「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第2回 栄養摂取量の増減

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第2回 栄養摂取量の増減

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第2回 栄養摂取量の増減

kaigai81 前回に続き、2010年版アメリカ人の栄養ガイドラインの概要を報告する。第2章「栄養摂取量の増減」では、健康な食生活のために、「取り入れたほうがいい食品」「除いたほうがいい食品」に分類し、それぞれ紹介している。

推奨食品は、野菜・果物、魚、全穀物

2010年版アメリカ人の栄養ガイドラインで、健康な食生活のために推奨しているのが、野菜・果物、魚、全穀物。
中でも、1日に少なくとも2カップ半の野菜または果物は、心臓発作や脳卒中のリスクを軽減するとし、摂食を重視している。

また、穀物の少なくとも半分は全穀物で摂る。無脂肪または低脂肪の牛乳や乳製品の摂取量を増やす。たんぱく質は、魚、鳥肉、卵、大豆など、さまざまな食材から摂るようアドバイスしている。

この他、カリウム、食物繊維、カルシウム、ビタミンDを豊富に含む食品の摂取、50歳以上の場合は、ビタミンB12を多く含む食品の摂取を勧めている。

限りなく和食へと近づく米国

穀類は精製したものでなく未精製のものに。そして、たんぱく質の摂取は魚や大豆から。ガイドラインでは、日本の和食を限りなく理想的な食として掲げていることがわかる。

前回の2005年版栄養ガイドラインでは、初めて全穀物の摂取を推奨した。肥満やそれに伴う生活習慣病の蔓延を食い止めるために、食物繊維やビタミン・ミネラルを豊富に含む全穀物はもはやアメリカ人の食卓に欠かせないものになりつつある。

また、ω-3系脂肪酸を多く含む魚は、FDA(米食品医薬品局)でも心臓病の予防に有用であると認めている。魚食により、鬱やアルツハイマー、動脈硬化などの予防が期待できるとし、盛んに研究が進められている。

オンライン版Archives of Ophthalmology(3月14日付け)では、ハーバード大学の研究で、魚をよく食べている女性は黄斑変性症(AMD)の発症リスクが低いことが分かったという記事を掲載している。

米国では、40歳以上の約900万人がAMDを発症し、うち約170万人が重度のAMDで視力を失っている。記事によると、約3万8000人の女性を対象とした研究で、魚をよく食べる女性はそうでない女性に比べAMDの発症リスクが38%低いことが分かったという。

砂糖添加のフルーツジュース、肥満や血圧へのリスク

野菜・果物の効用については、毎日野菜5皿分(350g)と果物200gの摂食を目標とした「5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)」運動で、米国がガン抑止に成果をあげていることはよく知られている。

2010年版栄養ガイドラインでも、野菜・果物の摂食を強調している。また、フルーツジュースも薦めているが、砂糖添加のものは肥満や高血圧を招く恐れがあるとし、避けたほうがよいとしている。

American Heart Associationの機関誌「Hypertension」2月号に掲載された研究報告「International Study of Macro/Micronutrients and Blood Pressure (INTERMAP) 」によると、ソーダなど砂糖で甘味をつけた飲料水は血圧を上げるリスクがあるという。

米国と英国の40歳-59歳の2696人に、4日間に飲食したものを報告してもらい、2日間の尿検査と8回の血圧測定を行ったところ、砂糖で甘味をつけ た飲料水を1日1本飲むごとに、最高血圧が平均1.6mm Hg、最低血圧が0.8mm Hgいずれも上昇したことが分かったという。

除く食品として、塩(塩化ナトリウム)、トランス脂肪酸、精製穀物

一方、食生活から除いたほうがよい食品としては、塩(塩化ナトリウム)、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、精製した穀物などが挙がっている。
塩については、1日の摂取量を2300mg以下としている。また、51歳以上、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病などの疾患を抱えている人の場合は1500mg。ちなみに、米国の総人口の約半数が1500mgの対象となっている。

ニューヨーク市保健局によると、ニューヨーカーが1日に摂取する塩分の平均量は3150mgで、ガイドラインの制限量である2300mgを守っている大人は5人に1人という。
とはいえ、本人たちに塩分の摂り過ぎの自覚はほとんどない。店頭で売られている食料品やレストランの食事にはすでに多くの塩分が含まれている。また肉そのものにもナトリウムが多く含まれているため、知らないうちに摂り過ぎているというのが実情だ。

ちなみに、アメリカ人の約70%が高血圧および高血圧予備軍といわれている。これについては、肉などの動物性食品の多食によるところも大きいが、ニュー ヨーク市は、2010年1月、計40の市や連邦政府組織、全米健康関連団体らとともに、食品やレストランの食事に含まれる塩分を今後5年間に25%削減す ることを目標に、全米塩分削減イニシアチブ(NSRI)を立ち上げた。
これには大手食品業者も賛同、キャンベルスープ、クラフト、サブウェイ、スターバックスといった企業が手を挙げている。

この他、除いたほうがよい食品として、飽和脂肪酸を摂取カロリーの10%以下に抑える。トランス脂肪酸をできる限り避ける。精製された穀物や砂糖添加の食品の摂取を控える。また、アルコールについては、女性は1日1杯、男性は1日2杯にするよう呼びかけている。

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