「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第3回 健康な食事パターン

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第3回 健康な食事パターン

「2010年版アメリカ人の栄養ガイドライン」公表 第3回 健康な食事パターン

kaigai82 今回も、2010年版アメリカ人の栄養ガイドラインの概要を報告する。第3章「健康な食事パターン」では、具体的に地中海式食や野菜・果物中心のベジタリアン食などの効用について紹介している。

高血圧予防には、野菜・果物に全穀物に低脂肪食

2010年版アメリカ人の栄養ガイドラインの第3章では、健康な食事のパターンを具体的に示している。
まずは、米国立衛生研究所(NIH)が推奨する高血圧予防の食事。
野菜・果物、低脂肪の牛乳及び乳製品、全穀物、鶏肉、魚類、ナッツをよく食べ、赤身肉や加工肉、塩分や糖分、糖分入り飲料水を控えめにする。また、飽和脂肪、コレステロールを少なめにし、カリウム、マグネシウム、カルシウム、蛋白質、食物繊維を多く摂るというもの。

同様な食として、DASH (Dietary Approaches to Stop Hypertension) 食も挙げている。

これは、野菜・果物、低脂肪の乳製品、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維や蛋白質を多く摂るというもの。DASH食も飽和脂肪やコレステロールが少ないため、血圧を下げ、心臓病のリスクを軽減することが多くの研究で立証されている。

National Heart, Lung, and Blood Institute(NHLBI)では、DASH食の有用性について報告している。 最高血圧が160以下で最低血圧が80~95の成人459人(男女半々で、約60%が高血圧になりやすいといわれているアフリカ系アメリカ人)を対象に、 「アメリカ人の普通食」「アメリカ人の普通食に野菜・果物をプラス」「DASH食」の3グループに分け、いずれも1日の塩分摂取量を約3000mgとし た。

その結果、「普通食」以外の2グループに血圧の低下がみられたが、とくにDASH食グループでは劇的な低下がみられた。この2グループはいずれも食事開始から2週間以内で血圧が下がったという。

心臓病のリスク軽減に地中海式食

心臓病大国といわれる米国。次いで推奨されているのが地中海式食。地中海沿い、なかでもギリシャのクレタ島に住む人たちの1960年代の食事で、野菜・ 果物、ナッツ、オリーブオイル、穀物(とくに全穀物)を多く摂る。また、少量の肉や牛乳・乳製品も摂り、食事と一緒にワインをたしなむのが特徴。心臓病の リスクを軽減する効果があるといわれている。

Journal of the American College of Cardiologyオンライン版(3月7日付け)で、地中海式食によるメタボリックシンドローム防止の研究報告が掲載されている。ギリシャの研究で、 35の臨床試験を検証したところ、地中海式食は抗酸化や抗炎症効果が期待でき、高血圧や高血糖の改善に役立つと結論づけている。

ただ、皮肉なことに地中海式食のモデルとなったクレタ島では近年、食生活が大きく変化し、飽和脂肪やコレステロール摂取が増えたことから、心臓疾患の発症が増えているという。

肥満防止には野菜・果物中心のベジタリアン食

そして、米国の悩みの種となっている肥満人口の増加。スリムな体作りにお薦めなのが野菜・果物中心のベジタリアン食。完全菜食あるいは乳卵摂取菜食のいずれも、肥満防止と心臓病リスクの軽減に効果があることが多くの研究で立証されている。

農務省(USDA)が推奨する食事は、野菜、果物、穀物、乳製品、蛋白質の5品目を1日に必ず摂るというもの。1日のカロリー摂取量を1000カロリー から3200カロリーまでとし、野菜は、緑黄色、豆類などを偏ることなく摂るよう薦めている。また、食事で摂れない栄養成分は、サプリメントや栄養補助食 品で摂るようアドバイスしている。

アメリカ人の典型的な食事、腎臓機能低下のリスク増

アメリカ人の典型的な食事というと、赤身肉や加工肉、飽和脂肪、糖分を多く摂る、いわゆるウエスタン食だが、そうした食事は、腎臓の機能を低下させると いう研究報告がAmerican Journal of Kidney Disease誌2011.2月号に掲載されている。ボストンのWomen’s Hospitalの医師らが、女性3121人を対象に、ウエスタン食、DASH食、Prudent食(野菜・果物、全穀物、鶏肉、魚をベースにした食 事)、の3組に分け、腎臓の機能を11年間にわたり追跡調査した。結果、ウエスタン食ではタンパク尿の値が増え、腎臓の血液浄化力の低下がみられたとい う。

また、高脂肪摂取と心臓疾患リスクとの関連性も数多く報告されている。Experimental Biology 2011で発表された研究報告によると、University of Cincinnatiの研究者グループが、オスのマウス7匹をグループ分けし、それぞれにラードを中心とした高脂肪食(カロリーの60%が飽和脂肪)を 24時間、1、2、6週間与えた。結果、1、2週間与えた群のほうが、6週間与えた群に比べ、心臓組織の損傷が70%低かったという。

前述の地中海式食のワインの効用については、赤ワインに含まれる抗酸化成分のレスベラトロールが心臓の健康維持に有用であることが、Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases誌2010.9月号に掲載されている。

University of South Australiaの研究者グループが、肥満または太りすぎ患者19例(男性14例、女性5例;年齢55歳±2歳;BMI 25~35kg)を対象に、レスベラトロールサプリメント投与群(30mg、90mg、270mg)とプラセボ投与群に分けたところ、サプリメントを 270mg投与した群では血漿中のレスベラトロール濃度が7.7%上昇(プラセボ群は4.1%上昇)し、心血管機能の有意な改善がみられたという。

TOP