米国不況で、さらに高まるセルフケア志向

米国不況で、さらに高まるセルフケア志向

米国不況で、さらに高まるセルフケア志向

kaigai88 景気低迷が続く米国、節約のため「医者になるべくかからないように」とアメリカ人の間でセルケア志向が高まっている。体に良いとされる食べ物やサプリメントで病気予防を心がけ、ちょっとした病気なら医者に頼らず自然な代替医療で治す。そうした風潮が広がっている。

増える無保険者、下がる中間世帯年収

ニューヨークのウォール街で始まった反格差社会デモ。多くの富を手にし、政治に多大な影響を及ぼす超富裕層1%に対し、99%の一般市民が「富の公平な配分」を訴え、怒りを爆発させた。

米国勢調査局によると、昨年の世帯年収の中央値は4万9千445ドルで、前年に比べると2.3%の下落。総人口のうち貧困層の占める割合は前年の14.3%から15.1%へと跳ね上がった。つまり6~7人に1人が貧困層ということになる。

ちなみに、米国では4人家族で年収約2万2千ドル以下を貧困層と定義している。

健康保険に加入していない人も前年の4千900万人から4千990万人に増えている。18歳以下の子どもの9.8%は健康保険がない。

所得別でみると、年収2万5千ドル以下の世帯では26.9%が健康保険に加入していない。一方、7万5千ドル以上の世帯で無保険者は8%とごくわずか。 ただ、超裕福層では、毎月の保険料を支払うより病気になった時に治療費を払ったほうがいいと、自らの選択で健康保険に加入していない人もいる。

ロサンゼルスのスポーツアリーナでつい最近行われた「無保険者のための無料クリニック」には大勢の人々が詰めかけた。ボランティアの医師らが歯の治療か ら乳がん検診まで無料で行ったが、先着約5千人に限ったため、前日からテントを張り徹夜で順番待ちをしていた人々も多くいた。

88%が医者に行かず、セルフケアで対処

ただ、健康保険に加入しているからといって、それで医療費が全額カバーされるわけではない。入っている保険が安ければ、医療費の大半を自己負担しなければいけない。契約書に「大病になったらカバーしません」と堂々と記載している保険会社もある。

市場調査会社SymphonyIRI (IRI)の調査によると、景気低迷が続く中、消費者の81%が医療費節約のため病気にならないよう極力努めているという。また、たとえ景気が回復したと しても、88%は医者に行かずできるだけセルフケアで対処するつもりと答えているという。体調が悪くてもまずインターネットで症状を調べ自己診断し、 ちょっとした病気ならセルフケアで治すという人が少なくないようだ。

スタミナ増強や免疫強化サプリメント、続々登場

Nutrition Business Journal (NBJ)によると、2010年は、ホメオパシー関連(サプリメント含む)の総売り上げが9億6千ドル。緩下剤、睡眠補助剤、咳止めなど、子ども向けの商 品が売り上げを伸ばしているという。また、漢方関連の売り上げが50億ドル、サプリメントが4億3千万ドル、インドの伝統医学アーユルヴェーダ療法が1億 6千万ドルだった。

人々の関心が代替医療に集まる中、ニーズに合わせた新商品が次々登場している。
市場調査会社Innovaが、カテゴリー別に昨年新発売された商品数をまとめているが、上位5位は、トップが「エネルギー・スタミナ増強剤」で1341 点、2位が「健康全般」と「免疫強化サプリメント」でいずれも950点、3位が「消化・肝臓の健康」で933点、4位が「心臓の健康維持サプリメント」で 969点、5位が「体重管理サプリメント」で560点となっている。

高まる 「ナチュラル重視」志向

消費者の健康関連商品における最新の購買調査をいくつか紹介しよう。
ギャラップ調査の2010年調査報告によると、消費者の3分の1は、天然の栄養素を豊富に含んだ食品および飲み物を極力買うよう心がけており、28%は抗酸化作用のある食品を選んで購入しているという。
合成着色料や調味料、保存料といった化学物質を含んだ食品を避け、添加物の入っていない「オールナチュラル」を重視する傾向が高まっている。

また、市場調査会社Packaged Factsの調査報告「Natural and Organic Foods and Beverages in the U.S.」によると、米国の2010年ナチュラルおよびオーガニック食品・ドリンクの小売売上げは390億ドル。2011年には消費者の38%がオーガ ニック食品、58%は添加物などを加えていないオールナチュラル食品をいずれも選んで購入しているという。

市場調査会社Technomicの報告書「健康な食生活の消費者傾向」もこうしたナチュラル傾向を裏付けている。
それによると、食品購入の際、消費者の58%が「ナチュラル」、54%が「人工甘味料が含まれていない」、52%が「防腐剤が入っていない」、47%が 「ホルモン・フリー」「オーガニック」、46%が「加工処理をしていない」、41%が「抗生物質を含んでいない」、40%が「オーガニック認定されている か」を挙げている。
体に良いナチュラルな食品を求める傾向は、今後もますます高まりそうだ。

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