近年、社会の高齢化、不規則な生活習慣、他の様々な疾患との関連から生活習慣病は大きな関心を集めています。今回は、国立国際医療研究センターで実施されている「生活習慣病教室」の講義内容を元に、生活習慣病とその予防についてお話しします。
生活習慣病とは
「生活習慣病」という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどういうことなのかよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。生活習慣病とは、食事、運動、ストレス、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症、進行に深く関与する病気の総称で、主な具体例としては、糖尿病、脂質異常症、高血圧などが挙げられます。生活習慣病それ自体が深刻である、というよりも、生活習慣病によって血管全体の老化が進み、血管障害によって脳梗塞や心疾患、下肢の壊死などの重大な疾患を起こしやすいため、注意が必要です。一言で言うなら、生活習慣病は全身に影響を及ぼす疾患であると言えるでしょう。人間ドックでは、さまざまな検査を実施して、病気を早く発見して治療できる可能性を高めます。気になる症状がある場合は、早目に検査を受けて、適切に治療するようにしましょう。
高血圧・動脈硬化と予防のための食生活
血管は、体内で最大の臓器であると言われます。そのため、血管の健康維持は健康のためにとても大切です。特に、高血圧によって血管にかかる圧力が高くなると、血管壁の劣化・ダメージが進み、脳、心臓、腎臓などの重要な臓器に障害が起こる可能性があります。実際に、高血圧があると脳卒中、冠動脈疾患の発症頻度が高くなることが明らかになっていますので、血圧を適正にコントロールすることはとても重要です。また、高血圧のリスクを減らすためには、塩分のとり過ぎに注意しながら、バランスのとれた食事を心掛けることが大切です。
「国立国際医療研究センター 生活習慣病教室」資料より
肥満と生活習慣病
よくBMIという言葉を聞きますが、これは「Body mass index」の略で、「BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算され、肥満の指標とされます。一般に、日本ではBMIが25kg/m2で肥満とされます。肥満は糖尿病、脂質異常症、脂肪肝、心筋梗塞などさまざまな危険な健康障害の原因となりますが、減量することで改善する場合がほとんどです。特に、太り方の中でも内臓脂肪蓄積は様々な物質の分泌異常を引き起します。具体的には、肥満によって、抗糖尿病作用や抗動脈硬化作用があるアディポネクチンの分泌が低下したり、食欲抑制やエネルギー消費亢進作用があるレプチンの効果が減少してしまいます。「最近、お腹まわりが気になる…」という場合は、要注意です。やせるためには、食事、運動、健康食品などいろいろ方法がありますが、一番おすすめできるのは食事療法と運動療法を組み合わせることです。減量、というと食事の制限に着目されがちですが、リバウンドしやすい、我慢が必要、筋肉も減ってしまうなどの欠点があります。運動療法だけでは減量効果は大きくありませんが、全身の代謝や機能改善など、多面的な効果があり、太りにくく健康な体を作ることができます。食事療法に組み合わせることによって、リバウンドせずに減量した状態を維持するためにも重要です。具体的には、以下の方法がお勧めです。
- 野菜や食物繊維を多くした食生活 →総カロリーの減少、減量、大腸がんの予防等
- ウォーキングなどの運動を毎日30分以上 →通勤、買い物の際に歩く距離を長くするなど、無理のない範囲で活動量を増やす
- 禁煙 →動脈硬化やがんの危険減少等
- 節酒、禁酒 →血糖、中性脂肪、尿酸、脂肪肝の改善等
「国立国際医療研究センター 生活習慣病教室」資料より
また、運動は空腹時や早朝、深夜や朝食前は血糖値が下がり過ぎてしまうため、避けた方がいいでしょう。食後30分~1時間が最も適した時間と考えられています。また、治療中の疾患がある場は、必ず主治医の先生に相談してから運動するようにしましょう。