近年、花粉症にかかる人が増えてきています。花粉症について学んで、これから到来する花粉症シーズンに備えてみませんか?今回は、2020年2月4日(火)に実施された都民アレルギー講座「学んで対策万全に!花粉症・鼻アレルギー」に基づいてお話します。
近年の花粉の飛散状況
まず、佐橋紀男氏(元東邦大学薬学部 教授)が「花粉から身を守るためにできること」と題して、近年の花粉の飛散状況や日常生活の花粉症対策について講演しました。花粉症、というとスギやヒノキが良く知られていますが、どのような花粉であっても花粉症を引き起こす可能性はあり、現在は51種類の植物が花粉症の原因となり得るとして報告されています。そのうちの8割を木本花粉が占め、3月~5月上旬がピークになりますが、草本花粉症はイネ科が中心になり、夏から秋にピークになります。
飛散地域については、これまでは東京都内ではスギ林の多い多摩地域での飛散数が多いとされてきましたが、近年は23区が多摩地域を上回り、スギ林の多い多摩地区より、スギ林のない都心で飛散花粉が多いという逆転現象が起きつつあります。そのため、都心で生活していても「スギ林は近くにないから…」と油断せずに、対策を講じる必要があると言えるでしょう。
花粉対策
まず、居住空間である室内に花粉を入れない対策、そして室外にいる時に花粉を浴びない工夫が必要であると佐橋氏は指摘します。日常生活での注意点を、以下のようにまとめました。
【屋内に花粉を入れない対策】
- 風の強い日は窓を開けない
- 空気清浄機を使う
- 洗濯乾燥機、布団乾燥機を使う
- こまめに掃除機を使って掃除をする
【屋外での花粉症対策】
- 外出するときは、帽子、マスク、眼鏡、スカーフを着用
- 帰宅したら手洗い、うがい、洗顔
- 花粉を屋内に持ち込まない
花粉症と治療について
続いて、後藤穣氏(日本医科大学 耳鼻咽喉科)が「花粉症・鼻アレルギーの基礎知識から最新情報まで」と題して講演しました。後藤氏は、花粉症はアレルギー疾患であり、抗原抗体反応によって反応が起きるI型アレルギーであると説明しています。また、遺伝的要因が関与しますが、環境因子によって増加し、高齢者になって症状が軽くなる場合もありますが、基本的には自然治癒する率は低いと指摘しています。
また、花粉症は有病率が増加しているだけでなく、低年齢化が進んでいます。近年では子供の花粉症も増えており、0~14歳で約40%が花粉症/アレルギー性鼻炎を有しているとことが統計で示されています。そのため、今後これまで以上に対策が必要になると考えられます。
しかし一方で、東京都の調べでは花粉症の症状があっても受診していない人が多いことが分かりました。花粉症は、生命に関わるリスクの低い病気ですが、そのまま放置すると勉強や仕事に集中できない等、生活に様々な支障を引き起こすと考えられます。きちんと受診して、適切な治療を受けることが望ましいでしょう。