凍されスーパーなどに配送される。塩処理がされた生肉は、そうでない生肉に比べ塩分が2倍ほど高くなっている。

農務省(USDA)農業市場調査サービスの2007年調査報告によると、豚生肉の約45%が塩処理されているという。また、米鶏肉委員会の2007年調 査報告でも、鶏肉の14%に塩処理がされていたことが判明。ファミリーサイズなど大きなパッケージに入った鶏肉にいたっては37%が塩処理されていた。

業者によっては、塩分をできるだけカットしようと試みてはいるが、食品業界が総じてそうした傾向にあるとはいえない。

塩分の摂り過ぎは高血圧や心臓疾患のリスクを高める。1日の塩分摂取量を1500mgに抑えれば、米国の年間医療費を262億ドル、現行の摂取基準の2300mgであれば178億ドル、いずれも削減できるという指摘もあるほどだ。

2010年度版ガイドライン先取り情報

2010年度版栄養ガイドラインは今年度末に発表の予定で、現在、ガイドライン諮問委員会のメンバー13人が最終の詰めの段階に入っている。
そこで、2010年度版ガイドラインの大筋についてまとめてみた。

新ガイドラインでは、アメリカで社会問題になっている「肥満」対策に取り組んだ内容のほか、高血圧症を防ぐための低塩分食、地中海食、ベジタリアン・ビーガン食、日本食という4種類の食事法の比較が初の試みとして盛り込まれているという。

具体的には、飽和脂肪を1日の摂取カロリーのうち現行の10%から7%に減少するほか、動脈硬化や心疾患のリスクを高めるとされるトランス脂肪酸の摂取 を1%から0.5%に減少。塩分の1日の摂取も2300mgから1500mgに減らす。魚類4オンス(約113g)を週2回摂り、オメガ3脂肪酸の1日摂 取量250mgを目指すといった内容になっている。

年度末には、より詳細な内容が明らかになるが、いくら目標を掲げても、実践が伴わなければただの「絵に描いた餅」になりかねない。健康と疾患予防のために、理想の「食」の実践が何よりも大切である。

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