一定期間、水のみを摂取するダイエット法である水断食は、減量という点では効果があると言われています。しかし、水断食により減った体重をどの程度維持できるかは不明である上に、血圧低下やコレステロール値の改善といった代謝に関わる効果は水断食を終えるとともに消失する可能性が、新たな研究で示唆されました。米イリノイ大学シカゴ校のKrista Varady氏らによるこの研究結果は、「Nutrition Reviews」に6月27日掲載されました。
水断食は、通常は5〜20日間、時にはそれ以上の期間、水だけを摂取するダイエット法ですが、専門家の監督下で、朝食に少量のジュース、昼食にごく少量のスープなど、1日に250kcalまで摂取できるような水断食も行われています。Varady氏らは今回、8件の研究を対象にしたナラティブレビュー (著者の知識や経験に基づいて特定のテーマに関する過去の文献を参照・統合し、系統立てて解説された概説論文) を実施し、水断食が、体重、血圧、血中脂質、血糖値などに与える影響についての評価を行いました。
その結果、水断食により短期間で体重が減る可能性が示されました。具体的には、水断食を5日間行った人では体重が4〜6%、10日間行った人では2〜10%、15〜20日間行った人では7〜10%減っていました。ただし、減量した分のおよそ3分の2は除脂肪量であり、体脂肪量の減少は3分の1程度にとどまりました。Varady氏らは、「除脂肪量の減少は、絶食後の安静時代謝率の低下につながり、それが将来の体重再増加のリスクとなり得るため、この結果は懸念すべきものだ」と述べています。
水断食による減量後に、どの程度その体重が維持されるのかを追跡した研究は数件だけで、そのうちの1件の研究では、水断食終了から3か月以内に参加者の体重が元に戻っていました。別の2件の研究では、体重の戻りはわずかでしたが、参加者は水断食終了後も食事のカロリー制限をするよう促されていました。
一方、血圧は、水断食の期間の長さに応じて持続的に低下していました。血液中の脂質値に与える効果については明確ではありませんでしたが、いくつかの研究では、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロール値と中性脂肪値の低下が報告されていました。しかし、その他の研究では、水断食による改善効果は確認されませんでした。血糖コントロールについては、血糖値が正常な人では、空腹時血糖値、空腹時インスリン値、インスリン抵抗性、HbA1c値の低下が認められましたが、1型および2型糖尿病患者ではいずれの数値も変化が認められませんでした。さらに、このような代謝関連の改善効果は、水断食を終えるとともに消失しました。水断食終了後も体重を維持している人でも同様に、効果は消失しました。
一方で安全性に関しては、最もよく生じた副作用は、空腹感、頭痛、不眠、代謝性アシドーシスであり、水断食は比較的安全なものと判断されました。
これらの結果を踏まえてVarady氏は、「私なら水断食を人に勧めたりはしない。水断食がこの1年ほどの間で突如として人気のダイエット法になったことは知っている。しかし、たとえ水断食で落とした体重を維持できたとしても、健康上のメリットは全て失われてしまう」と話します。米ボストン医療センターの肥満医学部門の長であるIvania Rizo氏は、水断食を長期にわたって行うと、ビタミンやミネラルが欠乏した状態になることが予想されるとして、懸念を示しました。
Varady氏とRizo氏は、「水断食は、端的に言うと、持続可能なダイエット法ではない」と断言します。Rizo氏は、「水断食のような短期的で持続不可能な介入が、慢性疾患である肥満に特定の影響を与えるとは思えない」と述べます。そして、「水断食をするよりは、空腹感を減らし、食事以外のことを考えられるようにするオゼンピックのような新しい減量薬に目を向けた方が良い」と話しています。