脳卒中は脳の血管に起こる病気で、脳の血管が急に破れたり詰まったりすることによって発症します。2017年2月10日(金)に佼成病院で「脳卒中を予防するために―あなたは大丈夫ですか―」のセミナーが実施され、中西肇氏(佼成病院 脳神経外科部長)が講演しました。今回はこの講演をもとに、脳卒中とそれを予防するための生活習慣についてお話しします。
脳卒中には血管が破れるタイプの脳出血、くも膜下出血と、血管が詰まるタイプのラクナ梗塞、アテローム血栓性梗塞、心源性脳塞栓症があります。脳卒中は、がん、心疾患に続いて日本人の死因の上位を占めるだけでなく、寝たきりの原因の33.8%を占める深刻な病気です。健康長寿のためだけではなく、介護の負担を減らしてゆくためにも脳卒中を防ぐための予防医学が重要だと考えられます。
脳卒中を予防するためには、まずしっかりと血圧を管理することが大切だと中西氏は指摘します。朝の血圧が高いほど脳卒中のリスクは高まるため、毎日決まった時間(朝の起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前)と、就寝前に血圧をきちんと正確に測定します。血圧は下げ過ぎてもよくないため、75歳未満であれば135/85 mmHg、75歳以上であれば145/85 mmHgを目安とします。また、糖尿病も脳血管障害の原因となり、糖尿病の場合は非糖尿病の場合よりも脳卒中のリスクが6倍高まることから、糖尿病を放っておかずにきちんと治療しましょう。また、心房細動があると3~5倍脳梗塞のリスクが高まりますが、抗凝固剤の服用によって発症を約6割抑えることができます。脈の乱れや動機を度々感じる場合は、医師に相談することが大切です。コレステロールの管理も重要です。コレステロールは体にとっては必要なものですが、悪玉と善玉があり、悪玉コレステロールの増加は、様々な疾患の原因となります。LDLを下げ、HDLを上げるようにコレステロールのバランスにも注意しましょう。
生活習慣病は、脳卒中のリスクを高めます。そのため、禁煙、塩分の摂り過ぎに注意すること、体力に合った有酸素運動などによって日常の健康を管理することは、脳卒中の予防に有効です。
中西氏は、脳卒中の予防について以下のようにまとめました。
【脳卒中予防10か条】
① 手始めに 高血圧から治しましょう
② 糖尿病 放っておいたら悔い残る
③ 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
④ 予防には タバコを止める 意志を持て
⑤ アルコール 控え目は薬 過ぎたれば毒
⑥ 高すぎる コレステロールも 見逃すな
⑦ お食事の 塩分・脂肪 控え目に
⑧ 体力に あった運動 続けよう
⑨ 万病の 引き金になる 太りすぎ
⑩ 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
番外編: お薬は 勝手にやめずに 相談を
また、脳卒中で起こる「危険な頭痛」と、いつもの頭痛を見分けることが重要です。「いつもの頭痛」とは、片頭痛、肩こりなどによる緊張型頭痛などのように繰り返し起こる慢性頭痛や風邪や二日酔いなどの日常的に起こる頭痛ですが、以下のような危険な頭痛は注意が必要です。
【危険な頭痛】
- 今までにない激しい頭痛
- 突然の激しい頭痛
- 痛みが急に強くなる
- 回を重ねるごとに痛みが徐々に強くなる
- 発熱を伴う頭痛
- 手足のしびれやけいれんを伴う
- 意識がもうろうとなる
このような頭痛が見られた場合は、すぐに受診するようにしましょう。生活習慣をしっかり自己管理して脳卒中の予防を心がけ、日々の生活を元気に送れるように心掛けたいですね。