仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

過酷なのにやりがいの感じられない仕事は、男性の心臓の健康に大きな打撃を与える可能性があることが、6,400人以上を対象にした大規模研究で示唆されました。仕事にストレスを感じている男性の心疾患発症リスクは、仕事への満足度がより高い同世代の男性と比較して最大で2倍に達することが明らかになったといいます。CHU de Québec-Université Laval Research Center(カナダ)のMathilde Lavigne-Robichaud氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に9月19日掲載されました。

この研究は、心疾患のない6,465人(男性3,118人、女性3,347人)のホワイトカラー(平均年齢45.3±6.7歳)を2000年から2018年まで追跡して、職場ストレイン(仕事の要求度は高いが裁量権や支援が不足している状態)や、努力報酬不均衡(effort-reward imbalance;ERI、努力が適切な報酬や昇進に結び付いていないと感じている状態)と心疾患発症との関連を検討したものです。職場ストレインとERIはそれぞれ信頼性と妥当性が示されている質問票により評価されました。
中央値18.7年の追跡期間中に男性571人と女性265人に冠動脈疾患(CHD)が生じました。解析の結果、職場ストレインまたはERIのいずれかを感じている男性では、仕事上のストレスが少ない(軽度の職場ストレインはあるが報酬は低くない)男性に比べて、CHDの発症リスクが49%(ハザード比1.49、95%信頼区間1.07〜2.09)、職場ストレインとERIの両方を感じている男性では103%(同2.03、1.38〜2.97)、有意に高くなっていました。これらの結果は、教育レベルや婚姻状態、喫煙や飲酒の習慣、糖尿病や高血圧などの健康状態を考慮しても変わりませんでした。一方で女性の場合は、職場ストレインやERIとCHD発症との間に有意な関連は認められませんでした。

これらの結果は「仕事のストレスが男性の心臓には打撃を与えるが、女性の心臓には影響を及ぼさない」ことを証明するものではないと研究チームは話します。それでも、成人が1日の大半の時間を費やす職場でのストレスが心疾患の原因になり得るといいます。その理由の一つとしてLavigne-Robichaud氏は、慢性的なストレスが心血管系に直接的に影響を及ぼし得ることを指摘します。「職場ストレインとERIは、心拍数の増加、血圧の上昇、心血管の狭窄を含む身体的反応を引き起こす。これらが直接的に心臓に負荷をかけ、血流や心拍リズムに問題が生じ、最終的に心疾患の発症リスクが高まる」と説明します。
さらに仕事のストレスが、それほど直接的でない方法で心臓に害を与えることも考えられるといいます。同氏は、「仕事でストレスを抱えている人は、健全な食生活を送り、定期的に運動を行い、リラックスする時間を見つける能力が低下する可能性がある」と指摘し、「健康的なライフスタイルを送ることが困難な状況下では、ストレスが心血管系に及ぼす直接的な影響がいっそう顕著になる可能性がある」と付け加えます。同氏は、この研究結果は、職場は従業員の心臓の健康を促進することができ、また促進すべきであるとする、すでに山と積み上げられたエビデンスに加わるものだと述べています。
なお、本研究で、女性では仕事のストレスとCHDとの間に関連が認められなかった点についてLavigne-Robichaud氏は、「この研究での女性のCHD症例が男性の半分程度だったように、女性は、人生の後半に心疾患を発症する人が男性よりも多い。そのため、仕事のストレスと心疾患との間に明確な関連性を見出しにくくなっている可能性がある」と説明しています。

Lavigne-Robichaud氏によると、米国心臓協会などの団体は、すでに雇用主に対して、健康診断の実施や栄養価の高い食事選択肢の提供などを含む「包括的なウェルネスプログラム」を推奨しているとのことです。「我々の研究は、これらのプログラムに仕事のストレス軽減を目的とした介入を取り入れることが、心疾患の予防に役立つ可能性を示唆するものだ」と述べています。

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