「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第1回 カロリー制限と運動で肥満撲滅へ

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第1回 カロリー制限と運動で肥満撲滅へ

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第1回 カロリー制限と運動で肥満撲滅へ

kaigai80 1月31日、「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」が発表された。アメリカ人の健康管理のために、最新の栄養分析などに基づき5年ごとに改訂されるもので、2010年版は「肥満対策」「栄養摂取の増減」「健康な食事パターン」の3章で構成されている。今回より3回に分け各章の概要を紹介する。

「肥満」が深刻化、ガイドライン1章全てが肥満対策

米国で、どれほど「肥満」が大きな社会問題となっているか、先頃発表された「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」をみれば誰もが納得がいくだろう。なんと、1章全てが肥満対策に割かれている。

昔から、「大きいことはいいことだ」とばかり、アメリカ人は何もかもビッグサイズを好んだ。
食事の皿もソーダのコップも、とにかくビッグ。レストランの食事も山盛りで、当然胃袋も大きくなる。
「食べ過ぎ+運動不足=肥満」という図式が生活に定着している。
肥満に至った構図は実に明白なものだ。

子どもたちはといえば、安全に遊べる公園が少ないことから、TVゲームに熱中し、思春期の子どもで「1日に60分の運動」はわずか8%という実情だ。

肥満対策、まず子どもたちから

1970年代以来、脂肪分たっぷりのジャンクフードを売るファーストフード店は2倍に増え、肥満人口に拍車をかけている。学校でも子どもたちは売店で チョコレートバーやチップスなどを朝から買い求め食べ放題。学校側も教育費削減で苦しい中、スナックの売り上げは財源となるため、やむを得ず売り続ける。

今年1月、子どもの肥満対策に取り組むオバマ大統領夫人のミッシェルさんは量販店最大手のウォールマートと組み、ヘルシーフードの普及キャンペーンを開始した。とくにファーストフード店の多い低所得層地区を主なターゲットに子どもの肥満撲滅を目指している。

子どもの糖尿病の15%はⅡ型

疾病対策予防センター(CDC)によると、米国で子どもの総人口の17%にあたる約1250万人が肥満で、1960年代から3倍近く急増しているとい う。高血圧、高コレステロール、糖尿病といったこれまで中高年の病気だった生活習慣病がいまや小児科の領域になりつつある。

Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)は小児期に発症することが多いため小児糖尿病と呼ばれている。悪い食習慣や運動不足から生じるⅡ型糖尿病は、 1980年代には子どもが発症するのをほとんど聞くことはなかったが、最近では子どもの糖尿病の15%がⅡ型糖尿病といわれている。

また、大人では総人口の34%にあたる約7300万人が肥満。年間に約30万人が肥満が原因で亡くなっている。2008年の総医療費の約9%を肥満がら みの医療費が占めており、金額にすると1470億ドルと膨大な額になっている。ちなみに、10年前は785億ドルだった。

1970年半ばから2000年代半ばにかけ、太りすぎまたは肥満の割合は、20歳から74歳までが15%から32%、2歳から5歳までが5%から13.9%、6歳から11歳までが6.5%から18.8%、思春期の未成年が5%から17.4%といずれも増加している。

 大人の大半、子どもの3人に1人が太りすぎ

「とにかく、太りすぎによる慢性疾患を減らすために、ウエストラインをほっそりさせる必要がある。食生活の改善は、個人や家族だけでなく、国家にとっても望ましいことである」と、農務省のトム・ヴィルサック氏は肥満撲滅を訴えている。

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」は、大人の大半、子どもの3人に1人が太りすぎまたは肥満という状況の中、発表された。 ガイドラインでは、体に良い物を適切な量食べ、必要な運動を行い、正しい情報を選択するよう促している。

全米調査データによると、19歳以上の男女の1日平均摂取カロリーは1785~2640カロリーと推定されている。決してカロリー過多というわけではな いが、肥満の人はカロリーを少なめに見積もっている可能性があり、実際のカロリー摂取は推定を上回るものとみられている。

自分が1日に何カロリー摂取しているか知らない人も多い。そこで、ガイドラインでは、食品のパッケージに記載されているカロリーにもっと注意するようアドバイスしている。

大人では、週150時間のエアロビック運動を推奨

ガイドラインが推奨する理想体重を維持するための1日の摂取カロリーは、成人女性の場合、1600~2400、成人男性の場合、2000~3000。ただし、年齢や運動量により摂取カロリーは異なる。

また、低年齢小児の場合、1000~2000、高年齢小児と思春期の子どもの場合、1400~3200。男児は女児よりもカロリーの摂取量は多い。
大人が減量したい場合は、減量の目標値にもよるが、1日に500カロリー以上を削減する必要があるとしている。

理想の運動量については、2008年アメリカ人の運動ガイドラインが指針となっており、健康的な体重を保つには、大人の場合は週に150時間の中度のエアロビック運動、6歳以上の未成年者は1日に60分以上の運動を推奨している。

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