料理が苦手な高齢者の一人暮らしでは死亡リスクが高まる?

料理が苦手な高齢者の一人暮らしでは死亡リスクが高まる?

料理が苦手な高齢者の一人暮らしでは死亡リスクが高まる?

一人暮らしの高齢者は、調理技術が低いと死亡率が高まる可能性のあることが、東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野の谷友香子氏らによるコホート研究から示されました。調理技術が高い一人暮らしの高齢者と比較すると、低い人では死亡リスクが2.5倍に上った一方で、同居している高齢者では調理技術と死亡リスクに関連は見られませんでした。研究結果の詳細は「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に11月10日掲載されました。

調理技術が低いことと自炊の機会が少ないことには相関性がありそうだと誰もが想像するでしょう。さらに自炊の機会が少ないことは栄養の偏りなどを引き起こすことで健康リスクにつながる可能性があり、その傾向は一人暮らしの高齢者ほど強くなると考えられています。このような背景から谷氏らは今回、自立して生活する日本人高齢者を対象にコホート研究を実施しました。同居の有無によりグループを振り分け、調理技術が死亡率と関連するかどうかを調査しました。
この研究は、2016年から2019年に実施された住民ベースのコホート研究である日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)に参加した、全国23市町在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1万647人(女性54.5%、80歳以上が19.8%)を対象に、3年間追跡調査したものです。調理技術の判定方法としては、試験開始時に「野菜や果物の皮をむくことができる」「野菜や卵をゆでることができる」「焼き魚を作ることができる」など7項目について6段階で自己評価(1~6点)してもらい、それらの平均点によって「高(4点以上)」「低」の2つのグループに分けられました。

参加者のうち4人に1人(25%)は調理技術が低いと分類されました。また、一人暮らしの割合は14%でした。参加者を同居の有無で層別し、それぞれ傾向スコアを用いて学歴や世帯年収、配偶者の有無、高次生活機能、近隣の食料品店の有無などをマッチさせた調理技術が高いグループと低いグループ(一人暮らしの高齢者171組、同居の高齢者2,161組)で、調理技術と全死亡リスクの関連を分析しました。
平均3.7年の追跡期間中に、計520人が死亡しました。解析の結果、傾向スコアをマッチさせた後では、一人暮らしの高齢者では、調理技術が低いと高い場合に比べて全死亡リスクが2.5倍(ハザード比2.50、95%信頼区間1.10~5.68)有意に上昇したのに対し、同居する高齢者では1.05倍(同1.05、0.82~1.33)と有意な関連は見られませんでした。また、調理技術の低さは、調理頻度の低さ、野菜や果物の摂取量の少なさ、外出頻度の低さや身体活動時間の短さと関連しており、これらが調理技術と死亡との関連を一部説明していることも分かりました。

以上から、著者らは「調理技術の低さは死亡リスクと関連し、この関連は同居の有無によって異なることが分かった。つまり、料理技術の高い高齢者は、たとえ一人暮らしであっても死亡リスクは上昇しないとも言える」と述べています。また、調理をする人は外出や立位などの身体活動が増えるほか、献立を考えることなどは認知機能の維持に働き、結果として死亡リスクの低減につながっている可能性があると考察。その上で、「高齢化が進む中、一人暮らしの高齢者は今後も増加が見込まれる。高齢者の調理技術を高めるための支援や介入などは公衆衛生上、重要な課題だ」と述べました。

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