米国で極度のストレスを訴える人々が増加

米国で極度のストレスを訴える人々が増加

米国で極度のストレスを訴える人々が増加

kaigai77 長引く不況の影響などで、体調を崩すほどの強いストレスを感じているアメリカ人が増えている。しかも、調査によると、大人たちのストレスが家族におよび、子供たちまでイライラや不眠を訴えているというから事は深刻だ。ストレスに病む米国の実体を報告する。

米国民の44%、過去5年でストレスが悪化

米国民の3分の1が極度のストレスに—。米国心理学協会の最新調査で、精神不安を抱える人々が増加していることが分かった。さらに、親の強いストレスが子供たちにまで波及している実体が明らかになった。

調査は2010年8月3日-27日、米国在住の18歳以上の大人1,134人(8歳から17歳の子供を持つ大人100人を含む)を対象に、同協会の依頼で世論調査会社大手のハリス社が実施。

それによると、米国民の44%が過去5年間でストレスがひどくなっていると回答。32%が体調不良を自覚するほどの極度のストレスを感じていると答えた。また、ストレス管理について、69%がその重要性を理解していると回答しているものの、うまくいっていると答えたのは32%だった。

親の影響で強いストレスをかかえる子供が17%

親たちのストレスも問題だが、さらに深刻なのは子供たちへそれが影響していることである。
調査では、家族のストレス度についても、8歳から17歳の未成年1,136人を対象にヒアリングを行っている。それによると、親の影響で強いストレスを感じていると答えた子供は17%、親のストレスの影響を受けていないと答えた子供はわずか2%だった。

親のストレスは子供たちにどのような精神不安や健康被害をもたらすのか。
調査によると、親がストレスをかかえていることで、10歳前後の子供の47%、10代の33%が「悲しくなる」、10歳前後の36%、10代の43%が「不安になる」、10歳前後の25%、10代の38%が「イライラする」と答えている。

親のストレスが子供たちへと波及していることは明らかだが、当の親は案外鈍感だ。親の69%が自分のストレスが子供に影響しているとは思わないと答えている。

ストレスの原因のトップは「マネー」

米国心理学協会では、この5年間、米国民のストレスの度合いがさらに高まっていると報告している。米国民のほぼ半数に強いストレスをもたらしている原因とは何か。

親たちへの「どんな時に強くストレスを感じるか?」という質問では、トップが「マネー」で76%、続いて「仕事」が70%、「景気」が65%、「家庭で の責任」が58%、「人間関係」が55%、「自分の健康」と「家のローン」が52%、「雇用の安定」が49%、「家族の健康」が47%、「安全」が30% だった。

ストレスの発生原因のほとんどを経済問題が占めている。2000年に入り、米国民は同時多発テロで緊張を強いられ、以降2007年8月のサブプライム ショック、続く2008年9月のリーマン・ショックで、未曽有の景気悪化に見舞われ、失業率はいまだ高止まり状態にある。ストレス悪化の根底に不安定な雇 用、見通しのきかない展望など経済問題があることは間違いないようだ。

ストレスで心臓病やうつ病など慢性疾患の発症リスク高まる

ストレスで、どのような健康被害がもたらされるのか—。
米国心理学協会では、「ストレスがもたらす体調不良」についても調査しているが、トップが、「イライラし怒りやすくなる」で45%で。「疲れやすい」が 41%、「興味や気力、元気がなくなる」が38%、「緊張または不安になる」と「頭痛」が36%、「うつになり、悲しくなる」が34%、「泣きたくなる」 が30%、「腹痛、消化不良」が26%、「筋肉が張る」が23%、「胸が締め付けられる感じがする」が11%と続いた。

米国心理学協会のチーフエクゼクティブオフィサー兼エクゼクティブバイスプレジデントで心理学者のノーマン・B・アンダーソン氏は強いストレスを抱える米国民に対し、次のように語っている。

「ストレスと健康に関して、米国は重要な岐路に立たされている。年々、米国民の4分の3近くが健康的とは思えないほどの強いストレスを感じており、心臓 病や糖尿病、うつ病といった慢性疾患の発症リスクにさらされている。ストレスは体だけでなく心の健康にも害をおよぼし、主な死因にも影響を与えている。米 国民の大半がストレス解消の重要性を分かっていても、なかなか実践していないのが現状。ところが、医療システムはそんな国民のストレス問題に十分に対応し ていない。ストレスが大きな医療問題になりつつある今、医学界はもとより、国をあげての真剣なストレス対策が必要とされている」

ストレスと健康をめぐっては、こんな興味深い研究報告も発表されている。シカゴで今月開催された米国心臓協会の学会で発表された研究報告で、心臓疾患の 病歴のない、医療関連の専門職に従事する女性約1万7,000人(平均年齢57歳)を対象に10年間にわたり追跡調査を実施。

結果、ストレスの多い仕事をしている女性はそうでない女性に比べ、心臓発作のリスクが2倍ほど高く、心臓のバイパス手術を受ける割合も43%高いことが 分かった。また、解雇されることに不安を抱いている女性は、高血圧や高コレステロールといった心臓疾患のリスクが高いことも分かった。

ストレスで心身を病めば、仕事の能率低化や医療費負担増など招き、そうした経済損失でさらなるストレスがもたらされるという悪循環へ陥りかねない。経済問題によるストレスをいかに回避するかが、しばらく米国民に課せられた健康へのテーマとなりそうだ。

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