健康豆知識

健康の温故知新

掲載103 夏を乗り切る食生活と水分補給

今年は、異常ともいえる暑さが続いています。体調の不調を感じている方も多いのではないでしょうか。今回は、目黒区主催の食と健康講座「夏バテ予防の食生活」と健康大学「暑い夏を乗り切る!正しい水分摂取方法とは」についてご紹介します。

2018年6月19日に実施された食と健康講座「夏バテ予防の食生活」(管理栄養士・健康食育シニアマスター/萩野祐子氏)では、夏バテの症状と原因、予防について解説がありました。

夏バテの症状

「夏バテ」の場合、明確な症状よりも一般に不定愁訴と言われるような「何となく具合が悪い」場合が多くみられます。よく見られるのが全身のだるさと倦怠感、食欲低下ですが、便秘や下痢、不眠や頭痛なども夏バテによって生じることがあります。

夏バテの原因

夏バテの原因として、自律神経の乱れが挙げられると荻野氏は指摘します。自律神経は交感神経(緊張や気合)と副交感神経(リラックス)の調整の機能を果たしますが、体温も調節します。夏は暑さと冷房による冷えの差が極端に大きく、体温の調節をするために自律神経に大きな負担がかかります。自律神経が乱れるとよく眠れずに睡眠不足になりがちで、日中の疲れが取れず、様々な不調を引き起こします。また、もう一つの大きな原因として、胃腸機能の低下があります。胃腸の酵素が最もよくはたらくのは37度と言われますが、夏はそうめんやアイス、ジュースなどの冷たい飲み物や食べ物を好みがちになるため、酵素が良く働かずに胃腸に負担がかかります。このように、胃腸機能の低下、自律神経の乱れ、それによる睡眠不足が相互関係になり、夏バテを引き起こすと考えられます。

夏バテの予防

夏バテの原因の中で、最も自分自身で予防をしやすいのは胃腸機能の低下です。暑いと食欲が落ち、そうめんなどが食べやすくなりますが、冷たいものを食べた後には必ず温かいお茶を飲むなど、胃腸を温めるようにしましょう。また、胃腸機能の低下を防ぐためには、よく噛むことが何よりも大切です。よく噛むことによって、栄養がきちんと消化でき、自律神経も活性化し、免疫力と胃腸機能が改善されます。

また、2018年7月20日に実施された「暑い夏を乗り切る!正しい水分摂取方法とは」(東京都立広尾病院 腎臓内科/田島真人氏)では、熱中症の現況とそれを防ぐための水分補給について説明がありました。

熱中症と脱水症

熱中症とは、暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称で、「脱水症+高体温→熱中症」と言えます。毎年4万人以上の救急搬送があり、今年はさらにその数は急増し、大きな社会問題となっています。その中でも、子供や高齢者での発症が多くみられます。それは、高気温時の「体温バランス調整」は発汗に依存しますが、子供は体の大きさ自体が小さいため水分量が不十分で、一方、高齢者は筋肉量が減少することによって体液量が少ないことが理由として挙げられます。そのため、高齢者や子供は特に注意が必要です。発汗による脱水が進むと、細胞内の水分が枯渇するため、嘔吐・下痢、意識障害、血圧低下、頻脈など様々な症状が見られます。

脱水状態の目安

脱水について、ご高齢の方は特に注意が必要です。それは、咀嚼・食欲・運動量が低下しているのに加え、尿の再吸収が低下しており、また、頻尿やむくみを心配することから水分を控える傾向にあるためです。また、加齢によって口渇中枢が鈍化することによって、口渇感が減退していることも原因の一つでしょう。

そのため、体内の水分量の不足を知る目安として、体重を測定することが大切であると田島氏は指摘します。水分が不足すると体重が減少しますが、「体重減少率」と症状の関係は以下のとおりです。また、体液の減少をチェックする方法として以下の皮膚の所見「ツルゴール低下」と爪の所見「「毛細血管再充満時間遅延」が挙げられます。

夏バテ防止

体重、ツルゴール、毛細血管再充満時間などから判断して、脱水状態が考えられる場合は、補液が必要になります。重度な場合は点滴が必要になりますが、軽度の場合は、従来の経口補水液を活用しましょう(ただし、高度の脱水症、消化管の閉塞や出血を伴う疾患、高カリウム血症等の場合は禁忌です)。経口補水液をとる場合は、以下の点に気をつけましょう。

  • 一気に飲まないで“ゆっくりと少しずつ”(500mlを1時間くらいに分けて)
  • 濃度を変えない、凍らせない、薄めない、混ぜない
  • 健康な人には美味しくない
  • 飲めない症状は無理をせず、点滴へ切り替える
  • しょっぱい時は、冷やす、ストローで飲む、ゼリータイプに変える

まだ暑い日が続きますが、夏バテや脱水に気を付けて夏を乗り切りましょう。また、経口補水は、薄いもをの飲みすぎると低Na血症を生じることがあります。体重、皮膚、爪の所見から脱水評価をし、適量を摂取するようにしましょう。

TOP